イーサリアム財団、プライバシー強化の新組織を設立
イーサリアム(ETH)財団は2025年10月8日、オンチェーンのプライバシー技術を強化する新チーム「プライバシークラスター」を設立したと発表しました。
発表によれば、このクラスターには業界トップ級の研究者・技術者・暗号学者ら計47名が参加し、Blockscout(ブロックスカウト)創業者のIgor Barinov(イゴール・バリノフ)氏が統括する体制となっています。
財団はこの取り組みについて「プライバシーはイーサリアムエコシステムにおいて最も重要な特性の一つに値する」と述べ、オンチェーンで機密性の高い取引やデータ公開を可能にすることで、数十億ドル規模の資産を扱う基盤の信頼性を維持すると強調しています。
このクラスターチームは、既存のプライバシー関連プロジェクトを統合し、コミュニティと連携しながらエコシステム全体のプライバシー機能をさらに充実させる計画です。
ブテリン氏が示すAI時代のプライバシー問題
オンチェーンプライバシー強化に向けた新プロジェクトを始動
イーサリアム財団は2018年以降、「Privacy and Scaling Explorations(PSE)」チームを中心にオープンソースのプライバシー研究開発を続け、Semaphore(セマフォ)やMACIなど、匿名信号や秘密投票を実現する技術を発表してきました。
今回のプライバシークラスターでは、従来のPSEの取り組みを継続しつつ、新たなプライバシー関連プロジェクトも推進するとしています。具体的には、以下のような活動を行う予定です。
- プライベート読み取りと書き込み(PSE):
支払い、投票、スマートコントラクト操作などのアクションをプライベートに行えるようにし、ユーザーが監視されずにオンチェーンで認証や照会を行うことを可能にする仕組みを開発 - プライベート証明(PSE):
必要最低限の情報で資格や資産保有を証明できるzero-knowledge proof(ゼロ知識証明)の効率的な設計を進め、証明のポータブル化・効率化を図る - プライベート アイデンティティ(PSE):
Selective Disclosure(セレクティブ・ディスクロージャー)やzkIDといったプロジェクトにより、オンラインで個人情報の秘匿性を保ちながら必要な情報だけを開示する仕組みを研究 - プライバシー エクスペリエンス(PSE):
プライバシープロトコルのユーザー体験を向上させ、プライバシー機能が一般利用者も自然に使えるように設計する取り組みを進める - 機関プライバシータスクフォース(IPTF):
官民の要件をプライバシー仕様に翻訳し、実際のビジネス用途向けにプライバシー機能を適用するマルチディシプリナリーな作業部会を設置 - Kohaku:
強力な暗号機能を誰もが扱えるようにするプライバシー保護型ウォレット兼オープンソースSDKを開発
これらのプロジェクトを通じて、イーサリアム財団は暗号技術、プロトコル層、アプリケーション層、そして機関利用に至るまで、幅広くプライバシーの研究開発を進める方針です。
同財団は「プライバシーは日常における当たり前のものであり、すべての人にとって必要な自由である」と強調しており、これらの取り組みによってユーザーの監視リスクを低減し、新たなユースケースの創出を目指すとしています。
新たなリーダーシップ体制を発表
プライバシー保護が鍵となるイーサリアムの次世代戦略
今回のプライバシークラスターの発表は、エコシステム全体でのプライバシーへの関心が高まっていることを示しています。
その一例として、EUの「チャットコントロール法案(通信監視強化)」をめぐっては、Ethereum共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏が「社会を安全にするために人々を不安にしてはいけない。私たちはプライバシーとセキュリティの両方を享受する権利がある」と批判しました。
このようなプライバシー保護の重要性の高まりを受け、現在イーサリアム上では、不正な資金をブロックしつつ一般ユーザーの匿名性を保護する新技術「Privacy Pools」が試験運用されています。
これらの動きは、規制強化やデータ監視への懸念が高まる中で、オンチェーンにおけるプライバシー保護の重要性がますます重要になっていることを示しています。
イーサリアム財団は今後も、基盤技術としてのイーサリアムが引き続き信頼されるようプライバシー強化に注力する方針です。
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Source:イーサリアム財団公式ブログ
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