この記事の要点
- 米下院議員のヤング・キム氏らが2026年4月21日にPACE法案を提出
- 非銀行決済事業者や仮想通貨企業のFed直接接続を認める新提案
- FedNowやフェドワイヤーへの接続開放で決済構造の転換点となる可能性
- 銀行仲介を前提とした手数料構造や業界競争に影響する法案として注目
仮想通貨企業のFed接続解禁へ
米下院議員のヤング・キム氏とサム・リッカルド氏は2026年4月21日、非銀行決済事業者および仮想通貨企業に対して連邦準備制度の決済システムへの直接アクセスを認める「PACE法案」を米議会に提出しました。
同法案が成立すれば、これまで銀行を経由しなければ利用できなかったFedNow(FRBの即時決済システム)やフェドワイヤー(大口資金の送金システム)といった連邦決済インフラに、要件を満たした仮想通貨(暗号資産)関連企業が直接接続できるようになります。
直接接続が実現した場合、仲介銀行を介さないことで手数料の削減が進むとともに、決済処理の迅速化も期待されています。これにより、消費者と中小事業者の双方にとって利便性の向上につながるとみられています。
この動きを受け、ブロックチェーン・アソシエーションのサマー・マーシンガーCEOは「デジタル資産決済企業は、競合他社と同様の金融インフラへのアクセスから長年排除されてきた」と述べ、制度改革の必要性を強調しました。
PACE法案、40州ライセンス保有企業に直接接続の道
仮想通貨企業を阻む銀行仲介型の決済構造
マーシンガーCEOが指摘する「締め出し」の構造は、現行の制度設計に根ざしています。仮想通貨関連企業を含むほぼすべての非銀行決済事業者は、フェドワイヤーやFedACHなどの清算・決済システムに直接接続することを認められていません。
アクセスには必ずパートナー銀行を介する必要があり、銀行が中間マージンを上乗せする手数料構造が長年維持されてきました。
この仲介コストは最終的に消費者や事業者に転嫁されており、フィンテック企業の価格競争力を制約する要因と指摘されています。
キム議員は「勤勉に働くアメリカ人が、自分のお金にアクセスするために何日も待たされたり、単に送金するだけで余分な手数料を払わされたりするべきではない」と述べ、既存システムの非効率性を問題視しています。
40州免許・資産分別・優先回収を明記
この非効率性を解消するため、PACE法案では連邦決済システムへの直接接続を希望する決済企業に対し、OCC(通貨監督庁)が監督する新たな連邦登録制度を設けています。
登録要件の一つとして、40以上のmoney transmitter(送金事業者)ライセンスを保有していることが明記されており、複数州で規制対応実績を有する事業者に対象が限定されます。
要件を満たした企業は、即時決済インフラであるFedNowを含む連邦準備制度のシステムへ直接接続できるようになります。
直接接続を認める一方で、法案には消費者保護の規定も盛り込まれています。登録事業者は顧客資金を流動資産で全額裏付けることが義務付けられ、法人の運転資金とは分別管理が求められています。
さらに、事業者が破綻した場合には顧客が資金回収において優先的な地位を持つ規定も設けられており、銀行水準の安全基準が非銀行事業者にも課される形となっています。
ただし、登録要件の詳細や審査基準については今後の規則制定に委ねられる部分が多く、制度の実効性については引き続き検証が必要とされています。
PACE法案に業界4団体が支持
制度設計の検討が続く中で、業界側の動きはすでに本格化しています。
今回の法案には、フィナンシャル・テクノロジー・アソシエーション(FTA)やブロックチェーン・アソシエーションをはじめ、ザ・デジタル・チェンバーと仮想通貨イノベーション協議会(CCI)を加えた4団体が支持を表明しました。
4団体の加盟企業の中核を占めるのは、フィンテック企業や仮想通貨決済企業です。これまでパートナー銀行への依存を強いられてきた業態であり、PACE法案による直接接続の開放を強く求めてきた経緯があります。
この仕組みの変化により、仲介銀行を介さない直接接続が可能となれば、決済完了までの時間短縮に加え、中間マージン削減分を手数料引き下げやサービス強化に振り向ける余地が広がるとみられています。
フィンテック業界は支持、銀行側は警戒強める
これらの利点を踏まえ、FTAのペニー・リーCEOは「米国の消費者と中小事業者は、給与の直接入金の反映やベンダーへの小切手の到着を何日も待たされるべきではない」と述べました。
また、規制された決済企業に連邦決済インフラへのアクセスを認めることで、米国の決済環境が他の主要経済圏と同等水準に近づくとの見方を示しています。
一方で、銀行業界は同種の改革に強く反対してきた経緯があります。預金顧客の囲い込みや決済手数料収入を脅かしかねない動きとして、議会への働きかけを続けています。
PACE法案も例外ではなく、銀行業界からの巻き返しを受ける可能性が高いとの見方が強まっています。法案成立には議会内での相当の交渉が必要になる見通しです。
「銀行は欲深い」交渉から離脱を要求
米国の仮想通貨規制、3つの軸で制度整備が前進
米国では仮想通貨をめぐる立法整備が複数の軸で同時に進んでおり、PACE法案もその一つに位置づけられています。市場構造の明確化を目指すCLARITY法案や、ステーブルコイン規制の連邦枠組み整備と並行して、決済インフラへのアクセスという実務的な論点でも制度議論が前進しています。
これと並ぶ動きとして、SEC(米証券取引委員会)は訴訟主導型の規制から、政策対話型「ACT戦略」へと方針を転換したほか、FDICはステーブルコイン規制のGENIUS法実装の規則案を承認しました。規制・立法・インフラ整備の三方向から同時に制度整備が進展しています。
PACE法案がOCCの登録制度を軸とした連邦枠組みとして成立するかどうかによって、米国における仮想通貨企業の事業環境は大きく変わる可能性があります。今後の委員会審議や銀行業界の反応に、業界関係者の関心が集まっています。
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Source:PACE法案 / ヤング・キム議員公式プレスリリース
サムネイル:AIによる生成画像

























