米民主党議員の「DeFi制限リスト提案」に批判殺到|専門家がイノベーション阻害を指摘

米民主党議員の「DeFi制限リスト提案」に批判殺到|専門家がイノベーション阻害を指摘(U.S. Democratic lawmaker’s DeFi restriction list proposal faces backlash as experts warn of innovation stifling)

この記事の要点

  • 米民主党がDeFiを対象とした「制限リスト」提案を提示
  • 財務省に高リスクDeFiを指定できる権限を与える条項を含む
  • 共和党は協議を一時中止、超党派協議が停止状態に
  • 専門家は「事実上のDeFi禁止」で業界流出の恐れと警鐘
  • 業界団体も反発、イノベーション阻害の懸念が広がる
目次

米民主党のDeFi制限リスト提案に波紋広がる

2025年10月9日、米上院の民主党議員らが、仮想通貨(暗号資産)市場の規制枠組みに関する初期の条文案を共和党側に提示したことが明らかになりました。

政治ニュースメディア「パンチボウルニュース」によると、この提案には、リスクが高いと判断された分散型金融(DeFi)プロトコルを財務省が「制限リスト」に指定する権限を与える条項が含まれています。

これを受け、共和党スタッフは仮想通貨に関する協議を一時中止すると表明しています。

この民主党の提案に対し、仮想通貨専門の弁護士ジェイク・チャービンスキー氏は「仮想通貨を規制するのではなく禁止する内容で、あまりにひどいものだ」と痛烈に批判しました。

ある民主党議員グループが「DeFiプラットフォームのための規制枠組み」と称する文書を作成しました。

しかし、内容はひどいものです。仮想通貨を規制するどころか、事実上禁止しているようなもので、仮想通貨支持を自称する議員によるものとは思えません。

文章の雰囲気は、まるでゲーリー・ゲンスラー(元SEC委員長)が書いたかのようです。

さらに同氏は「DeFiの事実上の禁止につながり、米国の仮想通貨業界が海外に流出する恐れがある」と警鐘を鳴らしています。

「DeFi制限リスト」提案が物議、米議会で規制路線めぐり分裂

民主党のDeFi規制条項提示で協議難航

パンチボウルニュースによると、上院民主党側は9日(日本時間)に、DeFiに関する初期条文を共和党側に提示しました。

これに対し、上院銀行委員会委員長のティム・スコット議員(共和党)のスタッフディレクター、キャサリン・フュークス氏は「マークアップ(法案審議入り)の日程が合意されるまで協議を中断する」と電子メールで回答したと伝えられています。

その後、仮想通貨に関する超党派協議は当面停止状態となったと報じられています。

問題視されている民主党提案の内容は、非カストディアル(自己管理型)ウォレットを含む仮想通貨アプリのフロントエンド運営者に対するKYC(本人確認)の義務付けや、仮想通貨開発者に対する法的保護の撤廃など多岐にわたります。

特に注目を集めているのが、米財務省が「高リスク」と見なしたDeFiプロトコルを「制限リスト」に登録できる権限を付与する条項です。

この「制限リスト」に指定されたプロトコルを用いて継続的な収益を得る米国居住者は、処罰の対象となる可能性があるとも指摘されています。

専門家が警告「DeFi禁止で米国が遅れを取る」

チャービンスキー氏は、この提案が超党派で進められてきた市場構造整備の枠組みを損なう可能性があると懸念を示しています。

実際、米下院では7月、仮想通貨の規制枠組みを定める超党派法案「CLARITY法案」が賛成294票・反対134票で可決されており、仮想通貨規制について一定の合意形成が進みつつありました。

こうした経緯を踏まえ、チャービンスキー氏は「今回の民主党側の提案はこれまでの動きを根底から覆す、前例のない違憲の『政府による業界の実質的な取り込み』に等しい」と述べました。

また、同氏は「これは反仮想通貨(アンチ・クリプト)であるだけでなく、イノベーションにも反し、テック産業全体に危険な前例をつくる恐れがある」と強い懸念を示しています。

DeFi制限案「分散化を罰する政策」と批判相次ぐ

業界団体からも今回の「DeFi制限リスト提案」への反発が相次いでいます。

米国デジタル商工会議所の政策担当バイスプレジデントであるズネラ・マズハル氏は、この提案を「過度に強権的で効果的ではない」と批判しました。

同氏は「本来対処すべきリスクに取り組むどころか、革新的な技術を海外流出させる恐れがある」と警告しています。

さらに、同氏は「健全な政策は分散化を罰するのではなく、利用者保護とイノベーションの維持を両立させつつ、不正資金が実際に行われている”真のボトルネック”に焦点を当てるべきだ」と述べています。

ブロックチェーン協会CEO「DeFi禁止に等しい」

米ブロックチェーン協会のCEOに就任したサマー・マーシンガー氏(元CFTC委員)もこの提案に強く反対しており、同氏は声明で「この文案のままでは遵守が不可能で、責任ある開発者は海外に追い出されてしまう」と指摘しました。

また、同氏は「今回の提案は事実上、米国内の分散型金融やウォレット開発、その他のアプリケーションを禁止するものだ」と批判しています。

さらに同氏は、規制案の文言があまりに厳格で、米国の業界参加者が法令遵守できない状況に陥り、結果的に米国内でのDeFi関連ビジネスの継続が不可能になると警鐘を鳴らしました。

米国の仮想通貨規制政策、民主・共和間で再び分裂

CLARITY法案可決とDeFi規制案の対立構図

米下院は同年7月、仮想通貨市場の透明性を確保するためのCLARITY法案を可決しており(賛成294票・反対134票)、この法案は民主・共和両党から広く支持を集めていました。

一方、今回浮上した民主党のDeFi規制案は、9月に公開された上院版の市場構造法案(責任ある金融イノベーション法案:RFIA)の草案とも対立しており、超党派での合意形成に逆風となっています。

規制過多によるイノベーション後退の懸念

RFIA法案に対し、米大手労働組合「AFL-CIO」が反対の姿勢を示すなど、規制強化に慎重な意見も根強く存在しています。

議会内の溝が深まり、法案成立が先送りになる可能性があることを受け、専門家らは米国の過剰規制が革新的な産業を海外に追いやるリスクに警鐘を鳴らしています。

今後は、民主・共和両党の歩み寄りによって、利用者保護と技術革新の両立を図る持続可能な規制枠組みを構築できるかが、米国の仮想通貨・DeFi産業の競争力を左右する焦点になるとみられています。

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Source:パンチボウルニュース報道
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

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BITTIMES 編集長のアバター BITTIMES 編集長 仮想通貨ライター

2016年から仮想通貨に関するニュース記事の執筆を開始し、現在に至るまで様々なWeb3関連の記事を執筆。
これまでにビットコイン、イーサリアム、DeFi、NFTなど、数百本以上の記事を執筆し、国内外の仮想通貨ニュースの動向を追い続けている。

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