なぜ「ビットコイン 女子 死亡」がトレンドに?
仮想通貨ビットコイン(BTC)の投資詐欺に関連して「女子 死亡」というキーワードがSNS上で注目を集めています。これは、過去に日本で発生したビットコイン投資に絡む死亡事件が再び話題となっていることが要因とみられます。
近年、仮想通貨(暗号資産)投資詐欺の被害が増加傾向にあることも背景にあり、SNSやニュースサイトでは過去の痛ましい事件が再び取り上げられ、議論されています。
特に再注目されているのは、2020年に大阪で発生した22歳女性の自殺事件と、2022年に広島で起きた71歳男性の死亡事件です。いずれもビットコイン投資をうたう詐欺がきっかけとなっており、当時も社会に衝撃を与えました。
ネット上では「なぜこんな悲劇が起きたのか」「どうすれば防げたのか」といった声が上がっており、過去の事件から学ぼうという動きが広がっています。
仮想通貨「詐欺の種類・手法」まとめ
【事件①】2020年の大阪・22歳女性の自殺事件
大学の同級生に誘われた「高配当」の罠
2020年10月、大阪府で当時22歳の新社会人だった川上穂野香さんが、ビットコイン投資詐欺の被害に遭い、自ら命を絶つという痛ましい事件が起きました。
穂野香さんは大学の同級生から「月利6~8%の高配当が得られる」「今しかない有利な投資話」と勧誘されています。
仮想通貨を運用すると称する無登録の投資グループに150万円を出資し、「これはポンジスキーム(ねずみ講)やマルチ商法ではない」と繰り返し説明されたといいます。
穂野香さんは友人の言葉を信じ、消費者金融から借金をして資金を調達しましたが、一度も配当を受け取れず、返金要求も拒まれました。
返金拒否と加害者の冷淡な対応
穂野香さんは出資からわずか1か月後、「投資詐欺の件でたくさん迷惑をかけてごめんなさい」との遺書を残し、大阪市内のホテルで自ら命を絶ちました。
亡くなる直前には母親や交際相手に被害を相談し、交際相手と共に勧誘者の男性に直接会って返金を求めたと報じられています。
しかし、男性は嘲笑するように「なぜ返さないといけないのか」と返答し、受領書の発行も拒むなど、全く取り合おうとしませんでした。
詐欺グループに下された罰の軽さと遺族の無念
この投資勧誘を行っていたグループは「ジェンコ」や「ジュビリーエース」など、高配当をうたう無許可の金融商品で出資者を集めていた違法業者でした。
2021年、大阪府警は金融商品取引法違反の疑いで勧誘グループのリーダー格の男性を逮捕し、2022年6月には同容疑で略式起訴しました。
しかし、科せられた罰金はわずか70万円で、穂野香さんの母・川上佐永子さんは「罰金刑だけでは納得できない。加害者に強い憤りを感じる」と述べています。
その後、遺族は同級生ら勧誘者3人に対し、約1,200万円の損害賠償を求める民事訴訟を起こしました。
佐永子さんは「娘の悔しさ、無念を晴らすことだけを考えてきた」と涙ながらに会見で語り、この事件は社会にも大きな反響を与えました。
この事件を通じて、「身近な友人からの誘いでも安易に信用してはいけない」という警戒心を社会全体で共有する必要があります。
「1億XRPの無料配布」謳う詐欺師現る
【事件②】出資した女性が加害者になったビットコイン投資詐欺事件
もう一つ再注目されているのが、2022年に広島県で発生した71歳男性死亡事件です。
この事件は被害者が男性でしたが、詐欺に巻き込まれた出資者が全員女性だったため、関連事例として紹介します。
「毎日10%の高配当」という誘い文句と巨額の出資
この事件では、被害者の竹内義博さん(当時71歳)が「ビットコインを運用すれば預けた元本の2.5倍にして返す。元本の10%を毎日配当として支払う」と持ちかけていました。
竹内さんに勧誘された門美帆子容疑者(44)ら女性5人は、約90万円から最大2,000万円近くをそれぞれ出資し、総額で4,000万円を超える資金を預けています。
しかし、2022年5月頃から配当が途絶え、出資金も返還されなくなったため、女性グループは自力で資金を取り戻そうと動き出しました。
暴行による死亡とスーツケース遺棄
門容疑者ら女性5人は、自分たちの出資金を回収するため「回収屋」と称する今泉俊太容疑者(犯行当時32歳)ら男性グループに依頼しています。
その結果、2022年6月、広島県海田町の事務所で竹内さんを約16時間にわたり監禁し、殴る蹴るの暴行を加えて現金約11万円を奪いました。
竹内さんは暴行によって死亡し、遺体はスーツケースに詰められて遺棄されたとされています。
警察は関与した男女7人を強盗致死などの容疑で逮捕し、主犯格の今泉被告には一審で無期懲役の判決が言い渡されました。
なぜ被害者が加害者へ転じたのか
この事件では出資者であったはずの女性たちが加害行為に及んだ異例の展開となりました。
捜査段階で一部の女性は「話し合いで詐欺師からお金を取り返してくれると思った。ここまで極悪非道な犯罪になるとは想定していなかった」と供述したと報じられています。
広島の事件は、詐欺の被害者が自ら違法な手段で金銭を取り戻そうとして更なる悲劇を招いた例として注目されています。
「楽して稼ぐ」幻想が招いた落とし穴
門容疑者は自身が1,600万円を出資し、1,070万円しか戻らなかったことで犯行に及んだとされています。
