この記事の要点
- ビットコインは価値保存の手段としてだけでなく、技術基盤としても急成長
- Block社がLightningで年利9.7%、Cash Appでも利用急増
- LightsparkがCoinbaseやNubankなど大手と提携拡大
- River社は政府公式ウォレットに決済APIを提供
- IBEXが中南米やアジアで日常決済インフラを構築
Lightning活用で広がるビットコイン決済
ビットコイン(BTC)関連企業が決済インフラ構築における成果を相次いで公表しました。
Bitcoin Magazineによると、スタートアップ各社が、ライトニングネットワーク(Lightning Network)を活用した取引高の拡大やユーザー数の増加など、財務戦略にとどまらない、製品・サービス面における成長を示しています。
著名投資家ジェフ・ブース氏も「一般の人々はビットコイン・エコシステムの成長速度に気付いていない。財務戦略や政治にばかり関心が集まり、ビットコインエコシステム全体の発展に対する認識が不足している」と指摘しており、ビットコインが単なる「デジタルゴールド」にとどまらず、決済インフラとして進化していることが明らかになっています。
決済システム「Square」BTC決済対応へ
企業によるビットコイン活用とその成果
Block社のLightning活用による収益モデル
ライトニングルーティングによる利回りの実現
Twitterの共同創業者としても知られるジャック・ドーシー氏が率いるフィンテック企業Block(旧Square)は、自社のライトニングノード運用によって「年間利回り9.7%」を得ていると発表しました。
同社ビットコイン部門のプロダクトリードであるマイルズ・スーター氏は「この利回りはアルトコインのステーキングや無謀な投機によるものではなく、ライトニングネットワーク上でリアルタイムの支払いを効率的にルーティング(支払いの中継処理)することで得た真のビットコインリターンだ」と説明しています。
このような背景の中、Block社傘下の決済アプリCash Appでも、ライトニングネットワークを活用した送金が急増しています。
具体的には、2024年のライトニング利用回数は前年の7倍に拡大し、現在ではユーザーのビットコイン出金の約25%がライトニング経由で処理されるまでになっています。
スーター氏によると、Cash Appは「米国における最大級のビットコインオンランプ(法定通貨からBTCへの交換手段)の一つで、常時オンチェーン取引全体の約10%を占めている」とされ、ビットコイン決済サービス事業者として急速に存在感を高めています。
Square端末への導入計画
さらにBlock社は、2025年のカンファレンス「Bitcoin 2025」でライトニング決済機能の実証実験を行い、2026年には小売店向けSquare端末へのライトニング決済機能本格導入を計画していることも明らかにしています。
こうした取り組みは、ビットコインはもはや資産であると同時に決済プロトコルでもあり、ビットコインを世界最高の決済システムにすることを目標とする同社の戦略を示すものです。
ビットコインウォレット「Bitkey」に新機能
Lightspark:大手企業向けライトニング基盤の提供
大手金融機関との提携拡大と導入事例
Lightspark社(米国)はビットコインのライトニングネットワークを企業向けに提供するインフラ企業で、大手取引所や金融機関との提携を拡大しています。
その代表例として、2024年4月には米大手仮想通貨取引所Coinbase(コインベース)がLightsparkと提携してライトニングネットワークを統合し、ユーザーがビットコイン送受信時にライトニングを選択できる機能を正式に導入しました。
Coinbaseでライトニング対応が開始されて以降、送金手数料や処理時間が大幅に削減されるという効果が現れ、現在では同社のビットコイン取引全体の約15%がライトニング経由で処理されていると報告されています。
グローバル展開と多国籍企業による採用
Lightsparkの影響力は米国にとどまらず、欧州の大手フィンテック企業RevolutやブラジルのNubankなどもそのソリューションを採用しています。
特にNubankは、1億人以上の顧客にライトニングネットワーク経由のビットコイン送金サービスを提供することを目標に統合を進めており、その規模の大きさが注目されています。
