この記事の要点
- 国際決済銀行(BIS)とIIFが7中央銀行参加の実証報告を公表
- トークン化決済の実証成功を受け実資金テストへ移行
7中銀がトークン化決済を実証、実資金テストへ
国際決済銀行(BIS)と国際金融協会(IIF)は2026年5月27日、複数の中央銀行と民間金融機関40社以上が参加する国際決済プロジェクト「プロジェクト・アゴラ」の調査報告書を公表しました。
報告書では、トークン化した中央銀行準備金と商業銀行預金を同一基盤上で扱うことで、複数通貨・複数管轄にまたがる国際ホールセール決済を安全に完結できることが確認されたとしています。
従来の国際決済では、送金指示と資金移動が複数の金融機関や決済システムを経由する構造となっており、処理完了までに時間差が生じることで資金滞留や決済失敗リスクが課題となってきました。
今回の検証では、こうした課題に対し、ブロックチェーン基盤上で複数の決済処理を同時に成立させる仕組みが機能することを確認しており、BISとIIFは次段階として実資金を用いた実証実験へ移行する方針も示しています。
参加中央銀行には、イングランド銀行、ニューヨーク連邦準備銀行、フランス銀行(ユーロシステム代表)、日本銀行、韓国銀行、メキシコ銀行、スイス国立銀行の7行が名を連ねており、今回新たにカナダ銀行の参加も公表されました。
中銀マネーのBC決済を実証開始
「全成立か全不成立か」を実現した決済基盤
コルレス銀行網が抱える決済の構造課題
現行の国際ホールセール決済は、海外送金を複数の銀行が中継して引き継ぐコルレス銀行網(銀行同士が提携して送金をリレーする仕組み)を前提としており、同一の取引であっても各国の決済システムが順番に処理を行う構造になっています。
このため、送金指示と資金の最終確定の間に時間差が生じやすく、一方の処理が途中で停止した場合には資金だけが一時的に滞留する「決済リスク」が長年の課題となってきました。
BISはこうした問題に対し、ブロックチェーン上でトークン化した中央銀行準備金と商業銀行預金を同一プラットフォーム上で扱う方式を検証してきたとしています。
検証の中心となったのは、複数の取引を「すべて成立」または「すべて不成立」として同時処理する原子的決済(アトミックセトルメント)が、国際決済環境でも成立するかどうかという点でした。
秘匿性と規制対応を両立した決済基盤
公表された報告書によると、プロトタイプでは複数通貨・複数管轄にまたがるホールセール取引チェーンを、アトミックセトルメントとして安全に完結できることが確認されました。
設計面では階層型アーキテクチャが採用されており、各中央銀行は自国通貨の発行・管理に対する自律性を維持しながら、相互運用可能な共有プラットフォームへ参加できる構成となっています。
残高や取引データの秘匿性を維持しながら規制当局への報告要件にも対応できる仕組みも組み込まれており、法的分析では7つの参加管轄すべてで決済確定性(セトルメント・ファイナリティ)の実現可能性が示されました。
残る制度課題と拡張性ある基盤設計
その一方で、各国の法制度に適合した技術・運用・契約要件の詳細については追加検討が必要とされており、制度面の調整作業は今後も継続される見通しです。
こうした基盤設計には拡張性も組み込まれており、モジュール型構成を採用したことで、条件付き決済や24時間対応決済などの追加機能にも対応できるとしています。
将来的には、マネーロンダリング対策(AML)やテロ資金供与対策(CFT)、制裁対応、不正検知機能などを統合した運用も視野に入れながら、実運用を見据えた検証が進められています。
ただし今回の検証はプロトタイプ段階にとどまっており、実際の資金を用いた取引テストは次フェーズ以降に実施される予定です。
法的性質は不変、現行制度の上で実運用へ
報告書では、プロジェクト・アゴラが想定するトークン化について、中央銀行準備金や商業銀行預金の法的性質そのものを変更するものではない点も強調されています。
既存の法制度との整合性を維持したまま決済基盤へ組み込む設計が前提となっており、現在の金融システムを土台に実運用へ近づける方向で検証が進められています。
こうした前提のもと、参加中央銀行と民間金融機関はプロトタイプの追加検証に強い関心を示しており、次フェーズでは民間セクターの役割拡大も見込まれています。
具体的には、特定通貨と参加機関を対象に実資金を用いた取引テストへ移行する方針が示されており、カナダ銀行の新規参加に加えて民間金融機関の追加参加も検討されています。
実資金フェーズへ移行すれば、国際決済における資金滞留コストや決済リスクを実務レベルで検証する段階へ入り、商用化を前提とした制度整備も進められる見通しです。
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国際決済の相互運用、各国CBDCの共通課題
中央銀行デジタル通貨(CBDC)をめぐっては各国で設計や実証が進められるなか、国境を越えた相互運用性の確保が共通課題として浮上しています。
日本でも日本銀行がプロジェクト・アゴラへ参画しており、トークン化した中銀マネーを活用した決済モデルの実用性を検証しています。
今回のプロジェクト・アゴラは、既存の法的枠組みを維持したままトークン化技術によって国際決済の効率化を図る構成を示しており、各国のCBDC制度設計やクロスボーダー決済戦略にも影響を与える可能性があります。
一方で、各管轄における法制度への適合や技術・運用要件の整備は継続課題となっており、実資金テストを通じた追加検証が進められる段階へ入っています。
報告書の詳細はBISの公表ページで公開されており、次フェーズでは実資金を用いた取引テストの実施が予定されています。
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Source:BIS報告資料
サムネイル:AIによる生成画像




























