マスク氏・トランプ氏の対立が激化、補助金・エプスタイン発言が仮想通貨市場を揺らす

マスク氏・トランプ氏の対立が激化、補助金・エプスタイン発言が仮想通貨市場を揺らす(Clash between Musk and Trump shakes the crypto market amid subsidy and Epstein comments)

この記事の要点

  • マスク氏・トランプ氏が対立激化、市場が急落
  • 歳出法案・補助金停止巡り非難応酬、個人攻撃に発展
  • テスラ株14%下落、仮想通貨市場にも売りが波及
  • ビットコイン調整局面、長期化なら相場変動の恐れも
目次

マスク氏とトランプ氏の対立が仮想通貨市場にも波及

2025年6月6日、テスラ社のイーロン・マスク氏とドナルド・トランプ米大統領の対立が激化し、その影響によりビットコイン(BTC)をはじめとする仮想通貨市場が下落しています。

両者は約3.8兆ドル(約547兆円)規模の大型税制・歳出法案をめぐって非難の応酬を繰り広げています。

トランプ大統領がマスク氏の企業に対する政府補助金や契約の打ち切りを示唆する一方、マスク氏はトランプ氏の名前が米富豪ジェフリー・エプスタイン氏の関係資料に記載されていると主張する事態にまで発展しました。

こうした激しい対立により米国株式市場ではテスラ株が一日で14%急落したほか、仮想通貨市場でも短時間で約6億2,155万ドル(約890億円)相当の取引が強制的に決済されるなど、大きな影響が出ています。

対立の発端:3.8兆ドル歳出法案を巡る議論

対立の発端は、総額3.8兆ドル規模の大型税制・歳出法案と見られています。

巨額債務法案にマスク氏が強く反発

トランプ大統領が「偉大で美しい法案(One Big Beautiful Bill)」と称賛するこの法案は、広範な減税と国防費拡大による短期的な景気刺激を目指していますが、議会予算局(CBO)の試算では今後10年間で米国の債務を2.4~5兆ドル増加させ、債務総額を約40兆ドル(約5,750兆円)規模に膨らませる可能性がある報じられています。

下院はこの法案を約2週間前に可決しましたが、当時トランプ政権下で「政府効率化省(DOGE)」長官を務めていたマスク氏は、財政悪化につながるとして法案への反対を強めました。

マスク氏は当初、連邦予算から2兆ドル(約287兆円)の歳出削減を掲げて政府改革に乗り出していましたが、目立った成果が出ないまま5月末に政府ポストを辞任しています。

マスク氏、歳出法案を「忌まわしい」と強烈批判

6月4日、マスク氏は一般市民として早速この法案批判をSNS上で開始しました。

同氏はX(旧Twitter)に「この膨大で無駄だらけの歳出法案は、醜く忌まわしいものだ」と投稿し「これに賛成票を投じた議員は恥を知るべきだ。自分たちが間違っていることは分かっているはずだ」と厳しく非難しました。

申し訳ありませんが、もうこれ以上我慢できません。

この莫大で信じがたいほど無駄の多い議会の歳出法案は、本当にひどいものであり、見るに堪えないほどです。

こんな法案に賛成した議員の皆さん、恥を知るべきです。自分たちが間違ったことをしたと、わかっているはずです。

マスク氏は具体的な法案名には触れなかったものの、この投稿は数万件の反応を呼び起こし、連邦予算の赤字拡大や政府支出について活発な議論を巻き起こしています。

ホワイトハウスは即座にマスク氏の批判を否定し「この法案は財政赤字を増大させるものではない」と反論しました。

両者の対立が激化、個人攻撃に発展

トランプ氏、マスク氏に対する補助金停止を示唆

トランプ大統領本人は沈黙を続けていましたが、6月5日の記者会見で初めてコメントしました。

トランプ氏は同日ホワイトハウスの記者会見で「イーロンには非常に失望している。随分と助けてきたんだが」と述べ、かつて政権のアドバイザーを務めたマスク氏が公然と批判したことに不満を示しました。

さらにトランプ氏は自身のSNSに「我々の予算を節約する最も簡単な方法は、イーロンへの政府補助金と契約を打ち切ることだ」と投稿し、マスク氏の企業に対する政府の支援停止も辞さない構えを示しました。

我々の予算において何十億ドルもの節約を最も簡単に実現する方法は、イーロンに対する政府の補助金や契約を打ち切ることです。

バイデン前大統領がそれをしなかったのは、正直驚きでした。

これにより、NASAとの宇宙開発契約や電気自動車向け補助金といったマスク氏の事業に不可欠な政府支援が危ぶまれる事態となっています。

マスク氏が反撃「エプスタイン疑惑」まで言及

マスク氏も即座に反撃に転じました。

同日中にX上で「もし私がいなければトランプ氏は選挙に負けていた。民主党が下院を支配し、共和党は上院で51対49の少数派になっていただろう。まさに恩知らずだ」と怒りを露わにし、トランプ氏を強く批判しました。

マスク氏の怒りの投稿は深夜にかけてエスカレートし「法外な巨額支出はアメリカを破産させようとしている!」「巨大で美しい法案だなんて馬鹿げている」といった強い表現での投稿をしています。

