仮想通貨規制の強化で「ダークステーブルコイン」が台頭する可能性|CryptoQuant分析

仮想通貨規制強化で「ダークステーブルコイン」が台頭する可能性|CryptoQuant分析(CryptoQuant analysis suggests rise of dark stablecoins amid tighter crypto regulations)

この記事の要点

  • 仮想通貨規制強化でダークステーブルコイン拡大の予測
  • ダークステーブルコインは政府管理外で自由度が高い
  • 米・欧州・アジア各国でステーブルコイン規制が進行中
  • 規制回避手段として市場の新トレンドになる可能性も
目次

ダークステーブルコイン台頭の可能性

仮想通貨分析プラットフォームCryptoQuantの創設者兼CEOであるキ・ヨンジュ氏は2025年5月11日に、世界的な仮想通貨規制の強化に伴い「ダークステーブルコイン」が今後市場で台頭する可能性があるとの見解を示しました。

ヨンジュ氏は自身のX(Twitter)で、「ビットコインは、政府干渉を受けない仕組みとして設計された」と述べ、その一方で「従来のステーブルコインは現実世界とインターネットをつなぐ架け橋として機能するため必ず管理主体が存在し、各国政府の規制対象になりやすい」と指摘しています。

将来的に「ダークステーブルコイン」が台頭する可能性があります。

ビットコインは元々、検閲に強い通貨としてサイファーパンクのコミュニティから生まれ、誰にも支配されない仕組みを持っています。そのため、政府や企業がコントロールすることはできません。

一方で、ステーブルコインは現実世界との橋渡しとなるため、管理者が必要です。(中略)

しかし状況は変わりつつあります。(中略)

ウォレットの凍結や本人確認(KYC)を要求されるケースも出てくる可能性もあり、大規模な国際送金にステーブルコインを使っていた人々は、検閲に強い「ダークステーブルコイン」を求めるようになるかもしれません。

(後略)

この投稿で言及された「ダークステーブルコイン」とは、政府や規制当局の監督を受けず、プライバシー保護と検閲耐性を重視して設計された新世代のステーブルコインを指します。

規制強化が進む中、ユーザーの中には政府管理の及ばない自由な仮想通貨(暗号資産)への需要が高まるとヨンジュ氏は予測しています。

ヨンジュ氏が示すステーブルコイン規制の未来

ステーブルコイン規制環境の急速な変化

ヨンジュ氏は投稿の中で、現在主流の法定通貨担保型ステーブルコイン(USDTやUSDC)が誕生した当初は価格変動の抑制や決済の利便性向上策として機能し「各国政府もマネーロンダリング対策を除けばほとんど介入せずに見守る姿勢だった」と説明しています。

テザー社(USDTを発行)サークル社(USDCを発行)などの民間企業は、銀行に法定通貨の準備金を預けることでステーブルコインの価値を1ドルに保証しています。

こうした中央管理型ステーブルコインは長年、ビットコイン(BTC)をはじめとする仮想通貨市場の主要な決済・送金手段として広く利用されてきました。

しかし近年、世界各国でステーブルコインに対する規制強化の動きが本格化し始めています。

ヨンジュ氏は、政府の認可または発行するステーブルコインは今後「伝統的な銀行と同様の厳しい規制」に直面する可能性が高いと指摘しました。

同氏は、ブロックチェーン上で自動的に税金を徴収する仕組み(スマートコントラクト)の導入や、当局によるウォレット凍結、利用者へのKYC(本人確認)義務付けなど、自由な資金移動を制限しうる措置が取られる可能性を示唆しています。

その結果「オープンな金融システム」として機能してきた既存のステーブルコイン環境は次第に現在の銀行制度に近づいていき、ユーザーから見れば利便性が損なわれる恐れがあります。

規制強化への対抗手段としての「ダークステーブルコイン」

こうした規制強化という「検閲の波」に対抗して、ヨンジュ氏は「ダークステーブルコイン」という新たな概念が登場すると予測しています。

ダークステーブルコインは政府の許可や管理を受けない非中央集権型の代替ステーブルコインを指し、その形態は主に2種類考えられます。

1つ目は特定の管理者を持たずアルゴリズム等で価値を安定させるステーブルコイン、2つ目は金融取引を検閲しない国家(低検閲国家)が発行するステーブルコインです。

ヨンジュ氏はさらに、第3の可能性として、分散型オラクルを活用した新たな方式も提案しています。これは既存の規制対象ステーブルコインの価格データを参照しながら、その価値を安定させる新しい分散型ステーブルコインの仕組みです。

ヨンジュ氏によれば、現時点でこのコンセプトを実用化したプロジェクトはまだないものの、将来的には仮想通貨市場の重要なユースケースになる可能性が高いとのことです。

テザー(USDT)の将来的な立ち位置

さらに、ステーブルコイン市場で最大の時価総額と流通量を誇るテザー(USDT)についても「今後の規制環境次第ではダークステーブルコインとしての役割を担う可能性がある」と指摘しています。

