米ブラックロック、ステーキング収益視野にETH信託を登録
2025年11月20日、世界最大の資産運用会社BlackRock(ブラックロック)は、米デラウェア州に「iShares Staked Ethereum Trust(アイシェアーズ・ステークド・イーサリアム・トラスト)」を新規登録したことが明らかになりました。
この信託は、イーサリアム(ETH)のステーキング機能を組み込んだETF設定に向けた準備段階であり、ブラックロックは既存のイーサリアム現物ETFに続き、ステーキング報酬を通じた収益提供の可能性を投資家に提供するものとみられています。
デラウェア州での信託設立は、米国におけるETF商品準備の一般的な初期ステップであり、ブラックロックもビットコインETFやイーサリアム現物ETFの申請前に同様の手法を用いてきました。
業界では近年、イーサリアムなど主要仮想通貨(暗号資産)のETFに年率3〜5%程度のステーキング報酬を付与する動きが活発化しており、今回の登録はそうした潮流の延長線上にあると受け止められています。
「ステーキング報酬付きソラナETF」承認
BlackRock、ステーキング対応でイーサリアムETFの収益強化へ
ステーキングETF申請へ向けた準備始動
ブルームバーグのETFアナリスト、エリック・バルチュナス氏はX(旧Twitter)で、ブラックロックによる今回の信託登録について「ステーキング対応のイーサリアムETF申請の布石であり、1933年証券法「’33 Act」に基づく正式申請が近く行われる見通しだ」と指摘しました。
BlackRock is planning to file for a Staked Ethereum ETF, as per the Delaware name registration. '33 Act. Filing coming soon. pic.twitter.com/NmAsQhcq5D
— Eric Balchunas (@EricBalchunas) November 19, 2025
デラウェア州での名称登録によると、ブラックロックはステークド・イーサリアムETFの申請を計画しており、1933年証券法に基づく申請がまもなく行われる予定です。
今回の「Staked Ethereum Trust」は’33 Actに基づくデラウェア法上の信託として設立されており、2023年末にブラックロックがイーサリアム現物ETFの申請に先立ってデラウェア州に登録した「iShares Ethereum Trust」と同じ担当者(ダニエル・シュワイガー氏)が手続きを担当しています。
ブラックロックは2023年末にもビットコイン現物ETFの申請前に類似の信託を設立しており、名称登録から約1週間で正式申請へ進むパターンが確認されています。
ステーキング利回りで商品価値向上へ
ブラックロックがステーキング対応ETFを目指す背景には、イーサリアム保有によるネットワーク検証参加でリワード(報酬)を得られる「ステーキング」の利回りを投資家に提供し、商品価値を高める狙いがあると見られています。
ブラックロックは2025年7月、自社のイーサリアム現物ETF(ティッカー:ETHA)にステーキング機能を追加するため、ナスダックを通じてSECにルール変更提案書(19b-4フォーム)を提出していました。
当時、SEC(米証券取引委員会)は同提案の判断を先送りしましたが、その後は規制環境が改善傾向を示しており、2025年9月には仮想通貨ETFの上場基準に関する包括的な承認が行われて一部の新商品が個別審査なしで上場可能となりました。
この結果、ステーキング対応ETFの審査ハードルも下がりつつあり、市場投入までの期間短縮にもつながっています。
SECの慎重姿勢とブラックロックの対応方針
ただし、ステーキングによる追加収益を許容するETFの承認事例は限定的で、SECは依然慎重な姿勢を崩していません。
ETF運用会社は、預け入れたイーサリアムの管理方法やスラッシング(不正防止の罰則)への対策、解除時の流動性確保策などについて詳細な開示を求められています。
しかしブラックロックのデジタル資産部門責任者ロバート・ミッチニック氏は以前より「イーサリアムのステーキング対応ETF承認が『次の段階』になる」との見解を示しており、同社もこうした要件に対応しつつ正式申請に踏み切るとみられます。
ブラックロックがSECへS-1登録届出書を提出すれば、同社のイーサリアムETFはステーキング報酬を生み出す「利回り付き」商品へと大きく進化することになります。
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ブラックロック参戦で変わるステーキングETF勢力図
REXやグレースケールの先行事例
ステーキング対応ETFを巡っては、2025年秋以降に動きが加速しています。
REXオスプレイ社は9月下旬に米国初の「イーサリアム+ステーキングETF(ティッカー:ESK)」を1940年投資会社法に基づきローンチしており、その前の7月にはソラナ(SOL)のステーキングETFも上場させています。
さらに10月にはグレースケール社のイーサリアムETFが米SECからステーキング機能追加の承認を受け、1933年法に基づく米国の現物型仮想通貨ETFとして初めてステーキング報酬の獲得を実現しました。
このようにSECが一部容認に転じたことで、フィデリティや21シェアーズ、フランクリン・テンプルトンなど大手運用会社もイーサリアムファンドへのステーキング導入を相次いで申請しており、市場では一種の“ステーキングETFブーム”が起きつつあります。
ブラックロックの市場戦略と期待値
ブラックロックの新信託設立も、こうしたステーキングETF拡大の潮流を踏まえた展開として市場関係者の注目を集めています。
ミッチニック氏はインタビューで、ステーキング機能付きETFが実現すれば2026年半ばまでに約100億〜200億ドル(約1.6〜3.1兆円)の新規資金流入を呼び込む可能性があると述べました。
こうした資金流入の見通しに加えて、アナリストらは各社のステーキングETFによってイーサリアムの相当量が市場からロックアップされ、流動性や長期的な供給量にも影響が及ぶと指摘しています。
規制当局のハードルが下がり競合他社が先行する中、ブラックロックがタイミング良く正式申請を行い、市場シェアを獲得・拡大できるかが今後の焦点になるとみられています。
規制当局のハードルが下がる中、ブラックロックの動向は仮想通貨ETF市場の注目を集めており、今後の市場動向に影響を与える可能性があります。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=157.09 円)
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Source:エリック・バルチュナス氏X投稿
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