アルゼンチン、若年層中心に仮想通貨普及が加速
ラテンアメリカの調査機関Rankings Latamが公開した最新レポートによると、アルゼンチンの仮想通貨保有率(人口に占める割合)が19.8%に達し、同地域で首位となったことが明らかになりました。
これは2位のブラジル(18.6%)やビットコインを法定通貨とするエルサルバドル(14.6%)を上回る水準となっています。
アルゼンチンでは、2023年の年間インフレ率が211.4%に達し、世界でも極めて高い水準となりました。こうした経済危機の中で自国通貨ペソへの信頼が低下し、仮想通貨が資産保全策として注目されています。
また、今回の調査によれば、ラテンアメリカ全体の平均保有率は14.3%で、なかでもミレニアル世代(18~35歳)は21.9%と高く、若年層が仮想通貨(暗号資産)普及を牽引していることが明らかになりました。
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経済混乱が後押しするラテンアメリカの仮想通貨需要
Rankings Latamの調査レポート「Who Owns Crypto in Latin America?」では、ラテンアメリカ地域における仮想通貨普及の詳細な内訳が報告されています。
上位6か国で87%を占める利用者分布
仮想通貨ユーザーは特定の国に集中しており、アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、メキシコ、ペルーの6か国でラテンアメリカ全体のユーザーの87%を占めています。
国別ではアルゼンチンが19.8%で首位となったほか、2位ブラジル(18.6%)、3位エルサルバドル(14.6%)と続きます。
エルサルバドルは2021年にビットコインを法定通貨化して話題を集めましたが、今回示された同国の保有率は15%弱にとどまっています。
ミレニアル世代が仮想通貨市場の需要を押し上げ
同レポートでは、ラテンアメリカにおける仮想通貨保有層の年齢分布も示しています。18~35歳のミレニアル世代は21.9%で最も高く、36~49歳(14.1%)や50~65歳(11.2%)を大きく上回りました。
一方、66~80歳のシニア層は3.5%で、全体平均の14.3%を大きく下回ります。若年層の需要が市場を牽引している傾向が示されています。
Rankings Latamは「ミレニアル世代が日常取引や貯蓄・投資に仮想通貨を活用し、市場の需要を牽引している」と分析しており、仮想通貨が若い世代に代替的な金融手段として広がったとしています。
爆発的成長を遂げたボリビア市場
ラテンアメリカ地域の2025年第2四半期における国別仮想通貨ユーザー増加率では、地域全体で前期比18.3%増加しています。
上位6か国がユーザーの87%を占める一方で、アルゼンチンのユーザー増加率は約9%でした。
一方、経済混乱下のボリビアは+355%の成長を記録し、グアテマラ(+88%)やパラグアイ(+52%)など、金融アクセスが限定的だった国々でも急速な普及がみられています。
経済不安が生む仮想通貨需要の高まり
背景として、高インフレや通貨下落に直面した人々が仮想通貨を代替手段として使い始めたことが挙げられています。アルゼンチンでは長期的な高インフレと厳しい為替管理の影響で「ペソ離れ」が進んでいます。
現地では米ドルへの交換制限やペソ急落を踏まえ、テザー(USDT)などドル連動型のステーブルコインを購入する動きが広がっています。自国通貨の価値下落に備える手段として、仮想通貨をインフレヘッジに用いる傾向が強まっています。
メキシコの富豪リカルド・サリナス氏も「ビットコインで自分の資産をインフレから守るべき」と述べており、法定通貨の購買力低下への対抗手段としてビットコインを挙げています。
こうした経済不安の広がりが、ラテンアメリカ各国の仮想通貨需要を押し上げる大きな要因になっていると分析されています。
ステーブルコイン決済カードを発表
経済環境が後押しするラテンアメリカの仮想通貨普及
ラテンアメリカ圏では、仮想通貨普及の拡大に関連する動きが各国で続いています。
ボリビアで仮想通貨取引額が前年比5倍超に
ボリビア中央銀行は2025年6月、同国内の仮想通貨取引が急増していることを公式に認めました。
同行が公表した最新データによると、2025年上期(1~6月)の仮想通貨関連取引額は約2億9,400万ドル(約435億円)で、前年同期比530%超の増加を記録しました。5月単月も6,800万ドルに達し、過去最高を更新しています。
ボリビアでは外貨(米ドル)準備高の逼迫と高インフレを背景に、資産保全や日常決済の手段として仮想通貨やステーブルコインを利用するケースが急増しています。
同国では過去に厳格な規制が敷かれていましたが、2022年6月の規制緩和以降、市場拡大が進んでいます。
ブラジルが国家ビットコイン準備創設を審議へ
ブラジル下院では、8月20日に「ビットコイン国庫(国家戦略ビットコイン準備)」創設を検討する初の公聴会が予定されています。
これは2024年11月に提出された法案(第4501号)にもとづく審議で、国庫資金の最大5%(150億ドル/約2.2兆円相当)をビットコイン購入に充てる構想です。
法案には「外貨準備の価値変動や地政学的リスクに対するヘッジ手段として機能させる」との狙いが記されており、採択されれば、ブラジルは世界でも例のない形でビットコインを準備資産として保有する可能性があるとみられています。
一方で、ブラジル中央銀行の金融政策担当局長は「外貨準備に仮想通貨を含めるのは適切ではない」との見解を示しており、実現には慎重な議論が必要とされています。
ラテンアメリカで始動したVisaの仮想通貨決済カード
民間主導の取り組みも進展しています。Visa(ビザ)は2025年4月、米フィンテックのBridge社と提携し、ラテンアメリカ向けにステーブルコイン決済対応のVisaカードを発表しました。
このサービスにより、アルゼンチンやコロンビア、メキシコなど6か国のユーザーはUSDコイン(USDC)などドル連動型ステーブルコインをチャージしたVisaカードで日常の買い物が可能となります。
この取り組みは、物価高に直面する新興国市場でステーブルコインニーズを取り込む狙いがあり、2024年時点で仮想通貨購入全体の39%をUSDTやUSDCなどが占めています。
Visaの新たなサービスはこうした需要に応えるもので、まずラテンアメリカ6か国で開始し、その後数カ月以内に欧州・アフリカ・アジアへも展開する計画です。
このように、ラテンアメリカでは経済環境を背景に仮想通貨の受容が速いペースで拡大しており、各国政府や企業の対応も加速しています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=147.82 円)
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Source:Rankings Latamレポート
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