「仮想通貨の基盤は堅調」トム・リー氏が市場環境を評価
米投資調査会社Fundstrat(ファンドストラット)の共同創業者トム・リー氏は2025年12月15日、CNBCのインタビューに出演し、足元の市場環境を踏まえたうえで仮想通貨市場の長期的な強気見通しについて語りました。
リー氏は「最高の年はこれからだ」との見方を示し、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)など仮想通貨の基本的な市場環境が依然として堅調であると述べています。
こうした見方の根拠として、リー氏は、現在1万ドル(約155万円)以上を保有するビットコインウォレットは約400万件に過ぎない一方、世界には1万ドル以上の資産を持つIRA口座や証券口座が約9億件存在しており、市場拡大の潜在余地は約200倍に上ると指摘しました。
さらに、リー氏は2025年の仮想通貨(暗号資産)市場を振り返り、量子コンピューターへの懸念や10月10日の大規模なレバレッジ解消など、価格に影響を与える出来事に言及しました。
そのうえで、米政府による好意的な規制整備やウォール街での関心の高まりを背景に、仮想通貨の基本的なストーリーは年末に向けて非常に良好な状態で締めくくられていると述べています。
ビットコイン「2026年に金を上回る」
トム・リー氏が語る仮想通貨市場の構造変化と成長局面
AIとビットコインに広がる期待値調整の議論
リー氏はインタビューの中で、仮想通貨市場を他の成長分野と比較する文脈に触れつつ、2023年以降に大きく上昇した生成AI銘柄やビットコインの現状について「どれだけ期待値を織り込んでいるか」が投資家の悩みになっていると指摘しました。
同氏は、AI(人工知能)分野も仮想通貨分野も成長率がピークに達した可能性があり、今後は成長ペースが緩やかになる中で質の高い成長へと移行していく局面だとの見解を示しています。
また、現在のAI業界については「能力が先行し応用が追いついていない段階」にあるとし、インターネットやモバイルの黎明期と同様に、今後は応用サービスの普及を通じて爆発的な成長が期待できると述べました。
この点について、リー氏は「こうした成長過程が仮想通貨市場にも重なる部分がある」との認識を示しています。
ビットコインは依然として普及初期段階
こうした認識を踏まえ、ビットコインについてリー氏は「まだ普及の初期段階にある」と強調しています。
実際、1万ドル以上を保有するビットコインウォレット数は依然ごくわずかであり、潜在的な投資家母数の大きさから今後の市場拡大余地は極めて大きいと分析しています。
また、リー氏は普及の進展を左右する要因として、2025年の仮想通貨市場では量子技術への懸念や10月の急落(レバレッジ解消)といった一時的な不安材料があったものの、
イーサリアムを軸に進む金融インフラ投資
こうした市場環境を背景に、具体的な企業の動きとして、リー氏が率いるファンドストラット傘下のイーサリアム関連トレジャリー企業BitMine(ビットマイン)社は直近1週間で102,259 ETH(3億ドル/465億円相当)を追加取得しており、同社のETH保有額は120億ドル(約1.8兆円)超に達しました。
同氏はビットマイン社について「ウォール街とDeFi(分散型金融)を繋ぐ架け橋になりつつある」とし、金融インフラへの投資を進めていることも明らかにしています。
ウォール街で高まる関心を示す例として、米大手銀JPモルガンがイーサリアムのブロックチェーン上でトークン化したマネー・マーケット・ファンドを立ち上げたことが挙げられます。
リー氏はJPモルガンの動きを「イーサリアムにとって強気材料だ」と評価しており、同行がパブリックブロックチェーン上で大規模な金融商品を展開した意義に注目が集まっています。
MSCIの指数見直しが市場に与える影響
さらに、企業による仮想通貨保有が広がる中での評価軸として、インデックスプロバイダー大手MSCIが仮想通貨を大量保有する企業を株価指数から除外する可能性を検討している点についても言及しました。
この点についてリー氏は、実際に大きな影響を受けるのは米ストラテジー(旧マイクロストラテジー)社程度に限られ、大半の企業は指数に占める比率も小さいことから、市場全体への影響は限定的との見解を示しています。
同氏は仮想通貨を積極的に財務に組み込む企業群について、将来的には金融インフラの一翼を担う存在へと成長していくとの期待も述べています。
「2026年に再び史上最高値へ」
価格調整下でも維持される仮想通貨の中長期基調
記事執筆時点ではビットコイン価格が8万6,000ドルまで下落しているものの、こうした短期的な価格調整とは対照的に、仮想通貨市場には中長期的な強気材料が相次いでいます。
こうした中長期的な強気材料の一例として、米企業による仮想通貨の大量取得が挙げられます。米NASDAQ上場のストラテジー社は12月14日、ビットコインを10,645 BTC(10億ドル/1,550億円相当)追加取得しました。
同社による週次で1万BTC超の大量購入は2週連続で行われており、今回の取得額は今年7月以来最大規模となるなど、企業による積極的な姿勢が改めて示されました。
こうした企業による積極的な資産組み入れについて、市場関係者の間では、価格下落局面における下支え要因の一つになっているとの指摘もあります。
さらに、企業による資産組み入れに加え、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策や、いわゆる「ホワイトハウス・プット(政権による市場下支え)」といったマクロ要因も、市場の追い風になるとみられています。
こうした環境を踏まえ、リー氏は2026年前半に一時的な調整が入る可能性を指摘しつつも、後半には大幅な反発が訪れると予測しており、短期的な変動を超えた市場の基調は依然として強気に保たれているとの見方を示しています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=154.75 円)
価格予想関連の注目記事はこちら
Source:CNBCインタビュー動画
サムネイル:AIによる生成画像






















