日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)と日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は2022年8月3日に「暗号資産に関する2023年度の税制改正要望書」を取りまとめた上で、2022年7月29日付で金融庁に提出したことを発表しました。今回の要望書では例年の「20%申告分離課税」の要望に加えて「Web3.0ビジネスの環境整備を目的とした法人税の要望」や「相続時の資産税に関する要望」が追加されています。
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2023年度の暗号資産税制改正要望書を提供
日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)と日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は2022年8月3日に「暗号資産に関する2023年度の税制改正要望書」を取りまとめた上で2022年7月29日付で金融庁に提出したことを発表しました。
JCBAとJVCEAは以前から、暗号資産の税制改正に向けたアンケート調査を実施しつつ、税制改正に向けた要望書を金融庁に提出していましたが、今回の発表では「2023年度の税制改正要望書を提供したこと」と「2023年度税制改正に関する要望書を公表したこと」が報告されています。
これまでの税制改正要望では「20%申告分離課税の適用・繰越控除の導入」などが求められていましたが、今回の税制改正要望ではこれらの要望に加えて「Web3.0ビジネスの環境整備を目的とした法人税の要望」や「相続時の資産税に関する要望」が追加されたと報告されています。
2023年度税制改正要望書の要点
今回金融庁に提出された「2023年度税制改正に関する要望書」の要点については以下のようにまとめられています。
(1)分離課税
暗号資産取引にかかる利益への課税方法は、20%の申告分離課税とし、損失については翌年以降3年間、暗号資産に係る所得金額から繰越控除ができることを要望する。暗号資産デリバティブ取引についても同様とする。(2)法人税
期末時価評価課税の対象を市場における短期的な価格の変動又は市場間の価格差を利用して利益を得る目的(短期売買目的)で保有している市場暗号資産に限定し、それ以外のものを対象外とすることを要望する。少なくとも喫緊の課題への対応として、まず自社発行のトークンについて対象から除くことは必須である。(3)資産税
相続により取得した暗号資産の譲渡時の譲渡原価の計算について、取得費加算の特例の対象とすることや、相続財産評価について、上場有価証券と同様、相続日の最終価格の他、相続日の属する月の過去3ヶ月の平均時価のうち、最も低い額を時価とすることを要望する。
暗号資産に関する税制の課題
また「暗号資産に関する税制の課題」に関しては『暗号資産の時価総額・取引金額は世界的に大幅な増加を続けており、NFT取引・メタバース取引・DAO取引などバーチャル空間で暗号資産が決済手段の主流となりつつある』と述べた上で、以下のような観点から申告分離課税の導入・法人税の整備・資産税の整備が必要不可欠であると説明されています。
①税務申告促進
暗号資産の仕組みや取引の特殊性を鑑みると、利用者による適正な税務申告によって捕捉性を高めることが税の徴収において重要であると認識している。しかし、現状税制では暗号資産による利益は一律の税率でないこと、また申告の有無に関わらず前年度の損失繰越ができないことなどが、利用者による適正かつ積極的な申告の促進を妨げていると思料する。②税の公平性や制度内の整合性
2020年の金融商品取引法や資金決済法の改正により、暗号資産の法規制上の位置づけに重要な変化があった。業界団体による自主規制も行われ、利用者保護や業界全体の健全化も進んでおり、他の金融商品と同じく有用な決済手段および資産クラスとしての利用が国内外で確立されつつある。このような暗号資産の金融商品としての法規制上の位置づけや、他の金融商品の枠組みの中で暗号資産の派生商品が生じている現状を鑑み、有価証券など他の金融商品との税制度における整合性・公平性を担保する必要があると考えている。③海外との競争力確保
暗号資産を利用した資金決済分野の革新やブロックチェーン技術の応用による経済社会の高度化に備え、原則キャピタルゲイン課税とする主要国の暗号資産税制との乖離を縮小する必要がある。④トークンに係る法人期末時価評価課税の見直しによるWeb3.0ビジネスの支援
現行の期末時価評価課税は、プロジェクトに関するトークンの販売により資金調達した法人やトークンを購入することでプロジェクトを支援する法人・ファンドへ重い税負担を課すこととなり、日本国内でのブロックチェーン関連事業の起業に重大な障害となるとともに、トークンの発行者や開発者、投資家をはじめとするプロジェクト関係者の海外流出を招いている。法人による暗号資産保有目的の多様化にもかかわらず一律期末時価評価課税の対象とすることは、法人の事業遂行や日本での起業を妨げ、日本政府が掲げるWeb3.0推進の妨げとなる。⑤相続時に過大な税負担となるケースの解消
資産税においては、暗号資産は相続時の時価に基づき相続税が課税され、かつ暗号資産の譲渡時に取得費加算の特例の対象とならないことから、相続人が相続税と所得税を最高税率で負担する場合もあるなど、相続した暗号資産の時価評価額以上の過大な税負担となっている。
日本で暗号資産にかかる税金は国際的にみても非常に高いことでも知られており、『現在の日本の税制は暗号資産やWeb3(分散型ウェブ)の発展の妨げになっている』とも指摘されていましたが、今回の税制改正要望には法人税や相続税に関する内容も含まれているため、これらの要望が認められれば日本の業界発展にもつながると期待されています。