たとえば、現トランプ政権下で進む可能性のある米国の規制強化にテザー社が対応しない場合、USDTは政府管理外の「検閲耐性が高い通貨」となる可能性があるとしています。

ヨンジュ氏は、今後デジタル金融領域で規制が強化される中で、こうした「ダークステーブルコイン」関連の資産が独自の投資価値を持つ可能性にも言及しました。

世界各国に広がるステーブルコイン規制の最新動向

ヨンジュ氏が予測する「ダークステーブルコイン」台頭のシナリオは、各国当局がステーブルコインへの規制を強めている現在の状況とも一致しています。

米上院の法案否決でステーブルコイン規制難航

米国ではドル連動型ステーブルコインの法的枠組み整備が活発に議論されてきましたが、2025年5月初旬、上院でステーブルコイン規制法案(GENIUS法案)が必要票数に達せず、審議入りが見送られました。

この否決の背景には、一部議員からトランプ大統領の仮想通貨ビジネスへの関与に関する懸念が示されるなど、政治的要因も影響したとされています。

米国の仮想通貨業界は共和党・民主党両方から広く支持を得て法整備を期待していましたが、現時点では規制の見通しは不透明です。

ニューヨーク州の司法長官は今年4月、議会指導部に宛てた書簡で「ステーブルコイン発行体には米国内拠点を置かせ、準備金も米国内銀行に預託させるべきだ」と主張し、連邦レベルでの早急な規制整備を訴えました。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長も同月の講演で、急拡大するステーブルコイン市場のリスクに触れ「安定した金融システムには適切な規制枠組みが不可欠」と強調しています。

欧州:MiCAによる規制強化とデジタルユーロの開発推進

欧州においても当局はステーブルコイン規制に注力しており、その代表例が2024年に成立した「MiCA(欧州仮想通貨規制)」です。

MiCAでは、非ユーロ建てステーブルコインの流通規模に上限を設定する方針が示されており、ユーロ圏内で一定取引量を超えるドル連動ステーブルコインには利用制限が課される見込みです。

欧州中央銀行(ECB)は金融主権の観点からデジタルユーロ(中央銀行デジタル通貨)の開発を進めており、イタリアのジョルジェッティ経済財務相は4月の講演で「米国のステーブルコイン政策は欧州にとって貿易関税以上に警戒すべき脅威になり得る」と述べています。

ドルに連動するステーブルコインは、銀行口座を介さずに世界中で使える新たな価値保存・決済手段です。そのため、自国通貨が不安定な国だけでなく、ユーロ圏の市民にとっても魅力的な存在となりつつあります。

香港・日本で進むアジアのステーブルコイン規制

アジア地域でもステーブルコイン規制の整備が着実に進んでいます。

香港はデジタル資産ハブを目指す政策の一環として、2024年末にステーブルコイン規制法案を公表し、2025年中の施行を視野に入れた体制整備を進めています。

香港金融当局はステーブルコイン発行体に対するライセンス制度や準備金管理の基準を定めることで、利用者保護とイノベーション促進の両立を図る方針です。

日本においては、世界に先駆けて2023年6月に改正資金決済法(日本の決済・送金に関する基本法)が施行され、銀行・信託会社・資金移動業者のみがステーブルコインを発行できる厳格な制度が導入済みです。

さらに2024年10月には日本暗号資産取引業協会(JVCEA)がステーブルコインの自主規制を担う団体として金融庁から正式に認定されるなど、国内での発行・流通解禁に向けた環境整備が進みつつあります。

規制強化による「ダークステーブルコイン」需要の高まり

このように世界各国で公的ステーブルコインへの規制が厳格化するほど、その制限を回避する「ダークステーブルコイン」への需要が高まると予測されています。

ヨンジュ氏が指摘するように、将来的に登場し得るダークステーブルコインは、規制強化によって揺らぎつつある仮想通貨の自由性を補完する存在となるかもしれません。

ただし、ダークステーブルコインの実現には匿名性確保や規制回避のための技術的・法的課題も多く、主流化までには相当な時間がかかるとの見方もあります。

今後の世界各国の規制強化と市場の反応次第では、政府管理外の「非中央集権型ステーブルコイン」が2025年以降の仮想通貨市場における次の大きなトレンドとなる可能性が高まっています。

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Source:キ・ヨンジュ氏X投稿
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:AIによる生成画像

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Written by

BITTIMES 編集長のアバター BITTIMES 編集長 仮想通貨ライター

2016年から仮想通貨に関するニュース記事の執筆を開始し、現在に至るまで様々なWeb3関連の記事を執筆。
これまでにビットコイン、イーサリアム、DeFi、NFTなど、数百本以上の記事を執筆し、国内外の仮想通貨ニュースの動向を追い続けている。

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