今年9月に設置予定の日本の行政機関「デジタル庁」は2021年6月18日に『デジタル社会の実現に向けた重点計画』を閣議決定したことを発表しました。この計画の「研究開発・実証の推進」の項目では、”データの耐改ざん性が高く証跡の確保に優れた技術”としてブロックチェーン技術にも言及されており、同日公開された「成長戦略実行計画」の中でも”ブロックチェーン・NFT・セキュリティトークン”に関する内容が記載されています。
「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を閣議決定
デジタル庁は2021年6月18日に『デジタル社会の実現に向けた重点計画』を閣議決定したことを発表しました。この計画は2021年9月に設立される「デジタル庁」の創設を見据えて、デジタル社会形成基本法に基づく重点計画を先取りする形で策定されたものであり、デジタル庁の公式サイトでは計画の具体的な内容も公開されています。
「ブロックチェーン技術の利点」などにも言及
『デジタル社会の実現に向けた重点計画』では合計136ページに渡って様々な計画やその内容などが説明されていますが、この資料の「研究開発・実証の推進」の項目では“データの耐改ざん性が高く証跡の確保に優れた技術”として「ブロックチェーン技術」についても言及されています。
具体的には『ブロックチェーン技術を利用することによって、取引上の仲介が不要となり、サービスにおける取引コストの削減が図られる等の利点がある』と紹介されており、今後の取り組みについては『国内外の先進的な取組みや民間主導の活動から積極的に情報収集を行いながら、高い信頼性が求められる公共分野などでの導入について検討を行うと共に、トラストを担保する基盤の1つとして社会実装を進める』と説明がなされています。
③データの耐改ざん性が高く証跡の確保に優れた技術
ブロックチェーン及び分散台帳技術は、データに関する耐改ざん性が高く透明性が確保されたシステムを分散システムとして実現する技術である。これを利用することで、取引上の仲介が不要となり、サービスにおける取引コストの削減が図られる等の利点がある。このため、暗号資産(仮想通貨)の取引管理等では既にその技術が広く活用されているほか、身分証明等の真正性確認や、サプライチェーン管理や電力取引、環境価値取引といった商取引など、様々な分野での商用化、実証及び検討が国内外で進められている。
我が国においては、引き続き国内外のグループにおける先進的な取組や民間主導の活動を積極的に情報収集し、高い信頼性が求められる公共性の高い分野に導入されるシステムの技術面や運用面の課題及びその解決の方向性等に関して、更なる検討を行う。また、データの存在証明を行うタイムスタンプについて、包括的データ戦略に基づき、トラストを担保する基盤の一つとして、社会実装を進める。
「ブロックチェーン用いた実証実験」に関する報告も
「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の123ページでは、ブロックチェーン技術を用いて行われた実証実験に関する報告もなされており、『ブロックチェーンを利用した再生可能エネルギー環境価値取引プラットフォームの構築と環境配慮型行動変容の促進』というタイトルでその内容が説明されています。
具体的には『2018年度からこれまで十分に評価又は活用されていなかった自家消費される再生可能エネルギーのCO2排出削減に係る環境価値を創出し、当該価値を低コストかつ自由に取引できるシステムを、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を用いて構築し、実証する事業を実施している』と説明されており、『2018年度では、遠隔地間での売買取引に伴う環境価値の移転をブロックチェーンにより記録する実証実験に成功した』とも報告されています。
その後もこの実証実験は続けられているとのことで、今後の取り組みについては『2021年度以降は、過年度の予備実証を踏まえた本格的な実証実験を進め、価格設定や属性情報、取引方式等に着目した環境価値取引の実証実験等を実施する』『2022年度までに、行動変容の実証実験を通じ、環境価値の取引に影響を与えるマーケットデザインを明らかにすることに繋つなげる』とも説明がなされています。
成長戦略実行計画では「NFT・セキュリティトークン」も
ブロックチェーン技術は2021年6月18日に閣議決定された成長戦略会議の中の「成長戦略実行計画」の中でも”国家戦略”として明記されており、『第2章 新たな成長の原動力となるデジタル化への集中投資・実装とその環境整備』の項目では『6.ブロックチェーン等の新しいデジタル技術の活用』という内容が記載されています。
具体的には『サプライチェーンの効率化や官民の様々なサービス間でのID(本人確認)連携など、 ブロックチェーン等の新しいデジタル技術の活用方策の検討を行う』と説明されているほか、『非代替性トークン(NFT)やセキュリティトークンに関する事業環境の整備を行う』とも記載されています。
6.ブロックチェーン等の新しいデジタル技術の活用
サプライチェーンの効率化や官民の様々なサービス間でのID(本人確認)連携など、 ブロックチェーン等の新しいデジタル技術の活用方策の検討を行う。また、非代替性トークン(NFT)やセキュリティトークンに関する事業環境の整備を行う。
「Non-Fungible Token(NFT)」や「セキュリティトークン(デジタル証券)」関連のサービス開発や環境整備はすでに日本国内の民間企業でも進められているため、国家戦略として事業環境の整備が進められれば、これらの分野がさらに発展していくことになると期待されています。
今回公開された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」と「成長戦略実行計画」の全文は以下のリンク先ページで確認することができます。