米国現物ビットコインETFへの資金流入が加速
米国市場に上場する現物ビットコインETFにおいて、5週連続で資金の純流入が記録されたことが明らかになりました。
市場データを集計するSoSoValue社の最新レポートによると、直近1週間の米国ビットコインETF合計の純流入額は約6億300万ドル(約875億円)に達し、5週連続で資金が流出額を上回りました。
同週の最終取引日となる5月16日には1日だけで約2億6,027万ドル(約378億円)の資金流入が確認され、これが週間ベースでの純流入維持に大きく貢献しました。
ブラックロック社の「iシェアーズ・ビットコイン・トラスト(IBIT)」にはこの日だけで約1億2,970万ドル(約188億円)の資金が流入し、フィデリティ社の「ワイズ・オリジン・ビットコイン・ファンド(FBTC)」にも約6,795万ドル(約98億円)の資金が流入しています。
さらにアーク・インベストと21シェアーズ社が共同運用する「ARK 21シェアーズ・ビットコイン ETF(ARKB)」は約5,798万ドル(約83億円)の資金流入を記録し、グレースケール社の「グレースケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)」にも約461万ドル(約6.7億円)の資金が流入しています。
これら主要ETFすべてへの日次ベースでの資金流入が積み重なった結果、週間でも純流入となり、5週連続で資金流入が継続するという好調な状況が続いています。
UAE政府系ファンドも参入
ビットコインETFへの資金流入が続く背景
現物ビットコインETFへの堅調な資金流入が続く背景には、複数の要因が指摘されています。
米中関係改善期待で高まる投資意欲
まず、米中貿易摩擦の緩和期待が高まったことで、投資家が積極的にリスク資産へと資金を振り向けています。
米国では貿易協議の進展報道を追い風に株式市場が上昇し、ナスダック総合指数が週間で7%上昇するなどリスク資産全般に資金が向かいました。
この流れの中でビットコイン(BTC)価格も反発し、5月中旬には1 BTC=10万ドル台まで回復しました。
こうした市場全体の強気ムードが、機関投資家と個人投資家の両方によるビットコインETFへの買い越しを後押ししたものと考えられています。
インフレ対策としてのビットコイン
また、インフレや景気不透明感に対するヘッジ手段としてビットコインが再評価されている点も重要なポイントです。
金相場が史上最高値圏にある中、一部の市場アナリストはビットコインの総発行量が2,100万枚に限定されるという希少性に着目しており、「デジタルゴールド」として安全資産の新たな選択肢に挙げています。
「安全資産=ビットコイン」評価が高まる
機関投資家が注目するビットコインETF市場
米ETF市場で資金流入が再び活発化
4月中旬には週間ベースで30億ドル(約4,440億円)を超える資金がビットコインETF市場に流入し、2025年最大級の週次流入額を記録しました。
その後も4月末まで複数週にわたり2桁億ドル規模の純流入が続き、今回報告された直近週の約6億ドルに至るまで、5週連続での流入超過という結果になっています。
直近の週次流入額はピーク時と比べ減少傾向にあるものの、依然として安定した資金流入が継続している点は市場の強さを示すものです。
こうした連続的な資金流入の結果、2024年1月の米国現物ビットコインETF取引開始からの累計資金流入額は400億ドル(約6兆円)を超えたと報じられており、ビットコインETF市場が短期間で巨額の資金を集めていることが明らかになっています。
ビットコインETF競争が激化
特に最大手ブラックロック社のIBITは信託報酬が年0.25%と低水準であり、幅広い販売網を持つことから投資家からの支持を集め続けています。その純資産総額は2024年5月時点で約570億ドル(約8.3兆円)に達し、世界最大の仮想通貨ファンドとなっています。
一方、従来から存在していたビットコイン投資信託のグレースケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)は、手数料が高額(年1.5%)であることや解約に制限があることから、現物ETF登場後は継続的な資金流出に見舞われ、運用規模が縮小しています。
このように投資マネーはより効率的で流動性の高いETF商品へシフトしており、新規参入組の中でもブラックロックやフィデリティなど知名度・信頼性の高い運用会社のETFに資金が集中する傾向が鮮明です。
市場関係者は「ETFへの純流入は機関投資家の関心度を示すバロメーター」として注目しており、5週連続の資金流入という事実はビットコインに対する機関投資家の強気姿勢が持続していることを示しています。
