ステーブルコイン流通増で変化する主要L1勢力図
仮想通貨分析プラットフォームのToken Terminal(トークン・ターミナル)は2025年8月23日、ステーブルコイン循環供給量が2024年初の約1,300億ドル(約19兆円)から直近では約2,700億ドル(約40兆円)へ倍増したことを報告しました。
Token Terminalのデータによると、流入の大半はイーサリアム(ETH)とトロン(TRX)に集中しており、両者で全体の約90%を占めています。一方、ソラナ(SOL)は約100億ドル(約1.5兆円)超の残高を抱える第3位のチェーンとなっています。
📈 Stablecoin supply has doubled since Jan '24, growing from ~$130 billion to ~$270 billion.
⚖️ Ethereum & Tron host ~90% of the total stablecoin supply. Solana is the third chain that hosts over $10 billion in stablecoins.
🔢 Top 4 issuers hold ~96% market share. Tether is… pic.twitter.com/GYoKM8cLWb
— Token Terminal 📊 (@tokenterminal) August 23, 2025
📈 2024年1月以降、ステーブルコインの供給量は約1300億ドルから約2700億ドルへと倍増しました。
⚖️ 総ステーブルコイン供給量の約90%は、イーサリアムとトロンが占めてしています。第三位はソラナで、100億ドル以上のステーブルコインが存在します。
(後略)
これらのデータから、ステーブルコイン流入による資金供給力の差が時価総額上位レイヤー1銘柄の価格乖離を引き起こす要因となり得るとの見方も出ています。
2025年仮想通貨決済トレンド
主要L1チェーンで激化するステーブルコイン競争
イーサリアムとトロンに資金が集中
Token Terminalのデータによれば、ステーブルコイン供給の約90%がイーサリアムとトロンに集中しており、BNBチェーンやアバランチ(AVAX)、ベース(BASE)などもシェアを拡大しているものの、両者との差は依然として大きい状況です。
このような「ステーブルコイン資金シェア格差」は、ネットワークごとの資金循環や市場での価格発見にも影響を及ぼしている可能性があると指摘されています。
ネットワークごとに異なる価格反応
ステーブルコインのネットワーク内保有量が多いチェーンでは流動性が域内に留まりやすく、分散型金融(DeFi)での利回り獲得やステーキング需要、トランザクションの増加を促進することで買い圧力が蓄積しやすいとされています。
トロンでは、2025年に約200億ドル(約2.9兆円)の新規流入が観測され、ネットワーク上のステーブルコイン残高は過去最高の820億ドル(約12兆円)に到達しました。
その結果、TRXの価格は年初来約80%上昇して0.36ドル(約53円)に達し、週足で9週連続の上昇となっています。
一方でソラナは、同期間に約80億ドル(約1.2兆円)の流入があったにもかかわらず、SOLは年初の213ドル(約3万1,000円)から2%下落となりました。結果として、市場全体を上回る明確な上昇には結び付いていない状況です。
イーサリアムに集中した300億ドルの流入
イーサリアムでは、5月以降に顕著な流入が続き、累計で約300億ドル(約4.4兆円)に達しています。
ETHは第2四半期に1,800ドル(約26万5,000円)付近で底打ちし、その後は150%超の上昇を記録しました。分析では、この急騰局面と安定資金の流入急増に相関が見られるとの指摘があります。
主要L1銘柄の価格を動かす二強ネットワーク
これらのことから、安定資産の流入は各チェーンの価格動向に異なる影響を与える可能性が示されています。
その中でも、供給の約90%が集中するイーサリアムとトロンが、主要L1銘柄の価格動向を牽引している状況が浮き彫りになっています。
ただし、ソラナの例が示すように、ステーブルコイン流入が直ちに価格高騰へ結び付くとは限らず、ネットワークの実需や市場環境など複合的な要因によって価格反応が左右されるとみられています。
ステーブルコインは金融決済の未来
規制環境の変化とステーブルコイン需要拡大
規制と市場拡大が生んだイーサリアム価格の上昇
市場では規制整備に伴う信頼性向上への期待からステーブルコイン需要が拡大しています。
米大手銀ドイツ銀行は「利回り禁止の余波で投資家がDeFi利回りを求めてETHへ資金を移し、イーサリアム価格上昇につながっている」との見方を示しました。
実際、ステーブルコイン規制「GENIUS法」の成立直後にETHは年初来高値の3,795ドル(約56万円)近辺まで上昇しました。業界では、この法整備を仮想通貨市場の発展に向けた「画期的な一歩」と評価する声が上がっています。
英銀予測「市場は2028年に2兆ドル規模へ」
規制の後押しを受け、ステーブルコイン市場の時価総額は拡大傾向を強めています。
ステーブルコイン全体の時価総額は現在2,600億ドル超(約38兆円)に達しており、英スタンダードチャータード銀行は、新法の効果も重なり、2028年までに2兆ドル(約295兆円)規模へ拡大する可能性を指摘しました。
米国でルールが明確化された後、トロンのUSDT流通量は急増しました。8月上旬時点で同ネットワーク上のUSDT供給は約830億ドル(約12兆円)に達し、全体の50%超を占めたと伝えられています。
トロンは手数料の安さと送金速度から、テザー(Tether)社のUSDT発行先として主力ブロックチェーンの一つとなっており、そのネットワーク上のステーブルコイン残高は、7月に過去最高の819億ドルを記録しました。
中国発ステーブルコイン構想が生む波紋
加えて、世界第2位の経済大国である中国でも方針転換の兆しがみられています。
ロイター通信は、中国政府が人民元連動型のステーブルコイン発行を承認する方向で検討を始めたと伝えています。これは、仮想通貨取引を禁じてきた従来の政策からの大きな転換と見られています。
人民元の国際化戦略の一環として安定通貨の推進が盛り込まれる見通しで、仮に承認された場合、米ドル建てステーブルコインが主流の現状に対する対抗軸として注視されることになります。
こうした動向は、ステーブルコインが仮想通貨エコシステムの基盤インフラとして不可欠な位置付けにあることを改めて示すものです。
今後は、規制整備と市場成長の相乗効果により、主要チェーン間の資金フローや価格動向に変化が生じる公算が大きく、世界中から注目が集まっています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=147.41 円)
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Source:Token Terminal公式X
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用





