Lightsparkは高度なAPIや自動ノード運用ツールを備えたエンタープライズ向けライトニングプラットフォームを構築しており、煩雑なライトニングノード管理を代行することで企業が高速かつ低コストなビットコイン決済を容易に導入できるよう支援しています。
信頼性・拡張性を両立した決済ネットワーク
Lightsparkの提供するインフラは完全カスタム鍵管理と最適化されたルーティングを特徴としており、パートナー企業は自社で秘密鍵を保持しつつLightsparkの高可用性ノードを利用できるため、信頼性と拡張性を両立した決済ネットワークの構築を実現しています。
「ビットコインは価値の保存手段にとどまらず、実際の決済手段としての活用が広がりつつある」とLightsparkチームは強調しており、各国でのビットコイン価格上昇やオンチェーン手数料高騰の中で、Lightning Networkによる即時かつ低コストのグローバル送金が本格的に稼働し始めたことを示す事例となっています。
大手デジタル銀行「Nubank」と提携
River社:ライトニングネットワーク活用による金融サービス
RLSによる法人向けライトニングAPIの提供
River Financial社(米国)はビットコインのブローカー事業に加えて、ライトニングネットワークを活用した決済インフラAPIサービス「River Lightning Services(RLS)」を提供しています。
RLSを導入すれば、企業は自社でライトニングノードを運用することなく、アプリやサービスにビットコインの送受金機能を組み込むことが可能になります。
この技術は実際に、米エルサルバドル政府の公式ウォレット「Chivo Wallet」のバックエンドとしても採用されています。
Chivoウォレットは国内数百万規模のユーザーを抱えており、River社は2021年のエルサルバドルにおけるビットコイン法定通貨化に伴い同ウォレットへライトニング決済インフラを提供してきました。
高信頼のライトニングノード運用とグローバル展開
River社の創業者アレックス・リーシュマン氏は「RLSはクレジットカード処理でStripe社が果たした役割をビットコインで担うものだ」と述べており、高い稼働率と決済成功率を実現したライトニングノード運用によって、安全かつ即時の小口決済を世界中で可能にすることを目指しています。
River社が運営するライトニングノードでは2023年8月時点で約30万件の送金トランザクションを処理し、決済成功率99.7%という非常に高い水準を達成しています。
資金調達と金融インフラ構築への注力
こうした技術力に支えられ、River社は事業を着実に拡大しています。
仮想通貨(暗号資産)市場が低迷する局面でも約3,500万ドルの資金調達(シリーズB)に成功するなど、ライトニングネットワークを活用した新世代の金融インフラ構築に取り組む代表的企業として注目されています。
エルサルバドル以外にも、米国の複数の仮想通貨取引所やウォレットがRLSを利用してビットコインの即時送金サービスを展開していると伝えられており、River社は「ビットコイン普及の一助となることを目指している」と述べています。
IBEX:Lightning決済インフラのグローバル展開
中南米を起点としたライトニング決済の展開
IBEX社(グアテマラ)はビットコインのライトニングネットワークを活用したグローバル決済プラットフォームを提供するフィンテック企業です。
2018年創業のIBEX社は、中南米を中心に企業や店舗向けにライトニング決済ソリューション「IBEX Pay」やAPIを展開し、国境を越えた即時送金や店舗のビットコイン決済受け入れを技術面で支援しています。
同社はエルサルバドルのビットコイン法定通貨化の際に商業施設への決済導入支援を行ったほか、2022年には米マイアミ市で開催されたイベント「Bitcoin 2022」に合わせて85店舗以上にライトニング決済を導入する実証を行うなど、各地でライトニングネットワークの商用利用が進められています。
大手取引所HTXとの提携で新興市場に展開
2024年9月には大手仮想通貨プラットフォームHTX(旧Huobi)との戦略的提携を発表し、HTXの取引所にライトニングネットワーク技術を統合する計画も進められています。
