SUI、量子コンピュータの脅威に先手|耐量子署名を2027年導入へ

SUI、量子コンピュータの脅威に先手|耐量子署名を2027年導入へ

この記事の要点

  • Sui財団、耐量子署名2方式を27年Q1にメインネット導入へ
  • 既存資産を移さず量子耐性鍵へ移行、将来の量子攻撃に備える
目次

耐量子署名を2027年メインネット導入

仮想通貨スイ(SUI)の開発を支援するSui財団は2026年8月6日、量子コンピュータによる暗号解読の脅威に備え、NIST承認のポスト量子(耐量子)署名2方式をネイティブ追加すると発表しました。

導入するのは日常取引向けの「ML-DSA-65」と高額資産の保管を想定した「SLH-DSA-SHA2-128s」で、いずれもNISTが標準化した耐量子アルゴリズムから選ばれています。

新たな署名方式への移行では既存ユーザーが資産を別のアドレスへ移す必要はなく、現在のリカバリーフレーズを使ったまま、保有資産とアドレスを維持して量子耐性を備えた鍵へ切り替えられるとしています。

新方式は既存環境への影響を抑える任意選択(オプトイン)型で提供され、従来のアカウントやアプリを維持したまま、2027年第1四半期(Q1)からメインネットで利用できるようにする計画です。

既存ウォレット維持で量子耐性を確保

公開鍵の永続露出が招く量子攻撃

Sui財団が耐量子署名への移行を急ぐ背景には、一般的なシステムとは異なり、ブロックチェーンでは取引を送信した時点から公開鍵が永続的に露出するという特有のリスクがあります。

こうして公開された鍵は、今のうちに収集して将来の量子コンピュータで署名を偽造する「ハーベスト・ナウ・フォージ・レイター」攻撃に悪用されるおそれがあり、量子コンピュータが実用化される前から攻撃者による鍵の収集が始まりうると同ファウンデーションは指摘しました。

将来の脅威を見据えて早期に移行する根拠として、Sui財団は米Google(グーグル)の量子研究部門Google Quantum AIが2026年3月に公表した試算を引用しています。

同試算では、50万個未満の物理量子ビットを備えた誤り耐性型のマシンによって、公開鍵から秘密鍵を復元する処理が数分以内に完了すると見積もられています。

技術面で量子攻撃への警戒が強まるなか、制度面でも移行期限の前倒しが始まっており、NISTが従来方式を2030年に非推奨・2035年に禁止とする計画に対し、2026年6月署名の大統領令「Executive Order 14412」では連邦機関により早い移行期限が設定されました。

格子とハッシュ、2方式で安全性を確保

こうした技術・制度両面の変化を踏まえ、Sui財団は単一の暗号方式に依存せず、数学的な土台が異なる格子暗号のML-DSA-65とハッシュ型のSLH-DSA-SHA2-128sを組み合わせることで、一方に弱点が見つかっても他方へ影響が及びにくい構成を採用しています。

日常取引を担うML-DSA-65では性能とコストだけを優先せず、コストを抑えられる「レベル1」ではなく、より大きな安全余裕を確保できる「レベル3」のパラメータが選ばれました。

安全性を高めた背景には暗号解析技術そのものの進歩があり、米Anthropic(アンソロピック)のAIモデルは2026年7月、2年間の審査を経ていた耐量子署名候補「HAWK」の有効鍵強度を約60時間で半減させた事例を報告しています。

Suiが選んだレベル3はChrome(クローム)やCloudflare(クラウドフレア)のポスト量子暗号でも採用されており、現在では同水準の暗号技術が人によるウェブ通信の半数以上を保護しているとしています。

一方、高額資産向けのSLH-DSA-SHA2-128sはプロトコル中核へ固定せず、Move(Suiのスマートコントラクト言語)内で処理することで、ブリッジとの互換性を保ちながらポスト量子暗号の標準化に合わせて実装を更新できる設計となっています。

リカバリーフレーズ維持で鍵を更新

異なる2方式で安全性を確保する一方、既存ユーザーの移行負担を抑えるため、Suiでは現在の鍵をシードから決定論的に導出する仕組みを新たな耐量子署名でも引き継ぎます。

ML-DSA-65の秘密鍵にも現在のウォレットと同じ32バイトのシードを利用できるため、ユーザーは手元のリカバリーフレーズを変更することなく、量子耐性を備えた新しい鍵を導出できるとしています。

さらにSui上で稼働中のアドレスエイリアス(別名設定)機能を組み合わせることで、既存アカウントは資産を別のアドレスへ移さず認証鍵だけをポスト量子鍵へ更新でき、コンセンサスや既存のチェーン状態を変更しない通常のプロトコル機能追加として導入できると説明されています。

この仕組みを段階的に導入するため、まず量子耐性ボールトを2026年内にメインネットへ投入し、同年末にML-DSA-65をテストネットへ追加した後、2027年第1四半期(Q1)にはメインネットでのネイティブアカウント認証に対応する予定です。

ただし、これらは現時点での目標時期となっており、Sui財団は独立監査やテストネットでの検証結果に応じてスケジュールを変更する可能性があるとしています。

香港当局やTRONも耐量子対策を推進

Suiがメインネット導入までの工程を具体化する一方、量子コンピュータへの備えは仮想通貨インフラ全体の課題となり始めており、規制当局による準備状況の点検とブロックチェーン側での技術検証がそれぞれ進められています。

規制当局では香港金融管理局(HKMA)が2026年7月27日、銀行の量子対応度を測る「量子準備指数(QPI)」を初公表し、金融機関が暗号技術の移行にどこまで備えているかを評価する取り組みを開始しました。

ブロックチェーン側では仮想通貨トロン(TRX)の開発チームが2026年7月、耐量子署名2方式をテストネット「Nile」での試験運用に移しており、メインネットへの導入を見据えた技術検証に入っています。

香港では金融機関の準備状況を測る制度整備、TRONではテストネットでの技術検証、Suiでは既存アカウントの移行を含む実装工程が示されており、耐量子化に向けた準備がそれぞれ異なる段階で具体化しています。

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Source:Sui財団発表
サムネイル:AIによる生成画像

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