未承認ペプチド市場に仮想通貨「160億円超」流入、美容ブームの裏で闇市場拡大

未承認ペプチド市場に仮想通貨「160億円超」流入、美容ブームの裏で闇市場拡大

この記事の要点

  • Chainalysis発表、未承認ペプチド市場への仮想通貨流入が年1億ドル超に拡大
  • フェンタニル系中国業者が参入、TikTok経由で未成年流入や無菌性リスクも確認
目次

未承認ペプチド市場、仮想通貨が主要決済に

米ブロックチェーン分析企業Chainalysis(チェイナリシス)は2026年6月4日、未承認の「ペプチド」製品を売買する闇市場に流れ込む仮想通貨が、年間換算で1億ドル(約160億円)を超える規模に達したとする分析を公表しました。

同社によると、減量や美容目的で利用される未承認のペプチド製品を扱う市場では、銀行やクレジットカード会社による決済が難しいことから、ビットコイン(BTC)ステーブルコインが主要な決済手段として利用されています。

市場では、減量薬「オゼンピック」や「ウィゴビー」に関連するペプチド製品への需要拡大がみられる一方、医師の診断や規制当局の承認を経ていない製品も含まれているとされています。

こうした製品を扱う業者への仮想通貨の流入額は、2025年第4四半期の約1,200万ドル(約19億円)から2026年第1四半期には約3,200万ドル(約51億円)へと159%増加しており、第2四半期についても約3,900万ドル(約62億円)に達する見通しだとチェイナリシスは報告しています。

流入額は6四半期連続で増加しており、オンチェーン上で確認された資金流入は年間換算で1億ドルを超える水準に達しています。

「仮想通貨・美容ブーム・中国」が結ぶ闇ルート

銀行が使えない市場で仮想通貨が定着

チェイナリシスは、銀行やカード会社が扱えない取引を支える決済手段として仮想通貨(暗号資産)が定着したことが、未承認ペプチド市場の拡大を後押しした要因の一つになったとしています。

多くの国では未承認薬や処方箋が必要な成分の販売を銀行やクレジットカード会社が禁じているため、これらを扱う業者は決済口座の凍結リスクを抱えながら事業を続けてきました。

そうした状況のなかで業者が利用を拡大したのが、国境を越えた送金が容易で取引を停止されにくい仮想通貨であり、同社は市場拡大を支える決済手段として利用が定着していると説明しています。

同社の分析によると、取引規模の大きい業者ほどビットコインとステーブルコインへの依存度が高く、1回あたり1,000ドル以上を扱う卸売業者では決済額の大半をステーブルコインが占めているとされています。

TikTok拡散が未成年ユーザーの流入を招く

チェイナリシスは、市場拡大の背景としてSNSを通じて広がった美容ブームを挙げており、その変化を三つの段階に分けて分析しています。

2025年以前のグレー市場は一部のバイオハッカーによる利用が中心で、月間流入額も平均約20万ドル(約3,200万円)にとどまる限定的な規模だったといいます。

その後、米国で健康志向を掲げる「MAHA(米国を再び健康に)」運動が広がった時期に市場拡大の兆候が確認されたものの、オンチェーンデータだけでは両者の直接的な関連性までは立証できないと同社は説明しています。

転機となったのは2025年後半で、外見の改善を追求するSNS発の流行「ルックスマックス」と未承認ペプチド市場が結び付いた結果、月間流入額は約990万ドル(約16億円)まで急増しました。

この拡大を後押ししたのがTikTok(ティックトック)などで影響力を持つ投稿者による宣伝活動で、中国拠点の業者が広く紹介された結果、未承認薬や暗号資産に不慣れな若年層の流入が進んでいると同社は指摘しています。

チェイナリシスによると、一部のフォーラムやチャットでは未成年とみられる利用者が取引所の本人確認(KYC)を回避する方法を尋ねる投稿も確認されています。

注射リスクを見落とす急成長市場の死角

利用者が急増する一方で、購入した製品を第三者機関へ持ち込み品質検査を受ける動きは市場拡大とは逆に減少しているとして、チェイナリシスは安全面への懸念を示しています。

その代表例として挙げられているのがチェコの検査機関Janoshik(ヤノシック)で、地下ペプチド市場における品質検査の事実上の基準として利用されており、2023年以降に1,200万ドル(約19億円)を超える仮想通貨を受け取ってきたとされています。

初期の利用者は中国から届いた製品を再検査に出すケースが多かった一方、市場拡大が進んだ2025年後半には利用者1人あたりの検査費用が約88%減少し、8ドル(約1,300円)まで落ち込んだと報告されています。

同社は、純度試験だけでは無菌性を保証できないと指摘しており、無菌でない成分を血流へ直接注射した場合、重大な健康被害につながる恐れがあるとされています。

実際に、中国系業者が供給した次世代減量薬「Retatrutide(レタトルチド)」30mgのロットでは、純度証明書が添付されていたにもかかわらず無菌性検査に不合格となった事例も確認されています。

中国カルテルが消費者直販ルートを構築

チェイナリシスによると、こうした製品の供給元の一部は国際的な取り締まりの対象となってきた中国の化学メーカーであり、フェンタニル原料の供給からペプチド販売へ事業を移行している実態も確認されています。

同社が特定した上海の業者Sigma Audley(シグマ・オードリー)は、かつてフェンタニル原料を扱っていた企業で、1年間に100万ドル(約1.6億円)超のビットコインと359万ドル(約5.7億円)のステーブルコインを受け取っていたとされています。

この業者はカルテル関連の資金洗浄にも関与していたとされるなか、米中両国による取り締まりが強化された結果、2025年9月に活動を停止したと同社は分析しています。

同様の事例はほかにも確認されており、中国企業Bigreat(ビッグレート)は覚醒剤やフェンタニル原料をロシア向けに販売する一方で、「Zhengzhou DEPU」の名称を使ってペプチド市場へ参入していたといいます。

こうした企業はカルテル向け原料供給から消費者向け完成品販売へ事業の軸足を移すことで、中間業者を介さず利益率を高めながら新たな販路を構築していると同社は分析しています。

1オンチェーン分析が闇市場の変化を可視化

仮想通貨関連の不正取引に対する監視は各国で強化されており、2025年の不正取引額は少なくとも1,540億ドルに達したとチェイナリシスは報告しています。

今回の調査では、取り締まりが進んだ犯罪の供給網の一部が、未承認ペプチド市場へ移行している実態も確認されました。

従来の国境検査や捜査だけではこうした変化を即座に把握することは難しい一方、オンチェーン分析を活用することで資金移動の変化から新たな取引網の形成を早期に検知できる可能性があると同社は説明しています。

実際に、チェイナリシスのような分析ツールの導入が取引所で進んだことで、こうした資金移動は過去より追跡しやすくなっており、利用者の取引履歴や資金経路が特定されるケースも増えているとされています。

チェイナリシスは今回の調査について、仮想通貨の資金移動を追跡することで、グレー市場の拡大や供給網の変化を把握できる事例の一つだと位置付けています。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=159.97 円)

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Source:Chainalysis報告
サムネイル:AIによる生成画像

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BITTIMES 編集長のアバター BITTIMES 編集長 仮想通貨ライター

仮想通貨ニュースメディア「BITTIMES(ビットタイムズ)」編集長。2016年にBITTIMESを創業し、暗号資産・ブロックチェーン・Web3領域の取材・執筆を10年近く継続。ビットコイン・イーサリアムをはじめとする主要銘柄の動向から、国内外の規制・税制・DeFi・NFTまで幅広くカバー。

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