アート業界で必要とされる「ブロックチェーン」盗難されたピカソ作品20年ぶりに発見される
世界的に有名な画家であるPablo Picasso(パブロ・ピカソ)氏が1938年に描いた作品「ドラ・マールの肖像」が、1999年に盗難されて以来、20年ぶりに発見されました。イーサリアム(Ethereum/ETH)などの技術を活用して、芸術品関連の問題解決に取り組んでいるStephen Howes(スティーブン・ハウズ)氏は、ブロックチェーン技術を取り入れれば、このような犯罪を減らすことができると説明しています。
こちらから読む:芸術品の盗難防止に役立つ「ブロックチェーン技術」とは?
盗難されたピカソ作品「価値は30億円以上」
20年ぶりに発見された「ドラ・マールの肖像」(画像:bbc.com)
「美術界のインディ・ジョーンズ」の異名を持つオランダの美術犯罪捜査官Arthur Brand(アーサー・ブランド)氏は、先週初めに1999年に盗まれて以降、行方不明となっていたピカソの作品を20年ぶりに発見しました。
発見された作品は、1938年にピカソによって描かれた「ドラ・マールの肖像」であり、その価値は2,800万ドル(約30億円)は下らないともいわれています。
美術品の盗難などの問題は長年に渡って問題となっているため、これまでにも多くの愛好家たちがこのような問題の解決方法を模索してきましたが、近年ではブロックチェーン技術が誕生したことによって新しい解決策とることができると期待が高まっています。
ブロックチェーンで「芸術品盗難の問題解決」
ブロックチェーン技術を用いてアート作品を"ウォレット化"するシステムを提供している「Thomas Crown Art(トーマス・クラウン・アート)」のStephen Howes(スティーブン・ハウズ)氏は、アート業界で長年に渡って問題となっている「美術品の盗難」や「偽造品」などの問題について次のように説明しています。
犯罪は何世紀ににも渡って続いている重要な問題であり「ダヴィンチ」や「ファンゴッホ」を含む芸術家にも影響を及ぼしています。ピカソの傑作が盗まれた事例は、犯罪が私たちの業界を悩ませ続けている問題であり「アーティスト/コレクター/ギャラリー」に影響を与えています。
実際にこのような問題は増加しており、「主要なオークションサイトにおける大多数の美術品や古代美術品は"偽物である"と考えられている」ということが報告されています。
別の調査では「美術館における美術品盗難の90%以上は内部関係者を巻き込んでいる」とも報告されており、偽造品を製造するために高度な偽造技術を使用しているといわれています。
このような問題もテクノロジーの力で解決できると考えているハウズ氏は、ブロックチェーン技術を使用して美術品の情報を管理すれば「オークション/販売価格/出荷/所有者」などを含めた様々な情報を安全に記録・管理・追跡することができるだけでなく、インターネット環境を有している人であれば、誰でも気軽に作品を登録することができるようになると説明しています。
貴重な作品を追跡し、それらの記録を登録することによって、所有権と譲渡記録を文章化する一連の保管方法を生み出すことができます。この方法を採用すれば、所有者の機密情報や個人情報を開示することなく、作品のオークション、販売価格、出荷などといった様々な情報を確認することができます。
アート業界で必要とされる「ブロックチェーン技術」
ハウズ氏が推進しているブロックチェーンプロジェクト「Thomas Crown Art」は、アート作品の各パーツを"ウォレット化"することによって、芸術品を「価値の保存手段」として使用することができるメカニズムを提供している説明されています。
このシステムにはイーサリアム(ETH)のスマートコントラクトなどの技術が使用されており、ユーザーは「同社が提供する追跡機能」や「etherscan.io」などのブロックチェーンエクスプローラを使用することによって、簡単に各作品の情報を確認することができると説明されています。
ブロックチェーン技術を活用してアート作品の情報を管理すれば、美術品の盗難などを減らすことができると考えているハウズ氏は、今回の「ピカソ作品発見」の報道は、アート業界でブロックチェーン技術が必要とされていることを示しているとの考えを語っています。
ブロックチェーン技術が20年前に存在していれば、この20年間で失われた信じられないほどのピカソの作品を守ることができたかもしれません。
私たちは今この技術を手にしています。今回の事件は、アート業界が「アーティスト/ギャラリー/個人の所有者/コレクター」を保護し、世界的に売り上げを促進するために、ブロックチェーン技術への投資を増やすべきだということを示しています。
ブロックチェーン技術を用いてアート作品を保護する取り組みは、すでに複数の地域で始まっています。そのような動きは徐々に世界中に広まってきており、最近では日本国内でもアートの分野でブロックチェーン技術を活用したプロジェクトが複数報告されているため、今後はこのようなシステムがより身近な存在になっていくことが期待されます。
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