スウェーデン、国家BTC準備金創設法案が議会で審議へ
スウェーデン民主党所属の国会議員デニス・ディウカレフ氏とデイビッド・ペレス氏は2025年10月1日、国家戦略としてビットコイン(BTC)を備蓄する「国家ビットコイン準備金」の創設の検討を政府に求める法案を提出しました。
同法案では、進行するインフレや地政学リスクに備えるため、ビットコインを国家準備資産に組み入れることを提案しています。
ディウカレフ氏らは、自国通貨や金で構成される既存の外貨準備は政治・経済情勢に左右されやすいと指摘した上で「特定の国家の政策に依存しないビットコインを保有することがリスク分散につながる」と強調しました。
また、押収されたビットコインを活用して準備金を構築すれば、新たな税負担なしで備蓄が可能だと述べています。
加えて、ビットコインを国家準備資産として活用する方針を示す一環として、スウェーデンの法定通貨の地位を維持するため、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入は行わない方針を明確にすべきだとも訴えています。
提出された法案は10月15日に財務委員会で審議される予定です。
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インフレ対策として浮上するスウェーデンの国家BTC準備金構想
欧州で高まる国家ビットコイン備蓄の議論
提案の背景には、各国でビットコインを国家戦略の一部として取り入れる動きが広がっていることがあります。
英国では押収されたビットコインについて、売却せず保有して、その利益を国庫に残す可能性が議論されており、チェコやポーランド、ラトビアなどでは国家戦略としてのビットコイン備蓄について積極的に検討されています。
提案者らは「スウェーデンもこのデジタル資産競争に参加し、ビットコインの可能性を認めた国家の仲間入りを果たすべきだ」と述べ、世界的な潮流に乗り遅れないよう警鐘を鳴らしました。
ノルディン議員が訴えたBTC戦略と背景
4月には中道会派に属するリカード・ノルディン議員も、ビットコイン準備金の創設を財務相に提案しました。
ビットコインがインフレから資産を守り、長期的な価値保存に寄与し得る点や、厳しい政治体制下でも自由な経済活動を支える決済手段となっている点をノルディン氏は指摘しています。
同氏は、税金を使わずに戦略備蓄を構築する方法として「税関当局や警察が押収したビットコインを売却せず保持する案」を提示しており、今回のディウカレフ氏らによる法案提出はこの提言を受けた動きとみられています。
スウェーデン政府・中銀はこれまで保守的な外貨準備運用を維持してきましたが、ビットコインなどデジタル資産が存在感を増す中で金融戦略の見直しを求める声が国会内で高まっているとの見方が広がっています。
スウェーデン金融戦略におけるBTCの位置づけ
ディウカレフ氏らが所属するスウェーデン民主党(右派系)は、2022年選挙で第二党となり現政権を支援していることから、このビットコイン準備金構想も一定の政治的影響力を持つ可能性があります。
法案では、ビットコインを「デジタルゴールド」に例え、金や法定通貨準備の弱点を補完する資産として位置付けています。さらに、発行上限2,100万枚という希少性や高い耐改ざん性などの特徴から「価値の保存手段」としての潜在力があると説明しました。
ディウカレフ氏は「ビットコイン準備金の構築によってスウェーデンはグローバル金融インフラの変革に備えられる」と述べています。
同国がビットコインを重要資産として受け入れるかどうかは欧州全体にも影響を与える可能性があり、国際的な注目が集まっています。
フィリピン「国家BTC準備金創設」提案
新時代を迎える国家単位のBTC備蓄競争
アメリカ以外でも、国家レベルでビットコインを準備資産に加えようとする動きは広がっています。
ヨーロッパでは、チェコ国立銀行のアレシュ・ミフル総裁が2025年1月、外貨準備の5%をビットコインに振り向ける提案を行いました。同国の外貨準備総額約1,400億ユーロ(約24.2兆円)の5%、最大70億ユーロ(約1.2兆円)がBTCに充当される可能性があると試算されています。
また、英国警視庁は押収した6万BTC超を保持していると報じられており、国家や当局が戦略資産としてビットコインを扱う動きが欧州全体で広がりつつあります。
こうした中、投資家アンソニー・ポンプリアーノ氏は「これは新たな時代の幕開けだ」と評価しており、各国のビットコイン戦略が今後の国際経済に与える影響は一層大きくなるとみられています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ユーロ=173.09 円)
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Source:スウェーデン国会サイト
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