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ブロックチェーンは「牛肉産業」をどのように変えるのか?


ブロックチェーン技術は牛肉業界における様々な問題解決のための糸口となる可能性があります。家畜の成長記録や食肉検査の内容、実際に消費者の手に渡るまでに辿る「運送業者」や「加工業者」などで行われたプロセスなども含めた様々な情報をBlockchain上で管理することによって、トレーサビリティを向上させ、安全かつ質の高い状態で家庭まで届けることができます。実際にそれらの技術を活用した場合にもたらされる変化の一部を紹介します。

こちらから読む:牛肉産業に変革をもたらす「ブロックチェーン」の仕組み

牛肉産業の問題点と解決策 ー Beefing Up The Blockchain

「牛肉」の需要は世界中で増加し続けており、牛肉と子牛の世界生産は2018年で「6300万トン」に達するとの見通しも発表されています。牛肉に対する需要の増加は、アイルランドのような地域で重要な問題となっている「牛肉産業が抱える問題」と結びついています。

世界最大級のグローバル経営コンサルティング会社であるDeloitte(デロイト)が公開した報告書「Beefing Up The Blockchain」では、牛肉産業の問題をブロックチェーンで改善するためのいくつかの方法が記されています。

この報告書によると、昨年、アイルランドにおける食品と飲料品の輸出額は126億ユーロ(約1兆6,000億円)となっており、牛肉はその中でも5番目の輸出額を占めていることが報告されています。アイルランド産牛肉の輸出額は2017年に5%増加しているため、現在は需要の増加に伴ったサプライチェーンの適切な管理が求められています。

Deloitteが公開したレポートでは、ブロックチェーン技術を活用することによって企業と顧客との間の取引方法を変えることができ、以下に挙げるようなメリットをもたらすことができることが記されています。

家畜の食生活を明確化「牧草の情報管理」

現在、アイルランドの牛は主に草を主食にしており、稀に穀物が与えられています。しかしそのような牧草が一体どのような影響を与え、何が問題で消費者への被害をもたらすのかについての明確な定義はありません。

現在利用されている最先端の農業機器にブロックチェーン技術を取り入れて、それらの機械で情報のやり取りを行うことができるようにすれば、動物の食生活に関する明確な情報を効率よく収集することができるようになり、改ざんの心配がない正確な監査情報を提供することができます。

食肉の安全性を確保する「トレーサビリティの向上」

「トレーサビリティ(*1)の向上」は、食肉の安全性確保などをはじめとした牛肉産業におけるあらゆる問題を迅速に解決するためにも重要なものとなります。ブロックチェーンを使用すれば、牛肉製品のトレーサビリティを大幅に向上できる可能性があります。農場での飼育に関する様々な情報から、実際に消費者の手に牛肉が届くまでのあらゆる情報はブロックチェーン上に記録することができます。

(*1)トレーサビリティ:食品の安全を確保するために、栽培や飼育から加工・製造・流通などの過程を明確にすること

時間が経つにつれて他のメンバーが参加する場合などには、機密情報を非公開にしてビジネス戦略が特定のユーザーにしか公開されないようにすることもでき、サプライチェーン内における不適切な行為を見つけ出すことも容易になります。

銀行取引を排除して「貿易コストを削減」

Deloitteが公開した報告書の中では、ブロックチェーン技術を貿易に活用することによって、輸出コストをどのように改善することができるかが再考されています。

貿易にブロックチェーンを使用すれば、銀行との取引を取り除くことができ、条件が整えば自動的に決済を完了することもできます。貿易を行う際に必要となる書類手続きなども効率化することが可能になり、それらの手続きに必要となる時間も大きく短縮することができます。

簡単に確認できる「牛肉の安全性」

ブロックチェーン上に記録された牛肉に関する情報は、店頭に牛肉が並べられる際に専用の「QRコード」を値札にプリントすることによって、消費者が牛肉の安全性を簡単に確認できるようにすることもできます。

「AR(拡張現実)技術」は、トレーサビリティなどの情報に基づいた食べ物に関する現在の市場動向に基づいて、より多くの情報を消費者に提供することができます。これらの情報は牛肉に対する消費者からの信頼を確保するために非常に有効なものとなります。

牛肉ブランドに信頼を与える「消費者レビュー」

「牛肉の品質」や「ブランド力」をさらに向上させるためには、消費者からの意見や感想などのデータを収集して新しいアイデアを生み出すことも重要となります。

ブロックチェーン上に消費者からのレビューを投稿できるようにすれば、消費者の声を効率よく収集することができるようになり、ネットワークの参加者も投稿されたレビューを元にして信頼できる質の高い牛肉を見分けることができるようになります。

ブロックチェーン上に投稿されたこれらのレビューは投稿後に変更することはできないため、信頼できる情報として扱うことができ、レビューを投稿したユーザーには仮想通貨などによる報酬が付与される仕組みを取り入れることもできます。

情報管理を容易にする「正確なデータベース」

ブロックチェーン技術を用いた情報管理では、証明書の保管・管理・共有を合理化することができます。従来の「紙」をベースにした記録方法ではコストがかかるだけでなく、実際に何か過去の情報を見つける必要がある場合などにおいても無駄に時間がかかってしまう場合も多く、最悪の場合には必要な情報を見つけることができない場合などもありました。

しかしブロックチェーン技術を用いて情報の管理を行えば、膨大な数の情報管理でもかさばる心配もなく、簡単に過去のデータを見つけ出すこともでき、改ざんされる心配のない正確な情報を示すデータベースとして使用することができます。

Deloitteは、アイルランドの牛肉産業がこれらの新しい技術を取り入れて、その他の牛肉産業との差別化を測ることを推奨しています。業界団体の設立や、試験的導入のための製品開発、報酬制度の導入などを本格的に導入することができれば、その後の牛肉産業は飛躍的な成長を遂げる可能性が秘められています。

食品業界で活用が進む「ブロックチェーン技術」

ブロックチェーン技術は、食品を取り扱う業界のあらゆる分野で積極的に取り入れられています。食品の安全性の確保や、流通過程に透明性をもたらすことなどが求められているのは牛肉業界だけではありません。

世界最大の小売業者である「Walmart(ウォルマート)」は、アメリカで大きな問題となった大腸菌ウィルスの問題などを受けて、ブロックチェーン技術を用いた食品の衛生管理プロジェクトを開始しています。

ブロックチェーン技術を食品の安全性確保のためなどに活用する取り組みは、すでに他の食品でも成功事例が複数報告されていることなどからも、牛肉業界においても大きな成果をあげることができることは間違いないと考えられます。今後の牛肉産業におけるブロックチェーンの活用事例にも注目が集まります。