この記事の要点
- 米下院歳入委、仮想通貨税制法案を38対5で可決
- 米国初の連邦法案で税務ルールを明確化へ
6,700万人に影響の仮想通貨税法案が前進
米下院歳入委員会は2026年9月16日、デジタル資産の連邦税務ルールを定めるH.R. 10357「デジタル資産税務確実性法」を、賛成38・反対5で可決しました。
同法案が成立すれば、仮想通貨(暗号資産)を含むデジタル資産の実質的な税務上の扱いを定める米国初の連邦法となります。
歳入委員会によると、米国では約4人に1人にあたる6,700万人超が何らかの仮想通貨を保有・取引しており、同法案はこうした保有者や利用者の税務上の不確実性と申告負担を軽減することを目的としています。
ジェイソン・スミス委員長(共和党・ミズーリ州)は、同法案について超党派の協議を重ねてまとめられた法案だと説明し、2兆ドル(約310兆円)規模に成長したデジタル資産経済に明確な税務ルールを設ける必要性を強調しました。
スミス委員長はさらに、伝統的な金融資産との税制上の公平性を確立し、技術革新に合わせて税制を更新することで「米国を世界の仮想通貨の中心地であり続けるようにする」と述べています。
今回の可決は下院歳入委員会での審査を通過した段階で、法案の成立には今後、下院本会議と上院での可決を経て、大統領の署名が必要となります。
課税ルールの空白解消へ
少額取引からステーキングまで包括改革
10ドル以下の手数料は損益認識なしに
H.R. 10357には、日常的なデジタル資産取引に伴う税務負担を軽減する措置が盛り込まれています。
歳入委員会によると、現行制度では少額のデジタル資産取引でも損益の報告が求められており、2025年には数億件の1099-DAフォームがIRS(内国歳入庁)に提出され、その多くを10ドル未満の取引が占めました。
同法案はこうした少額取引の負担を減らすため、ネットワーク手数料や取引手数料の支払いに使ったデジタル資産が10ドル(約1,560円)以下の場合、その取引で生じる損益を認識しない扱いを新たに設けるとしています。
規制対象となる米ドル建てステーブルコインについても売却損益を除外する規定を設け、日常的な利用に伴う税務処理を簡素化する方針です。
仮想通貨と株式の税制格差を是正へ
少額取引の負担軽減に加え、同法案はデジタル資産と株式など伝統的な金融資産の税務上の扱いを近づける措置も打ち出しています。
デジタル資産を既存の税制上のセーフハーバー2種の対象に加えるほか、ディーラーやトレーダーには証券や商品と同様に時価評価(マーク・トゥ・マーケット)会計の適用を認めます。
一定のデジタル資産レンディングについては資産移転を売却とみなさない扱いとし、活発に取引されるデジタル資産の慈善寄付には上場証券と同様の簡素化された税務ルールを適用するとしています。
仮想通貨にもウォッシュセール規制を適用
一方、同法案は伝統的金融資産と税制上の扱いを近づけるとともに、既存の租税回避防止ルールをデジタル資産にも適用します。
その対象には、資産を売却した後に同一または実質的に同一の資産を買い戻した場合の損失控除を制限する「ウォッシュセール」規制が盛り込まれました。
同法案はこの規制に加え、含み益を固定する取引を対象とする「みなし売却」など既存の租税回避防止規定もデジタル資産へ拡大するとしています。
マイニング・ステーキング報酬に新基準
税務上の扱いが曖昧だったマイニングやステーキング報酬についても、新たなルールが設けられます。
同法案は報酬の所得源泉や性格を判断する基準を定めるほか、上場投資商品(ETP)がステーキングを行う場合の税務上の取り扱いも明確化する方針です。
歳入委員会は、こうした規定によってデジタル資産の取引や報酬に関する税務上の不確実性を減らす狙いを示しています。
報告要件の見直しと自主開示制度の創設
税制の明確化は取引そのものだけでなく、ブローカーや納税者に求められる報告手続きにも及びます。
同法案はデジタル資産ブローカーの報告要件を見直し、不必要な税務書類の提出を減らすとともに、財務省に自主的な情報開示プログラムの創設を求めています。
この制度では、過去にデジタル資産に関する申告不備があった納税者に減額された罰則を適用し、税務上の不確実性や高いコンプライアンスコストの軽減につなげるとしています。
クラリティ法案、民主党賛成ゼロで否決に
仮想通貨税制法案、今後の審議の行方
H.R. 10357は下院歳入委員会を通過し、デジタル資産の税務ルール整備に向けた立法手続きが前進しました。
米国ではデジタル資産をめぐる法整備が複数分野で進められており、前日の9月15日には、市場構造を定めるCLARITY(クラリティ)法案(H.R. 3633)の審議入りに必要なクローチャー動議が上院で賛成49・反対50で否決されています。
クラリティ法案が市場構造を扱うのに対し、H.R. 10357はデジタル資産の課税ルールを定める法案で、今後は下院本会議での取り扱いが次の節目となります。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=156.04 円)
関連の注目記事はこちら
Source:歳入委員会プレスリリース
サムネイル:AIによる生成画像
ニュースを優先して表示します。



