資金流入が続くビットコインETF市場の今後
今後の展望としては、こうした大量の資金流入がビットコイン相場に与える影響と持続性が焦点となります。
現物ETFを通じたビットコインの購入量は増え続けており、一部の市場分析によると「2025年にはETFを通じたビットコインの年間購入需要が、マイニングによって新規に発行されるビットコインの供給量の3倍以上に達する」との予測も出ています。
需給バランスの改善という追い風を受け、ビットコイン価格は2024年初来で2倍以上に上昇し、過去最高値に迫る勢いを見せています。
市場心理も前向きな方向に変化しており、複数の著名な市場アナリストが続々と強気の長期価格予想を発表しています。
ただし、4月以降の週次流入額が徐々に減少しているように、足元では投資家が一段と慎重になってきている兆候も見られます。米国の金融政策や規制動向次第では、一時的に売り圧力が高まる可能性もあるため、今後の資金の流れに注意する必要があります。
市場全体としては、現物ETFの定着によってビットコインが従来よりも主流な資産クラスとして認識され始めており、長期的にはさらなる資金流入基調が続くとの見方もあります。
ブラックロック社のETF部門責任者は「機関投資家による仮想通貨ETF採用には時間がかかるものの、長期的には資金流入の波は続くだろう」と指摘しています。
資金の最大10%をビットコインETFに
機関投資家の参入でビットコインETF市場が急拡大
現物ビットコインETF市場の好調を受け、業界内でもポジティブな見解や注目すべき動きが相次いでいます。
ブラックロック社デジタル資産部門のロバート・ミッチニック氏は5月上旬のカンファレンスで「もはやビットコインを保有しないこと自体がリスクになり得る」と発言し、市場におけるビットコインの地位向上を強調しました。
同氏は、ビットコインと米国ハイテク株の価格連動性が弱まってきていることに言及し、機関投資家から寄せられる問い合わせが急増していることを明らかにしています。
こうした発言からは、伝統的金融機関がビットコインをポートフォリオに組み入れる動きを「もはや無視できない潮流」と捉えていることがうかがえます。
米名門大学や投資銀行もビットコインETFへの投資を拡大
大手機関投資家によるビットコインETFへの資金投下事例も増加しています。
米名門ブラウン大学が2024年第1四半期に約490万ドル(約7億円)をブラックロックのIBITに投資したことが最近の報告書で判明し、大学基金など長期志向の機関もビットコイン投資に参入し始めました。
同様に、米国大手投資銀行ゴールドマン・サックスは2024年に入りIBITの保有株式数を28%増加させ、その評価額は約14億ドル(約2,030億円)相当に達していることが報告されています。
こうした動きからは、現物ビットコインETFを通じて市場に参入する機関投資家が着実に増加していることがうかがえます。
市場では「ビットコインETFへの継続的な資金流入は、ビットコインが金に次ぐ新たな安全資産として主流になりつつある兆候」という指摘もあり、安全資産やインフレ対策手段としてのビットコインの地位向上が改めて意識されています。
ブラックロックETF「IBIT」が運用資産で首位独走
さらに、ビットコインETF市場そのものの存在感も飛躍的に高まっています。
ブラックロックのIBITは2024年1月の上場以来、約570億ドル(約8.3兆円)の資金を集め、運用資産残高で圧倒的な首位を維持しています。
これは第2位のフィデリティ社ビットコインETFを数十億ドル規模で上回る突出したもので、ビットコインETF市場における同社の支配的地位を示しています。
著名なビットコイン支持者であるマイケル・セイラー氏も「IBITは今後10年で世界最大のETFに成長するだろう」と予測を語っており、ビットコインETFが将来的に株式や債券の巨大ファンドに匹敵する存在に化ける可能性すら取り沙汰されています。
業界内では「今後も規制環境が整えばさらなるアルトコインETFの登場も見込まれ、機関マネー流入の拡大余地がある」との声もあり、現物ビットコインETFを巡る動向は引き続き市場参加者から注目を集めています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=145.14円)
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Source:SoSoValueレポート
サムネイル:AIによる生成画像





























