チャールズ・シュワブ、BTC・ETH現物取引を近日開始へ
米大手金融サービス企業チャールズ・シュワブ(Charles Schwab)は2025年7月19日、ビットコイン(BTC)およびイーサリアム(ETH)の現物取引サービスを間もなく提供開始する方針を明らかにしました。
同社CEOリック・ワースター氏は米経済番組CNBCのインタビューで「近いうちにビットコインとイーサリアムの現物取引を開始する予定だ」と述べ、今回の取り組みが同社の成長を加速させる要因になるとの見解を示しました。
また同氏は、シュワブの顧客が仮想通貨の上場投資商品(ETP)を通じて、すでに業界全体の20%超を保有している一方で、仮想通貨そのものの保有額は約250億ドル(約3兆7,000億円)にとどまり、同社が運用する総資産10兆8,000億ドル(約1,600兆円)のうち約2%に過ぎないとも述べています。
さらにシュワブは、今回の現物取引サービスの導入によって、大手仮想通貨取引所Coinbase(コインベース)など競合他社に正面から対抗する姿勢も示しました。
ワースター氏はインタビュー内で「顧客がコインベースで仮想通貨を購入しているなら、それをシュワブでしてほしいと考えている」と述べており、外部取引所で購入された仮想通貨資産についても、自社プラットフォームへの移管を促す方針を明確にしています。
英大手銀行も仮想通貨取引を提供へ
シュワブが仮想通貨現物取引に踏み切る背景
仮想通貨需要の高まりで2026年計画を前倒し
チャールズ・シュワブは近年、仮想通貨分野への取り組みを段階的に強化しています。
ワースター氏は今年4月の決算説明会で、米国の規制動向次第では「今後12ヶ月以内」に仮想通貨現物取引サービスの提供が可能になるとの見通しを明かしました。
同社の仮想通貨関連ウェブサイトへのトラフィックは400%増加しており、そのうち70%超が潜在顧客だったことを明かすなど、仮想通貨需要の高まりを強調していました。
シュワブは当初、現物取引サービスの開始時期を2026年頃としていましたが、こうした環境の変化を受け、今回の正式発表に前倒しで踏み切ったとみられています。
さらに2025年4月、米連邦準備制度理事会(FRB)は銀行の仮想通貨関連業務を制限していたガイダンスを撤回しました。これにより、大手金融機関が仮想通貨サービスへ参入しやすい環境が整ったと指摘されています。
GENIUS法成立で進む仮想通貨の法整備
今回のシュワブの発表と同じ7月18日、トランプ米大統領は米国初となる包括的なステーブルコイン規制法「GENIUS法案」に署名しました。これにより、仮想通貨業界における法整備が大きく進展したと評価されています。
この新法の成立は、仮想通貨の普及を加速させる重要な転換点とされています。業界では、規制の明確化によって参入障壁が低下し、機関投資家や大手金融機関の本格的な参入が進むとの見解が広がっています。
ETFと連携した仮想通貨取引の統合管理が可能に
シュワブはすでに自社プラットフォーム上で、ビットコインおよびイーサリアムの現物ETFを提供しており、仮想通貨関連のETFや投資信託、ビットコイン先物オプション商品も取り扱っています。
新たに提供される現物取引サービスにより、顧客は株式や債券と同様に、同一口座内で仮想通貨の売買や保管が可能になります。外部取引所を介さずに資産を一元管理できる利点があり、利便性の向上と資産流出の防止が期待されています。
CEOが語る仮想通貨事業への成長期待
ワースター氏はCNBCのインタビューで「仮想通貨現物取引の提供がシュワブにとって新たな成長の原動力になる」と語りました。
特に、外部プラットフォームで仮想通貨を取引している既存顧客の資産を自社へ取り込むことで、成長の加速が期待されるとしています。
また同氏は「顧客の大半はすでに株式や投資信託をシュワブに預けているが、仮想通貨は外部に分散されている」と指摘し、信頼性の高い金融機関として、仮想通貨を含む資産の一括管理ニーズに応えていく意向を明らかにしました。
富裕層顧客に最大7%のBTC保有を助言
銀行業界で広がる仮想通貨サービスの導入
今回のチャールズ・シュワブの発表は、仮想通貨分野への取り組みを強化する伝統的金融機関の動きの一環として位置付けられています。
英スタンダードチャータードがBTC・ETH現物取引を解禁
イギリスのスタンダード・チャータード銀行は7月15日、機関投資家向けにビットコインおよびイーサリアムの現物取引サービスを開始すると正式に発表しました。
同行は、グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIB)として初めて仮想通貨の現物取引を提供する体制を整え、拡大する機関投資家のニーズに対応する方針を明らかにしています。
米シティ・バンカメステーブルコイン発行を検討
米大手銀行のシティグループでは、ジェーン・フレーザーCEOが7月16日の第2四半期決算後の電話会議で、独自の米ドル連動型ステーブルコインの発行を視野に入れていることを明らかにしました。
シティはすでに、預金のトークン化(デジタル預金トークン)に積極的に取り組んでおり、将来的にはステーブルコインの準備金管理や仮想通貨資産のカストディ提供にも対応する可能性があるとしています。
また、米バンク・オブ・アメリカ(BofA)のブライアン・モイニハンCEOも、6月開催の金融カンファレンスで、米ドル連動ステーブルコインの導入を視野に準備を進めていると述べています。
スパルカッセンとJPモルガンの動き
欧州でも動きが広がっており、ドイツ最大級銀行グループのスパルカッセンは、2026年夏までに約5,000万人の個人顧客を対象とした仮想通貨の直接取引サービスを提供する方針を示しました。
これまで慎重姿勢を保っていたスパルカッセンが仮想通貨事業への本格参入に踏み切ったことは、業界内で大きな注目を集めています。一方、米JPモルガン・チェースは仮想通貨ETFを担保とした融資サービスの提供に向けた準備を進めていると報じられています。
専門家の間では「規制環境の整備が進むことで、これまでコインベースのような仮想通貨取引所が担っていた役割を、銀行が代替する動きが本格化する可能性がある」との見解も示されています。
Coinbaseのブライアン・アームストロングCEOはホワイトハウスでのGENIUS法の署名に際し「米国における金融革命が正式に始まる」とコメントしており、規制整備を追い風に伝統的金融と仮想通貨の融合が進むとの見方が広がっています。
仮想通貨と伝統的金融の融合が進む中、シュワブをはじめとした大手金融機関の動向は今後の市場形成に大きな影響を与えると見られています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=148.49 円)
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Source:CNBCインタビュー
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