「Fusaka」アップグレード、12月3日適用へ
イーサリアム(ETH)の大型アップグレード「Fusaka」のメインネット適用日が、2025年12月3日に決定したことが明らかになりました。
Fusakaはスケーラビリティ向上と取引手数料の低減を目的としたアップグレードです。当初この大型アップグレードの実施時期は2026年以降と見込まれていましたが、開発者はテスト結果を踏まえ計画の前倒しを決定したと伝えられています。
イーサリアム研究者のクリスティン・キム氏の記事によると、FusakaにはPeerDAS(Peer Data Availability Sampling)の導入やブロブ(blob)容量の拡大など、計12件のEIPが含まれています。
メインネット適用に先立ち、2025年10月上旬〜下旬にかけてHolesky・Sepolia・Hoodiの各テストネットでFusakaが試験実施される予定です。
さらに、メインネット適用後には約2週間でブロブ容量を現行比で約2倍に拡大し、その約3週間後には上限を21個まで引き上げる段階的な実装計画も示されています。
「ビットコインと同じくらいシンプルに」
「Fusaka」実装がもたらすイーサリアムの進化
PeerDAS導入とブロブ容量拡張の背景
2025年9月18日に開催されたイーサリアム定例開発者会議(ACDCコール #165)で、Fusakaのテストネット適用スケジュールとブロブ容量拡張計画が正式に決定されました。
同会議では最新のテスト結果を踏まえ、当初2026年以降と見込まれていたアップグレード時期を前倒しする方針が示されています。
Fusakaの目玉機能の一つが「PeerDAS」で、これはバリデーターが大容量データ全体ではなく一部のみを検証することでデータの可用性を確認する技術です。
この方式を採用することで、各ノードの通信量やストレージ負荷を大幅に抑えられるとされています。
キム氏の記事によれば、PeerDASの導入によりロールアップ(L2)がブロックチェーンに投稿する取引データの処理効率が向上し、理論上では現在の数倍から10倍近い処理能力(1秒あたり最大約12,000件)を実現できるとされています。
Dencun以降に急増したブロブ利用状況
また、「Fusaka」アップグレードにおいてはブロブ(blob)と呼ばれる大容量データ塊の取り扱い拡張も重要なテーマとされています。ブロブとは、ロールアップが取引データを低コストでイーサリアム・メインネットに一時格納するための領域を指します。
この仕組みは、2024年3月に実施された大型アップグレード「Dencun(デンクン)」で初めて導入されました。
Dencun以降、L2各チェーンによるブロブの利用は急増し、現在では1ブロックあたり平均5個以上のブロブが投稿されています。
特にアービトラム(Arbitrum/ARB)やオプティミズム(Optimism/OP)など主要L2ではブロブ容量の使用率が90%を超え、ほぼ上限に達しているとの分析結果も報告されています。
こうした状況を受け、Fusakaではメインネット適用後に2回の小規模ハードフォークを実施し、ブロブ容量を段階的に拡大する計画が採択されました。
こうした段階的拡大は「Blob Parameter Only(BPO)フォーク」と呼ばれ、クライアントソフトの大幅な更新を必要とせずに適用できる点が特徴とされています。
Fusaka後に実施されるブロブ拡張スケジュール
具体的には、Fusaka適用後の12月17日にブロブの最大数を現在の9個から15個へ拡大し、さらに2026年1月7日に21個まで引き上げるスケジュールが想定されています。
この検証の一環として、事前に複数の開発者向けテストネット(Devnet)で負荷テストが繰り返し行われてきました。
最新のDevnet-5ではネットワーク設定ミスや暗号ライブラリの不具合により、全ノードの帯域を使い切るトラブルが一時的に発生しました。しかし、修正後のテストでは最大15個および21個のブロブを安定処理できることが確認されています。
Prysmの不具合とブテリン氏が示すFusakaの意義
特にPrysmクライアントでは、ブロブ数増加時に孤立ブロックが多発する問題が報告されました。
原因となったCKZGライブラリのバグは既に修正され、検証処理を軽量化した改良版の準備も進められています。これにより、ブロブ拡張後も安定稼働が見込まれます。
イーサリアム共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏も2025年3月、FusakaアップグレードでPeerDAS導入とブロブ容量拡大の必要性を指摘しました。
同氏は「2025年にはPeerDAS搭載のFusakaが必要だ」と述べ、Pectra適用翌日にFusakaテストネットを稼働させる目標も掲げています。
Pectraが示した改善点とFusakaの役割
なお、2025年5月に実施された前回の大型アップグレード「Pectra(ペクトラ)」では、ステーキング上限の引き上げやアカウント抽象化(AA)の導入によりネットワークの効率化と利便性向上が図られました。
PectraはMerge(マージ)以来最大規模のアップグレードと位置付けられています。
一方、L2利用の増加に伴ってデータ容量拡張の必要性も指摘されており、Fusakaはその課題に応える形でネットワークのスケーラビリティを一層強化するアップグレードとなります。
イーサリアムの立て直しに必要なこと
イーサリアムの進化|Fusakaと次期Glamsterdam計画
Fusaka監査コンテスト開始と報奨金制度
イーサリアム財団は2025年9月15日、Fusakaアップグレードの脆弱性を発見した場合に総額200万ドル(約30億円)を報奨金として支払う監査コンテストを開始しました。
同コンテストはセキュリティプラットフォームSherlock上で4週間実施され、GnosisやLidoも協賛しています。
この取り組みは、Fusaka実装に先立ってセキュリティを徹底する狙いがあり、バグ報奨金制度を拡充することで開発者コミュニティの参加を促進するものです。
加えて、主要プロジェクトの協賛も加わることで、イーサリアム・ネットワークの信頼性強化につながると見られています。
ステーキング退出待ち急増が示す課題
一方、ValidatorQueueのデータによると、バリデーターによるステーキング解除申請が急増し、現在は約260万ETH(116億ドル/1.7兆円相当)が退出待ちとなっています。その結果、出金待ち期間は記録的な約43日間に達しました。
この退出キューの長期化について、ブテリン氏は「退出キューを短縮するとチェーンの信頼性が大きく損なわれる」と指摘しており、待ち時間に上限を設ける現行デザインの意義を強調しています。
次期アップグレード「Glamsterdam」計画の展望
なお、イーサリアム開発者コミュニティは、Fusakaに続く次期アップグレード「Glamsterdam」を2026年に予定しており、年内には提案内容の取りまとめが進む見通しです。
イーサリアムの開発ロードマップはFusaka適用後も継続し、さらなるスケーリングの取り組みが続けられていく予定とされています。
こうした継続的なアップグレード計画は、イーサリアムが長期的に拡張性と安全性を高め、L2を含むエコシステム全体の発展を下支えする基盤となることを示しています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=147.90 円)
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Source:クリスティン・キム氏の記事
サムネイル:AIによる生成画像





























