アリゾナ州、ビットコイン準備法案を可決した最初の州に|知事の署名が得られる可能性は?
BTC準備法案、アリゾナ州議会が米国初承認
米国アリゾナ州議会(上院・下院)は2025年4月29日に、ビットコイン(BTC)を州の準備資産として保有可能とする「ビットコイン準備法案」を可決しました。
これにより、アリゾナ州は米国内で初めて、ビットコインを公式な準備資産として保有するための基金設立を議会レベルで承認した州となりました。
可決されたのは上院法案「SB1025(アリゾナ戦略的ビットコイン準備法)」と関連法案「SB1373」の2本です。これらの法案により、州政府の財務長官は公的資金の最大10%(約4兆3,000億円相当)をビットコインなどの仮想通貨に投資する権限を持つことになります。
また、州政府が押収した仮想通貨や将来の剰余金を運用する「戦略的デジタル資産準備基金(SB1373)」の設立も盛り込まれています。これらの法案が成立すれば、アリゾナ州政府は正式にビットコインを財務準備金として保有・管理できるようになります。
法案は4月28日に、下院本会議で「賛成31・反対25」の採決結果で可決され、すでに2月の時点で上院本会議も賛成多数で通過していました。
法案を提出したウェンディ・ロジャース上院議員(共和党)は「自由と透明性を高める画期的な機会だ」と述べ、州資金のビットコイン投資の意義を強調しています。採決はどちらも党派色の強い投票結果となりました。
現在、法案は州知事のもとに送られており、州法として成立するには、ケイティ・ホッブス知事(民主党)の署名を残すのみとなっています。
国家ビットコイン準備金の恒久化を推進
法制化の最後の壁|アリゾナ州知事署名の可能性は?
ホッブス知事による署名拒否のリスク
最終段階となる州知事の署名については予断を許さない状況です。
ホッブス知事は仮想通貨そのものへの明確な反対意見を示していませんが、2024年には共和党主導の法案の22%に拒否権(署名拒否)を行使し、全米の州知事の中で最も高い拒否権行使率を記録しています。
さらにホッブス知事は今年4月17日に「発達障がい者支援予算に関する法案が議会を通過するまで、他のすべての法案に拒否権を行使する」と宣言しており、現時点でビットコイン準備法案への署名意向は明らかにしていません。
もし知事が拒否権を行使した場合、上下両院で再度3分の2以上の賛成がなければ拒否権を覆せません。現在、共和党の議席数は過半数程度にとどまっているため、この条件を満たすのは難しく、拒否権が行使されれば法案は事実上廃案になる見通しです。
直近の知事署名で高まる成立への期待感
一方で、ホッブス知事は最近、仮想通貨関連の法案に署名した前例があります。
4月15日には、個人宅での仮想通貨ノード運用やマイニング活動を自治体規制から守る「HB2342」に署名しています。この動きから、ビットコイン支持者の間では準備法案への署名にも期待が高まっています。
米国の非営利団体サトシ・アクション・ファンドのCEOデニス・ポーター氏は、ホッブス知事のHB2342署名を歓迎しながら「『戦略的ビットコイン準備』法案にも署名を」とX(Twitter)で呼びかけ、この署名でビットコイン準備法成立の可能性が大きく高まったと期待を寄せています。
HUGE BREAKING: Arizona Governor signs H.B.2342 into law to protect the ‘Right to Run a Node’.
— Dennis Porter (@Dennis_Porter_) April 22, 2025
Thank you @GovernorHobbs!
PLEASE SIGN THE ‘STRATEGIC BITCOIN RESERVE’ BILL INTO LAW NEXT! pic.twitter.com/8E61lV2tBJ
【速報】アリゾナ州知事が「ノード運用の権利」を保護する法案(H.B.2342)に署名!
ホッブス知事、ありがとうございます!
次は「ビットコイン戦略備蓄法案」への署名もぜひお願いします!
ホッブス知事がSB1025に最終署名すれば、アリゾナ州は正式に州政府版ビットコイン準備基金を設立する全米初の州となります。一方、拒否権が行使されれば法案は不成立となり、ビットコイン準備基金導入競争の先頭はテキサス州など他州に移る見込みです。
ビットコイン準備法案の州別進捗状況
アリゾナ州の動きに続き、全米各州でビットコインを州の公的資金運用に組み入れる「戦略的ビットコイン準備法案」の提案が相次いでいます。
2023年末以降、すでに18州以上で計33本を超える法案が提出されています。現在進行中の主な事例には、テキサス州、ニューハンプシャー州、フロリダ州などがあります。
テキサス州
テキサス州では、シュベルトナー上院議員提出のSB21法案(テキサス戦略的ビットコイン準備法案)が今年2月に上院本会議を25対5の賛成多数で通過し、下院での審議に移っています。
州議会は与党共和党が多数を占め、仮想通貨支持者として知られるグレッグ・アボット州知事も法案への関心を示していることから、成立の見通しは明るいとされています。
テキサス州上院が全会一致で承認
ニューハンプシャー州
ニューハンプシャー州では4月10日、下院本会議が州版ビットコイン準備法案HB302を僅差(賛成192・反対179)で可決しました。
この法案は州の一般基金などの公的資金から最大10%を金などの貴金属や時価総額5,000億ドル(約71.4兆円)超の仮想通貨に投資できるようにするもので、現時点ではビットコインだけがこの基準を満たすと見込まれています。
法案は今後上院で審議され、可決されれば共和党のケリー・アヨット知事が署名する見通しですが、上院での審議行方によっては成立が不透明な状況が続いています。
BTC準備法案が下院通過
フロリダ州
フロリダ州では、州財務責任者(CFO)に州資金の10%までをビットコインに投資する権限を与える法案HB487が4月10日、下院保険・銀行業務小委員会で全会一致で可決されました。
同法案は今後さらに複数の委員会審査と下院本会議での採決を経る必要があり、まだ道のりは長いものの、法案を推進するジミー・パトロニスCFOは次のように利点を強調しています。
教員や警官など公務員の年金運用で最優先すべきは収益の確保です。
ビットコインはポートフォリオの多様化と他資産の価格変動に対する安全なヘッジ手段になり得ます。
下院小委員会で全会一致の承認
オクラホマ州
一方、オクラホマ州ではビットコイン準備法案の成立が見送られました。
同州下院は今年3月下旬に「戦略的ビットコイン準備法案(HB1203)」を77対15の大差で可決していましたが、4月15日の上院歳入委員会では僅か1票差で否決される結果となりました。
HB1203は州の「レイニーデイ基金(財政安定化基金)」や年金基金の最大5%をビットコインや一定規模以上のステーブルコインに投資できるようにする内容でしたが、根強い懐疑的見方もあり、上院での支持獲得には至りませんでした。
BTC準備法案が1票差で否決
BTC準備法案立法レースはアリゾナ州とテキサス州が牽引
こうした動きを受け、米国のビットコイン準備基金導入競争は現在、アリゾナ州とテキサス州が先頭集団を形成していると評されています。
アリゾナ州が法制化に成功すれば、テキサス州など他州も追随し、米国全体でビットコインの地位がさらに強固になると予想されます。
そのため、ホッブス知事の判断は今後の全米におけるビットコイン政策の行方を左右する可能性があり、同知事の署名には世界中から注目が集まっています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=円)
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Source:アリゾナ州議会公式サイト
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:AIによる生成画像