欧州12行、ユーロ建てステーブルコイン投入|ドル覇権の構造転換へ

欧州12行、ユーロ建てステーブルコイン投入|ドル覇権の構造転換へ

この記事の要点

  • Fireblocksが2026年4月21日、欧州12行連合の基盤採用を発表
  • EU規制MiCA準拠のユーロ建てステーブルコイン発行を計画
  • ドル99%の約49兆円市場に対し、初の大規模ユーロ参入
  • 銀行主導で国際送金・決済の構造転換が進む可能性
目次

欧州12行、ユーロ建てステーブルコイン投入へ

米Fireblocks(ファイアブロックス)は2026年4月21日、欧州の大手銀行12行で構成されるコンソーシアム「Qivalis(キバリス)」のコアインフラパートナーに選定されたと発表しました。

Qivalisは、EUの包括的な仮想通貨規制「MiCA法」に準拠したユーロ建てステーブルコインを2026年後半に発行する計画です。

その発行にあたっては、オランダ中央銀行(De Nederlandsche Bank)による認可取得を前提に、アムステルダム拠点を通じて手続きが進められています。

参加行にはBanca Sella・BBVA・BNPパリバ・CaixaBank・Danske Bank・DekaBank・DZ BANK・INGが含まれており、これにKBC・Raiffeisen Bank International・SEB・UniCreditが加わることで、フランス・スペイン・ドイツ・イタリアなど欧州主要国を横断する体制が形成されました。

こうした銀行主導の連携により、計画が実現すれば欧州の企業や個人はドル建てを介さず、24時間365日でユーロ建ての国際送金や決済を行えるようになる見通しです。

約3,050億ドル(約49兆円)規模に拡大したステーブルコイン市場のうち99%を占めるドル建てに対し、規制準拠のユーロ建てを本格投入する初の大型事例として注目が集まっています。

49兆円市場のドル偏重に挑む12行連合

ドル建て99%、ユーロは0.2%の空白

Fireblocksの発表によると、2026年1月時点でステーブルコイン市場は3,000億ドル規模に達しています。このうち99%がドル建てで占められ、ユーロ建ての残高は6億5,000万ドル(約1,040億円)にとどまっているといいます。

一方で、ユーロは世界で2番目に取引量の多い通貨で、1日あたり約1兆1,000億ドル(約175兆円)の取引があるものの、規制準拠のユーロ建てステーブルコインは大規模な実例に乏しく空白が続いてきました。

市場全体の取引量は2025年第4四半期だけで11兆ドル(約1,756兆円)、2025年通年では33兆ドル(約5,270兆円)と前年比75%増を記録しました。この急拡大はドル建てに集中しており、欧州の企業や機関投資家が取れる選択肢は事実上ドル建てに限られてきました。

こうした状況を背景に、キバリスCEOのヤン・ゼル氏は「欧州には信頼できる金融機関が裏付けとなる規制準拠のユーロ建てステーブルコインが必要だ」と述べ、ドル覇権の構造転換を図る考えを示しています。

ユーロ1対1担保、24時間決済を搭載

こうしたユーロ建ての空白を埋めるため、キバリスのステーブルコインは1対1でユーロに裏付けられる方針です。Fireblocks提供の発行・流通・償還インフラを通じて24時間365日の国際決済に対応します。

発表によれば、活用される「ERC-20F」は、許可型アクセス制御・コンプライアンス検証・監査対応レポーティングを組み込んだ機関向け規格としています。

さらに、AML(マネーロンダリング対策)・KYC(本人確認)・制裁スクリーニング・不正監視が取引ワークフローに統合され、MiCA要件との整合を前提に設計されています。

こうした設計を踏まえ、ファイアブロックスCEOであるマイケル・シャウロフ氏は「欧州の銀行には今や規制の枠組みと機関グレードのインフラの両方が揃っている」と述べました。

同氏は「MiCA要件の充足・機関規模の処理量・既存銀行システムとのシームレスな統合を実現できる」と強調しています。

12行が顧客にカストディと決済を提供

こうした技術基盤を前提に、キバリスのプラットフォームが稼働すれば参加12行はそれぞれの顧客に対してカストディ(保管)・ウォレットサービス・決済オーケストレーションを直接提供できるようになります。

各行が独自の収益機会を取り込める構造で、コンソーシアム全体としては段階的に機能を拡張する方針で、これまでドル建てで代替せざるを得なかった欧州内の国際決済や金融商品の清算が、MiCA準拠の環境下で24時間処理できる見通しです。

サービス提供を担う体制として、12行は2025年9月に9行で始動した後、12月のBNPパリバ加入で10行、2026年2月のBBVA加入で11行へと段階的に拡大してきました。

直近でDZ BANKが加わって12行に到達したものの、正式な稼働にはオランダ中央銀行による電子マネー機関(EMI)としての認可取得が前提となります。

米欧10行超、銀行主導のSC発行が本格化

こうした銀行主導の動きは欧州にとどまらず、米国でも米シティグループが2025年7月、独自のステーブルコイン発行を検討していることを明らかにしました。

また、JPモルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカなど米大手銀行は、合同でのドル建てステーブルコイン発行を協議していると報じられています。

欧州でも2025年10月、BNPパリバが三菱UFJ銀行を含む世界10行とG7通貨連動型ステーブルコインの共同検討を発表するなど、銀行主導の動きが相次いでいます。

オランダ中央銀行による認可の可否と、2026年後半に予定されている発行開始は、欧州の企業や機関投資家がドル建て依存から脱却できるかを見極める最初の試金石となる見通しです。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=159.67 円)

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Source:Fireblocks発表
サムネイル:AIによる生成画像

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