この記事の要点
- ムーディーズが米国債を史上初めて格下げ、財政悪化が原因
- 格下げを受け、米ドルへの不安からビットコイン需要が増加
- BTC価格は格下げ後も安定、10万ドル(約1,460万円)に回復
- FRBの金融政策次第でBTC価格はさらに上昇する可能性
米国債の信用格付けが史上初めて引き下げに
米格付け会社ムーディーズは2025年5月16日、米国の長期信用格付けを最上位の「Aaa(トリプルA)」から「Aa1(ダブルA)」に1段階引き下げたと発表しました。
ムーディーズが米国債に対する最高評価を引き下げるのは今回が初めてのことで、これにより米国は世界三大格付け会社(ムーディーズ、フィッチ、S&P)すべてで最上位格付けを失うことになりました(フィッチは2023年8月、S&Pは2011年に既に格下げ済み)。
ムーディーズはすでに2023年後半に米国債の格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げていましたが、今回の格下げ実施後は見通しを「安定的」へと引き上げています。
同社は声明で「歴代の米政権と議会は、年間の巨額財政赤字と金利コスト増大の傾向を逆転させる措置で合意できていない」と指摘しました。
この格下げ決定に対してトランプ政権は強く反発しており、ホワイトハウスのスティーブン・チャン広報部長はX(Twitter)上で次のように批判しています。
ムーディーズの首席エコノミスト、マーク・ザンディ氏はトランプ大統領の政敵であり、彼の『分析』を真剣に受け止める者はいない。
彼の予測は過去に何度も間違っていることが証明されている。
金融市場では格下げ発表を受けて米国債の利回りが上昇し、米ドルの信用力低下への懸念が広がりました。ただ、多くの市場関係者は今回の格下げをある程度予測しており「債券市場の動揺が限定的であれば経済への実質的な影響は少ない」との見方を示しています。
「金とBTCが新たな準備資産に」
米国国債の格下げ背景:膨らむ財政赤字と債務問題
ムーディーズによる米国債格下げの最大の理由は、累積36兆ドル(約5,260兆円)に達した連邦政府債務の持続可能性悪化と、今後さらに増加する利払い負担への強い懸念にあると見られています。
米連邦政府の年間財政赤字は今後も拡大傾向が続くと予想されており、ムーディーズの分析によれば2035年には単年度の財政赤字がGDP比9%に達し、累積債務もGDP比約134%にまで膨張する恐れがあると指摘されています。
さらに米国では債務上限(デットシーリング)引き上げを巡る与野党間の政治対立が定期的に発生しており、こうした政治的混乱による米国政府の債務返済能力への不安も、信用格付け低下の重要な要因となりました。
トランプ政権が推進する大型減税策は今後10年間で数兆ドル(数百兆円)規模の債務増加をもたらす見込みであり、財政規律への警戒感を高めています。
アジア富裕層の米ドル離れ
米国債格下げで高まるBTCの「安全資産」としての価値
こうした米国財政・金融の不安定要因がある中で、一部投資家はビットコイン(BTC)を「デジタルゴールド」に例え、法定通貨や国債に代わる安全資産として注目しています。
NFT Eveningが4月末に公表した調査によると、トランプ大統領が新たに関税を発表した後、米国人の68%が金ではなくビットコインを選んだとされ、BTCを安全資産として選択する傾向が強まっていることが明らかになりました。
仮想通貨取引所BitMEX元CEOのアーサー・ヘイズ氏も最新のブログで「米国債への信頼低下と海外資本の本国送還が進めば、ビットコイン価格が2028年までに100万ドル(約1億4,600万円)に達する可能性がある」と予測しています。
ビットコインは中央銀行や政府の信用に頼らない分散型デジタル資産であり、発行数の上限が決まっているため希少価値が高く、利用者が増えることでさらに価値が高まると期待されています。
ムーディーズの格下げ後もビットコイン価格が安定していることについて、仮想通貨業界からは「中央集権的な金融システムへの信頼が揺らぐなか、投資家が政府に管理されない希少な資産であるビットコインを選び始めている」との指摘が出ています。
「ビットコインは唯一の救命ボート」
米国の信用不安を背景にビットコイン需要が拡大
FRBの金融政策がビットコイン相場に与える影響
米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策動向と米国の財政・通商政策は、仮想通貨市場に大きな影響を与えています。
2025年3月のFOMC(連邦公開市場委員会)では、インフレ率の低下を背景に政策金利の据え置きが決定され、パウエルFRB議長も追加利上げに対して慎重な姿勢を示しています。
市場では年内にも利下げに転じるとの観測が浮上しており、金融緩和期待はビットコインを含むリスク資産の支えとなっています。
一方でトランプ政権の関税政策などで物価が上昇し続けた場合、FRBが利下げを見送って金融引き締めを継続する可能性があり、これは仮想通貨市場にとって価格下落の要因になる可能性があります。
実際にビットコインは、関税ショックによるリスクオフ局面で今年3月、一時8万ドルを割り込み4カ月ぶりの安値を付けました。
しかしその後は米国の金融・通商政策に対する過度な警戒感が和らいだこともあり反発に転じ、記事執筆時点では10万ドル(約1,460万円)まで価格が回復し、過去最高値に迫る展開となっています。
ムーディーズ格下げ後のビットコイン価格の動き
ムーディーズの格下げ発表直後にはビットコイン価格が数%急騰する一方、米国株価指数先物は1.5%下落するなど、安全資産とリスク資産で明暗が分かれる動きも見られました。
その後ビットコイン相場は落ち着きを取り戻し、格下げにも動じない底堅さが示されています。
X(Twitter)では「2025年の安全資産は金(ゴールド)」といった声もありますが、今回の格下げ局面では金相場が週間で約3%下落する一方、ビットコインは約4%上昇しており、ビットコインの相対的な強さが意識されています。
こうした市場動向を受けて、長期的な視点ではビットコインがデジタル時代における有力な安全資産の選択肢となるという見方が投資家の間でさらに広がっています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=145.94円)
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Source:ロイター報道
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
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