TRON、耐量子署名をテストネットで試験開始|2方式でメインネットに備え

TRON、耐量子署名をテストネットで試験開始|2方式でメインネットに備え

この記事の要点

  • TRONが耐量子署名をテストネットで試験開始
  • 2029年の量子脅威に先行し約3年前倒しで移行へ

まずはトロン(TRX)を詳しく

目次

TRON、耐量子化へテストネット実装を開始

仮想通貨トロン(TRX)の開発チーム「TRON Core Devs」は2026年7月3日、テストネット「Nile」上で耐量子性を持つポスト量子(PQ)署名機能の試験運用を開始しました。

これにより開発者や一般ユーザーは、Nile上で耐量子ウォレットを作成し、PQアルゴリズムで署名したトランザクションを送信できるようになりました。

今回の試験運用は、将来の量子コンピュータによる楕円曲線署名(ECDSA)の解読リスクを見据えたもので、プロトコル層から耐量子化を進めるための実証環境として位置づけられています。

TRON Core Devsは設計文書で、テストネットでの検証を経てメインネットへの導入を目指す方針を示しており、約3年前倒しでの展開完了を目標に掲げています。

PQ署名2方式でメインネットに備え

2方式を組み合わせた二重構成

今回の試験運用では、米国立標準技術研究所(NIST)が策定を進める「Falcon-512(FN_DSA_512)」と、正式標準規格「FIPS 204」に基づく「ML-DSA-44(Dilithium2)」の2種類の耐量子署名方式に対応しました。

署名サイズが比較的小さいFalcon-512を既定(デフォルト)の方式とする一方、Falconがドラフト規格にとどまることも踏まえ、ML-DSA-44も並行して実装しています。

両方式はオンチェーンガバナンス提案(ALLOW_FN_DSA_512/ALLOW_ML_DSA_44)ごとに個別に有効化でき、必要に応じて片方のみ利用することも可能です。

既存ウォレットとの互換性を維持

新たな署名方式の導入にあたっては、既存システムとの互換性も考慮されており、TRONはアカウント構造を変更せず、PQ署名から生成されるアドレスも従来と同じ形式を維持する設計を採用しています。

署名の検証では公開鍵を各トランザクションに含める方式を採用し、新設された「PQAuthSig」フィールドによって、ノードは従来の署名とPQ署名を判別しながら検証できるようになっています。

その一方で、PQ署名ではデータ量が増加するという課題もあり、設計文書ではFalcon-512の公開鍵と署名を合わせたサイズがECDSA署名の約25倍になると説明されています。

メインネット移行へ段階計画

ウォレットや周辺ツールは今後対応

テストネットでは耐量子署名を利用できるようになった一方、ガスフリー転送(手数料無料の送金機能)はECDSA前提の署名規格「EIP-712」に依存しているため、PQウォレットは利用対象外とされています。

BIP-39ニーモニック(復元フレーズ)によるウォレット復元やLedgerなどのハードウェアウォレットにも対応しておらず、TRON Core Devsは、SDK・APIの更新やウォレット対応に加え、PQ向けの手数料設計などを今後の課題として挙げています。

ガバナンス投票が導入の最終関門

耐量子署名を正式導入するには、「TIP(TRON改善提案)」のガバナンスプロセスで管理される提案について、スーパー代表(SR・TRONのブロック生成を担う代表者)の投票で可決される必要があります。

テストネットでも対象提案が有効化されていない状態では、署名自体が正しくてもPQトランザクションは受け付けられない仕組みとなっており、現在は安定性や性能の検証が続けられています。

量子耐性の確保はブロックチェーン共通課題に

量子コンピュータへの備えはTRONに限らず、ブロックチェーン業界全体で進められており、主要プロジェクトでも耐量子暗号の導入や研究開発が本格化しています。

イーサリアム財団は2026年1月、専任のポスト量子セキュリティチームを設立し、EVM(スマートコントラクトの実行環境)でFalcon署名を検証するプリコンパイル「EIP-8052」も提案されています。

TRONもこうした業界の動きを踏まえ、業界が量子脅威の到来を2029年頃と見込むなか、約3年前倒しでの移行完了を目標に掲げています。

今後はテストネットで収集した検証データをもとにTIPの審議が進められ、スーパー代表による投票を経てメインネット導入の可否が判断される予定です。

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Source:TRON Core Devs
サムネイル:AIによる生成画像

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BITTIMES 編集長のアバター BITTIMES 編集長 仮想通貨ライター

仮想通貨ニュースメディア「BITTIMES(ビットタイムズ)」編集長。2016年にBITTIMESを創業し、暗号資産・ブロックチェーン・Web3領域の取材・執筆を10年近く継続。ビットコイン・イーサリアムをはじめとする主要銘柄の動向から、国内外の規制・税制・DeFi・NFTまで幅広くカバー。

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