この提携により、HTXのユーザーはより高速で低コストなビットコイン入出金を利用できるようになる見込みで、両社はアジア・中南米・アフリカなど新興市場におけるビットコイン決済普及も共同で推進するとしています。
日常決済インフラとしての進化
IBEX社は「即時決済」「低手数料」「高いセキュリティ」を強みとしたライトニング決済インフラで各国企業と連携を深めており、規制遵守や複数通貨対応にも注力することで、銀行や決済事業者にとって導入しやすい包括的ソリューションを提供しています。
こうした取り組みは、ポルトガル領マデイラ島での250店舗以上のライトニング決済導入や、アフリカ諸国への展開などにもつながっており、ビットコインの日常決済インフラとしての地位向上に寄与しています。
USDTをライトニングネットワークに統合
資産戦略としてのビットコイン活用拡大
一方で、決済インフラとしての活用と並行して、企業が自社の資産戦略にビットコインを組み入れる動き(ビットコイン財務戦略)も近年加速しています。
財務戦略としてのBTC活用が加速
スタンダードチャータード銀行の調査によれば、仮想通貨を本業としない上場企業のうち少なくとも61社が準備金や余剰資金の一部をビットコインに配分する財務戦略を採用しており、この数は直近2か月間で倍増しました。
代表例として、ソフトウェア企業のストラテジー(旧マイクロストラテジー)社は2020年から継続的にビットコイン買い増しを行い、現在では621億ドル(約9兆円)相当のビットコインを保有しています。
同社の株価は2020年以降に3,000%超上昇し、他社にも追随する動きが広がっています。
巨額投資で注目集まるBTCファンド
ドナルド・トランプ米大統領が創設したメディア企業「トランプ・メディア&テクノロジー・グループ(TMTG)」は5月、ビットコイン投資のために25億ドル(約3,620億円)を調達しており、スタンダードチャータード銀行の報告書ではこうした「財務戦略採用企業」の保有ビットコインが2ヶ月で合計10万 BTC近くに倍増したと指摘されています。
さらに、日本のソフトバンクグループやステーブルコイン発行企業テザー社なども共同出資を行いビットコイン投資ベンチャー「Twenty One Capital」を設立すると発表し、市場の注目を集めました。
カナダの太陽光発電企業SolarBank社も2025年6月にビットコイン財務戦略採用を表明しており、同社CEOは「伝統的な公共事業株は地味で低リターンだ。仮想通貨への投資で新しい投資家層の関心を引き付けたい」と述べています。
ソフトバンクらが出資のBTC投資企業
BTCを保有する国家と企業の未来像
このような動きの背景には、米国における規制環境の軟化や政策転換もあります。トランプ大統領は3月、米国の戦略的ビットコイン準備の創設を指示する大統領令に署名し、ビットコイン支持の姿勢を鮮明にしました。
こうした追い風を受け、2026年末までに世界の企業・政府がビットコイン全供給量の20%超(約426万9,000 BTC)を保有する可能性も指摘されています。
ビットワイズ社などの共同調査によれば、その評価額は約4,270億ドル(約60兆円)規模に達すると試算されています。これは、ビットコインが各国の外貨準備や企業の長期資産として本格的に組み込まれる段階に入りつつあることを示しています。
ただし、市場アナリストは「ビットコイン価格が高値圏にある中で参入した企業は価格下落時に流動性リスクに直面する可能性もある」と警鐘を鳴らしており、こうした財務戦略には、価格変動リスクや会計処理の不確実性が伴う点も指摘されています。
しかし全体的には、ビットコインの企業利用は「資産として保有する段階」から「決済インフラとして活用する段階」へと広がりを見せており、2025年時点でその両面が鮮明となった形です。
各種レポートや企業動向が示す数字は、ビットコインがグローバル経済において持つ役割が着実に拡大していることを物語っています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=144.93 円)
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Source:Bitcoin Magazine報道
サムネイル:AIによる生成画像






