女性グループは夜の飲食業関係で知り合った仲間同士で構成され、互いに「楽して高配当が得られる」という謳い文句を信じてしまったとみられます。
結果として取り返しのつかない事件に発展し、多くの逮捕者を出す事態となりました。
このケースは、被害者が加害者にもなりうるという投資詐欺の恐ろしさと、安易に闇社会に頼る危険性を社会に示しています。
仮想通貨投資など「モノなしマルチ商法」
暗号資産投資詐欺が若年女性を狙う理由
SNSの普及と「副業ブーム」が生む隙
近年、暗号資産を悪用した投資詐欺の被害は高齢者だけでなく、20~30代の若年層にも広がっており、中でも若い女性が被害に遭うケースが指摘されています。
背景には、将来への金銭的不安や「手軽に稼げる副業」といった甘い誘い文句、さらにSNSの普及によって知らない人からの投資話への警戒心が薄れたことがあります。
特に女性は、友人や知人からの誘いを信頼しやすく、「断ったら悪いかも」と相手に気を遣ってしまう傾向があると指摘されています。穂野香さんのケースでも、大学の友人からの勧誘をきっぱり断れなかったことが悲劇につながりました。
若者心理を狙う詐欺の巧妙な手口
また、「楽に稼いで早期リタイアしたい」「億り人になりたい」といった社会的風潮も、若年層の心理を刺激しやすい要因となっています。
詐欺グループは、こうした心理につけ込み「必ず儲かる」「リスクはゼロ」などと謳って巧みに勧誘してきます。
国民生活センターによれば形のないマルチ商法的な投資詐欺(モノなしマルチ)の相談は若者を中心に増加傾向にあり、友人やSNSで知り合った人から「他の人に紹介すれば報酬が入る」と誘われて契約したものの、事業実態が不明で解約・返金も困難になるケースが多く報告されています。
また、特に若い女性は「将来への不安」や「人間関係への遠慮」につけ込まれやすく、詐欺グループにとって格好の標的となりやすいと指摘されています。
マッチングアプリを悪用する「ロマンス詐欺」
さらに、昨今はマッチングアプリを悪用し、ロマンス詐欺の手口で暗号資産投資へと誘導するケースも増えているようです。
例えば、「結婚資金を貯めたいから一緒に投資しよう」と甘い言葉で近づき、暗号資産の購入を持ちかけて金銭を騙し取る事例が確認されています。
こうした手口では、女性だけでなく男性が被害に遭うケースもありますが、恋愛感情を利用するロマンス詐欺では、特に若い女性が標的となる傾向があるとされています。
このように、暗号資産を悪用する詐欺師たちは、被害者の心理につけ込み、信用させる手口を日々巧妙化させています。
仮想通貨詐欺から身を守る4つの鉄則
鉄則①:甘い勧誘文句を疑う
仮想通貨の投資詐欺から身を守るためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
まず「絶対儲かる」「リスクなし」「今だけのチャンス」といった甘い勧誘文句が出てきたら詐欺を疑うことです。高配当や確実な利益を強調する投資話は特に危険であり、金融庁に未登録の業者がそうした出資を募るのは違法行為です。
実態や仕組みが不明瞭な投資話には、十分な注意が必要です。
鉄則②:身近な人からの誘いでも冷静に判断
また、たとえ親しい友人や知人から誘われても、怪しいと思ったらきっぱり断る勇気が必要です。穂野香さんの事例では、友人からの紹介ということで安心感が生まれてしまいました。
詐欺加害者は信頼関係のある人物を中間に挟んで勧誘してくる場合があり、そこに警戒が必要です。
誘ってきた相手が悪意なくとも、その人自身が騙されている可能性もあるため「友達だから大丈夫」という油断は禁物です。
鉄則③:借金してまで投資しない
さらに、借金をしてまで投資しないことも重要な教訓です。
巧みな勧誘では「カードローンで資金を作れる」「今借りてもすぐに利益で返せる」といった甘言があるかもしれません。
しかし、万一詐欺だった場合は借金だけが手元に残ります。穂野香さんも消費者金融3社から計150万円を借りてしまい、返済のプレッシャーも自殺の一因となってしまいました。
こうした悲劇を繰り返さないためにも、借金をしての投資や高額なクレジット決済には絶対に手を出さないことが肝心です。
鉄則④:相談窓口を事前に把握しておく
公的機関も投資詐欺の注意喚起を強めています。
警察庁は2024年に入り、SNS上の投資詐欺やロマンス詐欺が急増しているとして全国の警察に対策強化を指示しました。2023年に全国で認知されたSNS起点の投資詐欺は2,271件、被害総額は約277億8,900万円にも上っています。
被害に遭った後では資金回収は困難なケースが多く、早い段階で不審な誘いを断ることが最善の防御策です。
万が一怪しい話を持ちかけられた場合は、一人で判断せずに家族や専門機関に相談し、警察や消費生活センターに情報提供することを検討してください。
仮想通貨(暗号資産)は本来、有益な技術です。しかし、悪用されるケースも多いため、詐欺に遭わないための知識と冷静な判断力が重要です。
【 相談窓口情報 】
金融庁:金融サービス利用者相談室
電話番号:0570-016-811(IP電話からは03-5251-6811)
受付時間:平日10:00~17:00
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