年末レポートで振り返る2025年仮想通貨市場の異変
2025年12月29日、大手仮想通貨メディアBitcoin.comは、2025年に仮想通貨市場で発生した出来事を検証する年末レポート「2025年サプライズ・オブ・ザ・イヤー」を公表しました。
レポートによると、2025年の仮想通貨市場は多くの専門家の予想を大きく裏切る展開となり、前例のないボラティリティの高騰や政治的な公式ミームコインの登場、プライバシーコインの復活などが相次いだとされています。
同メディアは、こうした出来事が市場に与えた影響度や持続性、波及効果などを分析した上で、サプライズ度の大きかったトップ5の出来事をランキング形式で選出しています。
2025年仮想通貨市場「12の勝者」
2025年仮想通貨市場を揺るがした出来事TOP5
第5位:仮想通貨市場史上最大の暴落(10月10日)
10月10日、仮想通貨(暗号資産)市場では突発的な要因を背景に過去最大規模の急落が発生しました。
この日は米国のトランプ大統領が中国製品に対する追加関税(100%)を表明し、その発言が引き金となって世界的な市場パニックが起きました。
ビットコイン(BTC)価格は史上最高値を更新した直後に急落し、約11万7,000ドルから一時10万ドル前後まで下落しています。
わずか数時間〜1日程度で約190億ドル(約3兆円)相当のレバレッジ取引ポジションが強制清算される事態となり、過去に例のない規模のマーケットクラッシュとなりました。
急落の明確な原因は断定されていませんが、市場では「匿名勢力による仕掛け的な売り崩し」があったとの憶測も飛び交いました。
一方で取引所の流動性逼迫や過度なレバレッジ積み上がりが重なり、連鎖的な暴落を招いたとの指摘も出ています。
また、この急落時には世界最大手の仮想通貨取引所Binance(バイナンス)でオラクルエラーや取引エンジンの一時停止が発生しており、そうしたシステム障害が損失拡大に拍車をかけたとの分析もあります。
これらの動きを踏まえBitcoin.comは、予兆なく市場を襲った10月10日の暴落劇は今年の仮想通貨業界における大きなサプライズの一つと位置付けています。
関税発表、仮想通貨市場に衝撃
第4位:トランプ大統領夫妻による公式ミームコインの登場
2025年初頭には、米国トランプ大統領が公式の仮想通貨ミームコイン「$TRUMP」トークンを発売するという前代未聞の出来事が起きました。
これまで政治家を模した非公式のトークンは存在していましたが、米大統領自身が公認するコインのローンチは異例とされています。
$TRUMPトークンは発表直後から投機熱に火が付き、週末を挟んだ数日で価格は10ドル未満から最高74.59ドル(約11,600円)まで急騰しました。
時価総額も一時100億ドル(約1.5兆円)を超え、仮想通貨全体で上位20位以内に入る規模に達しました。
さらに、ファーストレディであるメラニア・トランプ氏の名を冠したミームトークン「$MELANIA」も公式に登場しています。
ガーディアン紙によれば、メラニア氏のトークンが発売されると$TRUMPの価格は75ドルから30ドルへと50%以上急落し、その後持ち直したものの市場に大きな波紋を広げました。
一方で$MELANIAトークンは一時、時価総額130億ドル(約2兆円)規模に達したと伝えられています。
こうした政治絡みのミームコイン熱に対し、米著名投資家アンソニー・スカラムーチ氏は「これは業界にとって悪い出来事だ。イディ・アミン級の腐敗だ」と痛烈に批判しました。
賛否両論はあるものの、政界要人が公式ミームコインを発行し市場を席巻した現象は今年最大級のサプライズの一つとなりました。
公式ミームコイン「$TRUMP」発表
第3位:分散型取引所「ハイパーリキッド」の躍進
分散型取引所(DEX)「Hyperliquid(ハイパーリキッド)」の飛躍的成長も、2025年の業界関係者にとって大きな驚きとなりました。
Hyperliquidは2024年に独自トークン「HYPE」の生成イベントを実施しスタートした新興DEXですが、2025年を通じて取引量を拡大しました。
同プラットフォームは高性能な独自レイヤー1ブロックチェーン上に構築されており、オンチェーンのデリバティブ取引で圧倒的なシェア(市場占有率70%以上)を獲得しています。
ガス代ゼロ・高速約定などの利点を背景に、数ヶ月で累計48万8,000人以上のユーザーを引き付けたと伝えられています。
日次の取引高も平均で50億ドル規模、相場変動の大きい日は86億ドル(約1.3兆円)超に達し、単独で世界最大手の仮想通貨取引所バイナンスの約1割に相当する出来高を処理するまでになりました。
2025年通年の累計取引量は約2.9兆ドルに上り、同年の総収益は約8億4,400万ドル(約1,320億円)に達しています。
収益規模ではDeFi(分散型金融)分野で世界有数の高収益企業となっており、中核メンバー十数名程度のチームで運営されている点も市場関係者の注目を集めています。
KYC(本人確認)不要の匿名利用が可能で取扱い銘柄も豊富なことからアクティブユーザー数は日次5万人を超える規模となっており、HYPEトークンの時価総額も50億ドル(約7,800億円)台に達しました。
