安倍首相:ブロックチェーンは「注目すべき技術」今後の成長に大きな可能性
安倍総理大臣は、2019年2月7日に行われた参議院予算委員会の中で参議院議員の藤巻健史議員からの「仮想通貨(暗号資産)やブロックチェーン技術」に関する質問に対して、これらのテクノロジーには『大きな可能性がある』と回答し、今後も研究を続けていくべき分野であると認識しているとの見解を語りました。
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ブロックチェーン・仮想通貨に対する「安倍総理らの見解」
参議院議員の藤巻健史議員は、2019年2月7日に開催された「参議院予算委員会」の中で、日本国内の産業が世界に遅れを取っている現状において『今後の日本経済の発展のためには、"仮想通貨"や"ブロックチェーン技術"に関する取り組みが非常に重要になってくる』という考えを語り、これらの技術に対する安倍総理らの見解を求めました。
セキュリティ確保へのブロックチェーン活用は極めて重要
経済再生担当大臣である茂木敏充氏は『今後進んでいくフィンテックの分野において、仮想通貨は別として「ブロックチェーン技術」を活かして個人情報問題などの様々なセキュリティを確保していくことは極めて重要だと考えている』と回答しました。
茂木大臣は、日本は自動車業界において世界一であり、自動走行などの分野においても高い技術力を誇っていることを説明するとともに、健康保険制度においても様々な情報があるため、ビッグデータを活用すれば個人個人に適したケアや予防といった「様々な医療サービス」や「次世代のヘルスケア」を提供することができると語り、これらの分野において日本は多くの可能性を持っていると考えていると説明しました。
この回答に対して藤巻議員は、仮想通貨とブロックチェーン技術を分断して考える人が多いものの、これらのテクノロジーは「コインの表裏」のようなものであり、特にパブリック型のブロックチェーンなどは仮想通貨がなければ発展しないため「ブロックチェーンは良くて仮想通貨は駄目」といった考えは通用しないと指摘しています。
様々な分野で「利便性・安全性」を向上できる可能性
また藤巻議員は、2019年1月14日に日経新聞で掲載された記事の中に「誰もが使いたがるような強力な応用サービスを開発できれば、ブロックチェーン技術の応用は一気に進む」と書かれていることをあげ、日本は目の前にある巨大なビジネスチャンスを税制問題でブロックしてしまっているのではないか?と指摘しました。
この質問に対して回答した安倍総理は『国際的な動向を踏まえた上で今後、仮想通貨は「暗号資産」と呼ぶことが適切であると考えているため、暗号資産と呼ばせて頂きたい』と説明した上で、ブロックチェーン技術は様々な分野で利便性・安全性を向上できる可能性を秘めていると考えていると語っています。
ー 安倍総理大臣
ブロックチェーン技術は暗号資産のような金融分野のみならず、多様なITビジネスの展開を可能とするほか、様々な分野で利便性・安全性の向上できる大きな可能性を秘めていると考えています。先般創設した規制の「サンドボックス制度(*1)」を活用し、あるベンチャー企業が日本で暗号資産の流動性を高める世界初のビジネスモデルに挑戦するなど、この分野では世界で十分に戦えるベンチャー企業が我が国に存在しているのは事実であります。
これに関しては藤巻議員が仰る通り、しっかりと注目しなければならないと私も考えております。以前に色々とブロックチェーン関連の指摘をいただきましたので、その後私も色々と勉強させていただきました。
(*1)サンドボックス制度:イノベーションを促進するために現行の規制の適用を一時的に停止して新しい技術を実験できる仕組み
成長の可能性について「引き続き研究を進める」
自分自信でもブロックチェーン技術について勉強したことを明かした安倍総理は、これらの技術の持つ可能性自体は認めているものの、様々な分野のテクノロジーが急速に成長している現代社会において、政府が安易に「これから発展していく分野はこの分野です」と語ることはできないということも説明しています。
仮想通貨・ブロックチェーン業界では、投機的な感情などから「異常な価格高騰」が起きたことが問題視されているため、安倍総理がブロックチェーン業界の成長に対して具体的な発言を行うことができないというのは当然のことであると考えられます。
安倍総理は、そのようなことも踏まえた上で今後もブロックチェーン技術の持つ「成長の可能性」について研究を続けていく必要があると考えていることを語っています。
ー 安倍総理大臣
この分野において「何が世界で勝てるのか」が重要になっていますが、まさにブロックチェーン技術自体が政府との関わりなくベンチャー企業を中心に民間のダイナミックな発想によって発展してきたように「第4次産業革命」は加速度的に進んでいます。このような現代社会において政府が「これから発展するのはこの分野だ」と決めることはできませんが、ご指摘にあったように「様々な成長の可能性」を研究していく必要があると考えております。
今後も「イノベーションと利用者保護のバランス」を重視
仮想通貨とブロックチェーン技術は「別の存在」として認識されている現代社会では「ブロックチェーン技術は活用する可能性を秘めているが、仮想通貨は必要ない」といった考え方も多く見られていますが、藤巻議員は「仮想通貨にも非常に大きな可能性が秘められている」ということも強調しています。
藤巻議員は具体的に「世界にはおよそ20億人も銀行口座を持っていない人が存在している」ということをあげて説明を行なっており、そのような人々は世界経済から孤立してしまっているものの、仮想通貨が採用されればスマートフォンを持っているだけで世界中の人々と取引を行うことができるようになり、20億人の人々が世界経済に参加するきっかけを作ることができると説明しています。
これに対して安倍総理は、暗号資産に活用されているブロックチェーン技術を含めて、フィンテックの新しい技術には大きな可能性があると考えていることを語っており、仮想通貨取引所などで投資家の人々が被害を受ける事例も発生しているため、今後も技術の発展と利用者保護のバランスをとりながら適切に対応していきたいと考えていることを語っています。
ー 安倍総理大臣
暗号資産に活用されているブロックチェーン技術を含め、フィンテックなどの新しい技術には大きな可能性があると認識しております。技術の安全性の確保などは必要ではありますが、利用者の利便性などの向上につながるよう、様々な主体が技術の活用にチャレンジしていくことが期待されます。
他方では、取り扱い業者などを巡って問題となる事例も生じておりますので、イノベーションと利用者保護のバランスを取りつつ、適切に対応していきたいと思っております。
健全な「仮想通貨・ブロックチェーン業界」構築に向けて
日本は仮想通貨の取引量が非常に多いことでも知られていますが、その一方ではハッキングなどによる仮想通貨の流出事件なども複数発生しています。このような問題は仮想通貨業界の重要な問題点の一つとして取り上げられてきましたが、最近では徐々に具体的な対策もとられ始めてきています。
日本の警察庁は、2019年度から「仮想通貨の取引履歴を可視化して追跡することができる新しいソフトウェア」を日本全国の警察に導入して、今後の犯罪捜査を効率化していく方針を発表しています。
また、日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA)とブロックチェーン推進協会(BCCC)も昨年末に提携していくことを発表しており、今後は「仮想通貨とブロックチェーン技術の普及推進と健全な業界の育成」のための取り組みを協力して行い「2020年3月末には両協会に加盟する企業数を500社以上に拡大する」とも語っています。
今回の予算委員会では、今後の具体的な取り組みに関する発言は行われていないものの、日本の仮想通貨・ブロックチェーン業界はこれからもさらなる成長を続けていくと予想されます。
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