ブロックチェーン技術は、ドローン(無人航空機)を用いたサービスの実用化や、それに関連する全く新しいプラットフォームの開発に大きなメリットをもたらす可能性を秘めています。このようなアイデアが実際に社会で広く採用されるためにはまだまだ多くの問題を解決する必要があるため、本格的な導入は少し先の話になると考えられますが「Blockchain技術の未来」を考えるのであれば、注目すべき分野の一つであることは間違いありません。
こちらから読む:ドローンの将来に大きな可能性をもたらす「ブロックチェーン技術」とは
なぜブロックチェーンがドローン業界で活用されるのか
ドローンを使った宅配サービスは2013年頃から注目を集めており、一般的に使用される日用品などの商品や医薬品の配送に応用できると期待が高まっています。一般の人でもドローンを入手できるようになった現代社会では「大手企業による特許出願」や「世界各国での航空法改正」など、本格的な実用化に向けた取り組みが徐々に進められています。
しかし「宅配用ドローン」を実用化させ、一般的に広く普及させるためには、解決すべき問題が未だに多く残っています。特に宅配サービスで活用する場合には「配達先となる顧客の位置情報」や「配送中に撮影される映像」なども扱う必要があり、ドローンを飛ばす際には「ドローンを操縦するパイロットとの通信」や「自動操縦のためのドローン間での通信」などといった情報を適切に管理することも必要となるため、より安全で信頼できる情報管理システムを採用することが重要となります。
ブロックチェーン技術を活用してドローンの情報を記録すれば、ドローンの運行データやIDデータ、顧客情報などをより安全に記録・管理して「スムーズな取引」を実現することができ、分散型の管理方法をとることによって「ドローン台数の増加」にも対応することができます。
また「ブロックチェーン管制システム」と言われるドローンの情報管理システムを用いれば、顧客に届けられる荷物に関する情報を管理し、実際に荷物が届けられた際の「荷物の開錠・施錠」なども自動的に行うことができます。
ブロックチェーン技術とドローンを組み合わせた新しいサービスはすでに複数の企業によって研究開発が進められているため、これまでの事例などを元にして「ブロックチェーン技術はどのような方法でドローンに活用できるのか」を見てみましょう。
「ドローン宅配サービス」の情報管理
「Trusted IoT Alliance」は、2016年にプロトタイプの「ドローン配送サービス」を設計し、開発を行なっています。無人機を用いた配達サービスで問題の一つとなるのは「無人機が自宅や倉庫のような場所に入る際に信頼できる方法をとること」です。
これを実現するための方法の一つとしては、IoT(モノのインターネット)機器を活用してドアや窓などとの接続を可能し、ドローンとの相互通信を可能にする方法があります。ドローンはそれらのIoT端末と情報のやり取りを行い、ブロックチェーンを通じて身元確認が取れた場合には配達を完了させて自動的に帰還するようにすることができます。
ブロックチェーン技術とドローンを用いた配送サービスは大手企業でも実際に採用されており、小売業界を代表する大手企業Walmart(ウォルマート)は、2017年の5月に「安全な場所への無人航空輸送」と題された特許を出願しています。
分散型の「航空写真・映像共有プラットフォーム」
ブロックチェーン技術とドローンを組み合わせたサービスの一つとして「分散型の航空写真・映像共有プラットフォーム」というアイデアがあります。このサービスはブロックチェーン技術とドローンが実現する特に魅力的なサービスの一つです。
航空写真を閲覧する場合には、Google(グーグル)のような大手企業が提供しているツールなどを使用するのが一般的でしたが、今後は「分散型の航空写真共有プラットフォーム」の需要が高まる可能性があります。
「SOAR」と呼ばれるブロックチェーンプロジェクトは、スマート農業、都市計画、災害救助、天然資源管理などの産業を改善するためにブロックチェーン技術を活用して航空写真を収集しています。
同社のプラットフォームは、ユーザーが撮影したドローンコンテンツの売買ができるようになっているため、自分が撮影した映像で収益化を図ることができます。さらに同社は、集められた膨大なデータによって作成される「スーパーマップ」も構築しています。
SOARのCEOであるAmir Farhand(アミール・ファーハンド)氏は、“静的マッピング”の時代は終わったと信じており、今後は新しい「動的スーパーマッピング」が一般的に使用されるようになると語っています。これらのデータは全てブロックチェーン上に記録され、映像コンテンツの作成者はシステムに貢献したことに対する報酬を受け取ることが可能になります。
「SOAR」に関する詳しい情報は以下の公式サイトをどうぞ
>「SOAR」の公式サイトはこちら
航空会社の「セキュリティ問題の改善」
ドローンにブロックチェーン技術を活用するメリットの一つとしては、航空会社などの「セキュリティの問題」を改善できる可能性があることが挙げられます。無人偵察機が航空会社などの滑走路で見つかった際には、航空業界に重大な損失を与える可能性があります。これはドローンを用いた”テロ行為”が行われる可能性があるためです。
2018年12月に商業用の滑走路付近でドローンが見つかった際には多くの混乱を招くことになり、結果的に1,000機以上のフライトに影響を及ぼし、約14万人の人々が被害を受けたことが報告されています。この結果「EasyJet」と呼ばれる航空会社だけでも合計1,500万ポンド(約21.3億円)の損失が発生したと伝えられています。
このような問題を解決するためにはドローンの飛行状況を適切に管理し、必要な時に瞬時に把握できるようにする必要があります。ドローンのフライト情報などを管理するためのブロックチェーン技術が一般的に適用されるようになれば、少なくとも一般的に流通しているドローンの情報は迅速に把握することができるようになるため、問題が発生した場合の情報確認の手間を軽減できると期待されます。
ドローンの未来に「ブロックチェーン技術」は必要か?
ドローンを用いたサービスは、私たちの日常生活に大きな変化をもたらし、これまでには想像もしなかったような全く新しい文化を作る可能性を秘めています。しかしながらそのような大きな変化には、大きな問題や障壁が付きまといます。
数台のドローンが飛んでいるだけではそれほど大きな問題にはなりませんが、本格的にドローンが実用化されて数十台〜数百台ものドローンが空を行き交うようになった場合には「新たなルール」が必要となります。
・一般家庭の上空を飛行して大丈夫でしょうか?
・道路の上空のみを飛行すべきでしょうか?
・どのような方法で空中衝突を避ければ良いでしょうか?
・動物たちへの影響はないでしょうか?
・空中から撮影された高画質映像のプライバシー問題は?
・人類は新しい大気汚染の問題に直面するのでしょうか?
このような問題は、これから実際にドローンの実用化が始まるにつれて必ず直面する重要な課題となります。これらの課題に対する対応策は当然企業やユーザーだけの問題ではないため、世界各国の規制当局や一般の人々とも連携を取りながら決定していく必要があります。
特にプライバシーの面においては、ドローンが「深刻な脅威」となる可能性があることは明らかです。撮影された情報などの管理という面では、ブロックチェーン技術のメリットを発揮できる可能性があります。「パブリックチェーン」を用いるか「プライベートチェーン」を用いるかという点に関しては今後も議論が行われていくことが予想されますが、いずれにせよドローンを実用化するための技術の一つとして「暗号化技術」や「ブロックチェーン技術」が重要な役割を担ってくることは間違いないと考えられます。