また、マスク氏はトランプ氏が過去に財政赤字について語った言葉を引用し「この人物はいったいどこへ行ってしまったのか?」と皮肉を交えて批判しています。

さらには「大きな爆弾を落とす時だ。トランプ氏の名前がエプスタイン関連資料に載っている。政府が資料公開を渋っている本当の理由はそこにある」とまで投稿し、トランプ氏が故エプスタイン氏に関連する不正事件に関与していると示唆した衝撃的な主張も飛び出しました。

こうした個人攻撃とも言える応酬により、両者の関係は完全に決裂し、もはや修復は困難な状況となっています。

マスク・トランプ対立でテスラ株・仮想通貨急落

トランプ発言でテスラ株14%急落

急激な対立の激化は市場にも影響を与えました。

トランプ氏が補助金の打ち切りを示唆したことで、Tesla社の株価は同日14.3%急落しました。これにより約1,500億ドル(約21兆6,000億円)の時価総額が一日で失われました。

また、マスク氏は他のユーザーがXに投稿した「トランプ大統領は弾劾されるべきだ」という意見に対し、わずか数分後に「Yes(その通りだ)」と返信し、トランプ氏の罷免に賛成する姿勢を明らかにしました。

仮想通貨にも売り圧力、下落拡大

マスク氏とトランプ氏の対立激化は投資家心理を冷やし、仮想通貨市場でも価格下落を招いています。

ビットコイン(BTC)価格は急落しており、過去24時間の高値だった105,733ドル(約1,520万円)から一時100,900ドル(約1,450万円)まで下落しました。前日比では約3.2%の下落となります。

主要アルトコインにも売りが波及し、イーサリアム(ETH)は前日比7.65%安の2,412.09ドル(約34.7万円)、XRPも5.25%安の2.09ドル(約300円)まで値を下げています。

大口のロスカットと価格変動の拡大

米国株式市場でリスクオフ(投資家がリスクを避ける)の動きが強まる中、仮想通貨市場でも売りが相次ぎ、過去4時間で合計6億2,155万ドル(約890億円)相当の取引が強制的に決済されたことが明らかにされています。

これは大口投資家のロスカット(強制売却)によるもので、市場のボラティリティ(価格変動性)が一時的に急上昇したことを示唆しています。

ビットコイン調整局面と今後の見通し

ビットコインは先月末に史上最高値となる112,000ドル台を記録したばかりでしたが、今週に入ってからは調整局面に入っていました。

そこに今回の政界発の混乱が追い打ちをかけた格好で、仮想通貨市場全体が下落基調を強めています。

市場アナリストからは「短期的な利益確定売りによる調整であり、弱気相場入りではない」との見方もある一方で、両氏の対立が長期化すればマクロ経済の不透明感が強まり、さらなる価格変動につながる可能性も指摘されています。

マスク氏のビットコイン支持が加速する可能性

米国の財政をめぐる議論の中で、仮想通貨業界からはビットコイン台頭に関する発言も出ています。

カイザー氏「マスク氏はビットコイン最大主義者に」

こうした動きを受け、著名なビットコイン支持者でエルサルバドル大統領顧問のマックス・カイザー氏は「イーロンとブライアンはまもなく完全なビットコイン・マキシマリスト(最大主義者)になろうとしている」との見解を示しています。

カイザー氏はマスク氏が法定通貨主導の債務体制に不満を募らせている状況について「ビットコインこそ唯一の出口戦略であるという認識が高まっている証拠だ」と指摘しました。

トランプ氏と対立、ビットコイン支持を加速か

記事執筆時点でマスク氏自身がビットコインに関連する大量購入や自社資産の組み換えなどの具体的な行動は見せていません。

しかし、テスラ社は約9,700 BTCものビットコインを保有しているとされており、今後マスク氏が経営する企業(テスラやSpaceX、Xなど)の財務戦略をビットコイン重視に転換する可能性も指摘されています。

仮想通貨コミュニティでは「無責任な政府支出に対する究極の反逆は、マスク氏がビットコインに傾倒することだ」との声も上がっており、今回の対立を契機にマスク氏がビットコイン支持を鮮明化させるのではないかと期待する見方もあります。

マスク氏の最近の言動は「固定供給かつ非中央集権の通貨(=ビットコイン)だけがインフレや政府の財政失政から資産を守ることができる」というビットコイン最大主義の思想に近づきつつあるとも指摘されています。

マスク氏とトランプ氏の確執は依然予断を許さない状況ですが、皮肉にもこの争いがマスク氏をビットコインへと傾かせる一因となっているようです。

マスク氏が今後「ビットコイン最大主義者」としてどのような発言や行動を見せるのか、仮想通貨業界では大きな注目が集まっています。

今回の騒動は、ビットコインの存在意義や将来性について改めて注目が集まる契機となりそうです。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=143.74円)

>>最新の仮想通貨ニュースはこちら

サムネイル:AIによる生成画像

  • URLをコピーしました!

Written by

BITTIMES 編集長のアバター BITTIMES 編集長 仮想通貨ライター

2016年から仮想通貨に関するニュース記事の執筆を開始し、現在に至るまで様々なWeb3関連の記事を執筆。
これまでにビットコイン、イーサリアム、DeFi、NFTなど、数百本以上の記事を執筆し、国内外の仮想通貨ニュースの動向を追い続けている。

仮想通貨ニュース|新着

仮想通貨入門 - 基礎知識

市場分析・価格予想

目次