中央集権型と遜色ない取引性能を持つDEXとして躍進したHyperliquidの成功は、業界の常識を塗り替えるサプライズとして今年のトップ5に位置付けられています。
分散型取引所「Hyperliquid」
第2位:プライバシーコインの復活と「Zcash」急騰
長らく規制当局の監視下に置かれ低迷気味だったプライバシー保護型通貨(プライバシーコイン)が今年息を吹き返し、中でもジーキャッシュ(Zcash/ZEC)は急伸をしました。
2025年10月から11月にかけてZECの価格は700%以上もの上昇を記録し、一時は450ドル台(約7万1,000円)に達する勢いを見せています。
一部には「出来高の小さいプライバシー通貨市場を狙った大口投資家による意図的な価格吊り上げだ」との見方もあり、リン・アルデン氏など仮想通貨業界の著名人はZECの上昇を「人為的なポンプ相場」だと指摘しています。
一方で米Galaxy Digital(ギャラクシー・デジタル)社のリサーチレポートは全く別の角度からこの現象を分析しました。
同レポートは、ビットコインの機関投資家化が進む中で、仮想通貨本来の理念であるプライバシーや匿名性が再評価された可能性があると述べています。
その上で、Zcashのユーザー体験(UX)改善によりプライバシー重視層が利用しやすくなったことが、価格急騰の一因になったとの見方を示しています。
これらの動きを踏まえ、Bitcoin.comは、秋頃のZcashの予想外の高騰劇は2025年最大級のサプライズの一つとなりました。
Zcash、過去1年で10倍超に急騰
第1位:主要仮想通貨ビットコインの低迷
今年のサプライズ第1位に選出されたのは、ビットコインの年内パフォーマンス低迷です。
2025年は米国で仮想通貨に友好的な新政権が発足し、ステーブルコイン規制「GENIUS法」が制定されるなど追い風が吹くとして、多くの専門家がビットコインの大幅上昇を予想していました。
一方で、ビットコイン価格は年間を通じて伸び悩み、年初来ほぼ横ばいか微減という結果にとどまっています。
この現象について、市場では複数のアナリストが異なる観点から分析をしており、その一つがジョルディ・ヴィッサー氏の提唱する「サイレントIPO(静かな新規公開)理論」です。
ヴィッサー氏は、2025年の好材料が出揃った局面を利用して初期からの大口BTC保有者(いわゆるOG)が保有コインを新たな世代の投資家に分散売却したため、今年は上値が重くなったと指摘しています。
実際その裏付けとして、Galaxy Digital社の決算説明会では「顧客の依頼で90億ドル(約1.4兆円)相当のビットコインを売却した」との報告があり、今年に入り何年も動いていなかった古いコインが次々と移動しているオンチェーンデータも観測されています。
一方でビットコインや仮想通貨を自社財務に組み入れる企業が増えたことによる市場構造の変化を指摘する声もあります。
スイスの大手資産運用会社「21Shares」は、こうした企業型の仮想通貨保有(デジタル資産トレジャリー「DAT」)の広がりにより、市場に一定の売却圧力が常時かかる構図となり、これまでビットコイン価格を支配していた4年周期のサイクルが崩れつつあると分析しています。
好材料が揃ったにもかかわらずビットコインが年間を通じて停滞した事実自体が異例であり、Bitcoin.comはこれを「2025年最大のサプライズ」と位置付けています。
BTC停滞の背景「市場構造の歪み」
2025年総括と仮想通貨市場の今後の焦点
こうした一連のサプライズを経た上で、2025年12月29日現在の仮想通貨市場は全体的に停滞気味の状況が続いています。
ビットコイン価格は約88,000ドル(約1,375万円)前後と昨年末比ほぼ横ばい圏にとどまっており、期待されていた年末ラリーは姿を見せていません。
また、第4位で取り上げられたトランプ氏の公式ミームコイン「$TRUMP」も、最高値の70ドル超から5ドル未満(約780円)まで下落して推移しています。
主要アルトコインも低調で、例えばイーサリアム(ETH)も約3,000ドル(約47万円)前後と年初来ほぼ横ばい水準の維持となりました。
一方で、価格面の低迷が続く中でも、機関投資家の仮想通貨への関心は依然として根強いことが指摘されています。
実際、2025年を通じて仮想通貨投資商品(ETF等)にはグローバルで累計約467億ドル(約7.3兆円)の資金流入がありました。
今年経験した数々の予想外の展開を踏まえ、市場参加者は来たる2026年に向け慎重さを保ちつつも、新たな展開への期待を募らせています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=156.27 円)
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Source:Bitcoin.comレポート
サムネイル:AIによる生成画像





























