この記事の要点
- 金融庁研究会、ステーブルコイン100万円上限の見直しを議論
- JPYC・SBI VCが上限緩和を要望、全銀協は慎重姿勢
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ステーブルコイン「100万円規制」に転機か
金融庁は2026年11月2日、「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(令和8事務年度第2回)を開催し、ステーブルコインの「100万円上限」を含む規制の見直しについて議論しました。
研究会では、JPYC株式会社とSBI VCトレードが、現行の100万円上限が大口決済や送金の障壁になっているとして、それぞれ異なる制度上の制限について緩和を要望しています。
JPYCは自治体の給付金や企業の給与支払いに必要なステーブルコインの一括発行が制限される問題を指摘し、SBI VCトレードは法人向けの国際送金や大口決済に対応できない実態を報告しました。
一方、全国銀行協会(全銀協)は、利用者資金の保全や金融システムへの影響を懸念し、第二種資金移動業の100万円上限のみを撤廃・緩和することについて「極めて慎重に検討されるべき」との見解を示しています。
ステーブルコインの決済利用拡大を求める事業者側と、利用者保護を重視する銀行業界の立場の違いが明らかになり、100万円上限の見直しと安全性の確保をどう両立させるかが論点となっています。
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上限緩和めぐりJPYC・SBI VCと全銀協が対立
JPYC「50億円発行に5000回の分割が必要」
JPYC株式会社は、資金移動業型ステーブルコイン「JPYC」の発行に適用される1件100万円の送金上限が、自治体の給付金や企業の給与支払いにおける一括発行の障壁になっていると指摘しました。
同社によると、利用者が日本円をJPYCに交換する「発行」は1件100万円に制限される一方、発行後のアンホステッドウォレット間の移転には同上限が適用されず、受取人への配分が少額でも原資をまとめて発行する際に制約が生じています。
この影響について、自治体が10万人に5万円ずつ給付金を配る場合、原資50億円分のJPYCを発行するには5,000回の分割が必要になり、企業が100名分の給与原資5,000万円を発行する場合も50回に分けなければならないと試算しました。
JPYCは、受取人ごとの配分額が100万円以下と区分できる場合には一括発行を認める扱いを求めるとともに、国・自治体・金融機関や本人確認済み法人との取引について、発行上限の撤廃または別枠の設定を段階的に検討するよう要望しています。
SBI VC、外国SC規制の不整合を指摘
JPYCが国内の発行上限を問題視したのに対し、SBI VCトレードは外国発行のステーブルコインに適用される移転・保有上限が、法人顧客の大口決済を妨げていると報告しました。
同社が取り扱う米ドル建てのUSDCとRLUSDには、1回100万円相当の移転上限と滞留防止措置が課されており、法人顧客からのクロスボーダー送金や企業間の大口決済の需要に応えられないと説明しています。
これに対し、円建ての信託型ステーブルコイン「JPYSC」には移転上限がなく、SBI VCトレードは、国内の3号電子決済手段と、同等の法制度による保護を要件とする外国発行の4号電子決済手段との規制上の違いを問題視しています。
同社は、こうした制度上の整合性を理由に、4号電子決済手段に該当するRLUSDについて、100万円の移転・保有上限と買取り等の措置を撤廃するよう求めました。
全銀協「上限撤廃は極めて慎重に検討を」
こうした上限緩和の要望に対し、全国銀行協会(全銀協)は、第二種資金移動業の登録制や資産保全などの現行制度を維持したまま100万円上限のみを撤廃・緩和することについて、「極めて慎重に検討されるべき」との見解を示しました。
その理由として、第二種資金移動業では利用者資金の発生から保全完了まで10暦日を超える場合があり、従来型の供託等を利用する事業者が破綻した際には、資金返還まで最低170日を要する可能性があると指摘しています。
さらに、ステーブルコインは24時間移転できるため、償還請求が短時間に集中する「デジタル・ラン」が金融機関の流動性に影響を及ぼすおそれがあるほか、高額取引ではマネーロンダリングや制裁回避を防ぐための監視・取引停止体制も必要だと説明しました。
これらのリスクを踏まえ、全銀協は100万円を超える高額送金について、追加的な審査や監督が求められる認可制の第一種資金移動業で取り扱うことを基本とすべきだと主張しています。
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100万円上限の緩和は道半ば、議論は継続
国内ではステーブルコインの制度見直しが一部で実現しており、2026年6月に施行された改正資金決済法では、信託型ステーブルコインの発行額の50%を上限に、満期・残存期間3か月以内の国債や一定の定期預金による裏付け資産の管理・運用が認められました。
金融庁は同年7月21日に公表された「成長投資を促進するための金融戦略」でオンチェーン金融の社会実装を推進課題に位置付け、9月30日には「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」の初会合を開催しています。
今回開催された研究会でも制度面の検討を続け、ステーブルコインのレンディングに対する業規制や、預金取扱金融機関本体による発行のあり方を議題に取り上げました。
裏付け資産の運用に関する規制緩和が実現した一方、送金上限の見直しは依然として議論の段階にあり、金融庁は事業者の大口決済需要と利用者保護の双方を踏まえた制度のあり方を検討しています。
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Source:研究会資料 / 事務局説明資料 / JPYC資料 / SBI VCトレード資料 / 全銀協資料
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