金融庁は2019年12月27日に「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)に寄せられた一般からの意見(パブリックコメント)への回答を公開し、改正された監督指針を同日から適用したことを発表しました。パブリックコメントへの回答の中では『仮想通貨ETF(上場投資信託)を組成・販売することはできなくなる』と明言されています。
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「仮想通貨ETFの組成・販売はできない」と明言
金融庁は2019年9月30日に「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針」の一部改正案を公表し、一般からの意見(パブリックコメント)を募集していました。今回の発表ではこの募集で寄せられたコメントへの回答が公開されており、改正された「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針」が2019年12月27日付で適用されたことが発表されています。
今回の募集では9つの個人・団体から合計36件のコメントが寄せられたと報告されており、それぞれのコメントに対する金融庁からの回答が公開されています。この回答の中では、仮想通貨業界で期待されていた”仮想通貨ETF“に関する回答も行われており、『今回の監督指針改正を踏まえて考えると仮想通貨ETFを組成・販売することはできなくなる』との見解が記されています。
また「海外で組成された仮想通貨ETFに対して投資する投資信託」などに関しても同様の考えであると説明されています。
(寄せられたコメント)
暗号資産ETFは「実質的に非特定資産と同等の性格を有する特定資産」に該当するとの理解でよいか。(金融庁の考え方)
暗号資産ETFについては、ETF自体が投資信託等である場合、本監督指針改正を踏まえると、国内で組成・販売することはできなくなるものと考えられます。また、海外で組成された暗号資産ETFに対して投資する投資信託等を組成・販売する場合についても、一般的には「実質的に非特定資産と同等の性格を有する特定資産」に該当すると考えられます。
金融庁は『仮想通貨を投資対象とする金融商品に関しては”投機を助長している”などと指摘する声があるため、金融庁としてはこれらの資産に投資する投資信託などの組成・販売には慎重に対応すべきであると考えている』と説明しています。
「ステーブルコインへの投資」にも慎重姿勢
今回のパブリックコメントでは、”価格が安定するように設計された仮想通貨”である「ステーブルコイン」に対する投資についての質問も行われており、『ステーブルコインには価格変動や流動性のリスクが低いものも存在するため、投資対象になるのではないか?』と行った内容が寄せられていました。
しかしながら金融庁はこの質問に対しても消極的な姿勢を示しており、『ステーブルコインは多種多様であるため一概に回答することは困難だが、十分に利用者・投資家保護が図られる必要があると考えており、慎重に対応して頂きたいと考えている』と説明されています。
非特定資産等が投資目的となっている商品や、本来の投資目的である特定資産のリスクに比べて価格変動や流動性等のリスクが高い非特定資産等に投資するような商品の組成や販売は適切ではないと考えられます。
いわゆるステーブルコインは多種多様であることから、一概に回答することは困難ですが、金融庁としては、十分な利用者・投資者保護が図られる必要があると考えており、慎重に対応して頂きたいと考えます。
「機関投資家への販売」には可能性も
金融庁は、以前から「仮想通貨投資には”過度な価格変動リスク”などが伴っているため、投資家保護などの観点から仮想通貨関連の投資商品には慎重に対応する必要がある」との見解を示していましたが、今回のパブリックコメントでは「機関投資家などといった”プロ投資家”を対象としたものであっても、適切ではないと考えられる」と説明されています。
現時点においては、適格機関投資家についても、年金基金や地域金融機関等のように、一般国民の資金の運用を担っている面もあることを踏まえると、適格機関投資家私募・公募といった募集方法や投資家属性にかかわらず、投資家に過度な価格変動リスク等を負わせる可能性が高いと考えられる非特定資産等に投資する投資信託等、投資信託・投資法人制度としての信頼性を損ねかねない商品の組成や販売は適切ではないと考えられます。
しかしながら「機関投資家に対する暗号資産投信の組成・販売」に関しては『今後、暗号資産の取引に関する記録が蓄積され、ブロックチェーン技術が成熟して、資産としての安全性が高まったと考えられる状況になった場合には、機関投資家に対する暗号資産投信の組成・販売が適切になる可能性はあると考えられる』とも説明されています。
仮想通貨は以前から「価格変動が激しい資産」としても知られており、これまでにもハッキングや詐欺などで多くの被害が報告されているため、金融庁は投資家保護などを理由に非常に慎重な姿勢を維持しています。
今回の発表でも同様の考えから「仮想通貨ETFの組成・販売などは認められない」との見解が示されているため、”日本国内での仮想通貨ETF提供”はできないこととなりましたが、将来的に「暗号資産の安全性」や「市場の安定」が確保された場合には、一部の機関投資家向けに仮想通貨ETFが提供される可能性があるようです。
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>>「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針(新旧対照表)」
>>「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」
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