日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は2021年8月11日に、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)と共同で「2022年の暗号資産税制改正に関する要望書」を取りまとめたことを発表しました。今回の発表では、JCBAが実施したアンケート調査の結果・分析結果なども公開されており、『アンケート調査で個人投資家の暗号資産税制に対する懸案が浮き彫りになった』とも報告されています。
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「20%の申告分離課税・繰越控除の導入」など求める
日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は2021年8月11日に、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)と共同で「2022年の暗号資産税制改正に関する要望書」を取りまとめたことを発表しました。
両団体は昨年の暗号資産の税制改正に向けた要望書を作成して提出していましたが、今回の要望書でも昨年と同様に「暗号資産取引の利益への課税方法を”20%の申告分離課税”とすること」や「暗号資産取引の損失は翌年以降3年間、暗号資産に関する所得金額から繰越控除できること」などが求められています。
また今回の発表では「海外で金融機関や機関投資家の暗号資産投資が拡大していること、暗号資産の時価総額・取引金額が世界的に増加していること、それに伴い暗号資産が有用な決済手段・資産クラスとして確立されつつあること」などを考慮した上で『①税務申告促進の必要性、②税の公平性や制度内の整合性、③海外との競争力確保、という観点で申告分離課税が必要不可欠である』とも説明が行われており、それぞれ以下のように説明がなされています。
①税務申告促進
暗号資産の仕組みや取引の特殊性を鑑みると、利用者による適正な税務申告によって捕捉性を高めることが税の徴収において重要であると認識している。しかし、現状税制では暗号資産による利益は一律の税率でないこと、また申告の有無に関わらず前年度の損失繰越ができないことなどが、利用者による適正かつ積極的な申告の促進を妨げていると思料する。②税の公平性や制度内の整合性
2020年の金融商品取引法や資金決済法の改正により、暗号資産の法規制上の位置づけに重要な変化があった。業界団体による自主規制も行われ、利用者保護や業界全体の健全化も進んでおり、他の金融商品と同じく有用な決済手段および資産クラスとしての利用が国内外で確立されつつある。このような暗号資産の金融商品としての法規制上の位置づけや、他の金融商品の枠組みの中で暗号資産の派生商品が生じている現状を鑑み、他の金融商品との税制度における整合性・公平性を担保する必要があると考えている。③海外との競争力確保
暗号資産を利用した資金決済分野の革新やブロックチェーン技術の応用による経済社会の高度化に備え、原則キャピタルゲイン課税とする主要国の暗号資産税制との乖離を縮小する必要がある。
「アンケート調査の結果」なども記載
日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は今年6月に、2022年税制改正要望に向けた調査の一環として、仮想通貨に投資している一般投資家を対象として「暗号資産の税務申告と税制改正要望に関するアンケート調査」を実施していましたが、今回の発表では『このアンケート調査の結果を元にして増収効果と申告分離課税導入の有効性を示した』とも報告されています。
JCBAが公開した「2022年度税制改正に関する要望書」の中には”JCBAによるアンケート調査”の項目が含まれており、『回答者の6割以上は分離課税が導入された場合に暗号資産投資額を増やす意向を持っていた。暗号資産の税率が高いことを理由に海外移住を検討している回答者も約半数に上った』などとして『個人投資家の暗号資産税制に対する懸案が浮き彫りになった』と説明が行われています。
JCBAの税制検討部会は2021年6月、暗号資産投資を行う個人投資家に対して暗号資産税制に関 するアンケート調査を実施した。アンケート調査によれば、回答者の84%は2020年度の確定申告を行っていなかったが、その大半の理由が暗号資産取引の所得が20万円以下であること、または利益がそもそも未確定であることであった。これら回答者の6割以上は、分離課税が導入された場合には暗号資産への投資額を増やす意向を持っていた。また、暗号資産にかかる所得に 対する日本の税率が高いことに起因して海外移住を検討しているとした回答者も約半数に上り、個人投資家の暗号資産税制に対する懸案が浮き彫りとなった。
JCBAは「分離課税・損失繰越が導入されれば、投資家の利益確定による税収増加・税務申告増加による税の捕捉性向上などの効果が期待できる」と主張しており、今回の発表に合わせて公開された「暗号資産の税務申告と税制改正要望に関するアンケート調査結果に基づく分析結果」の資料の中では『分離課税が導入されれば暗号資産の税収が最大52%増加する可能性がある』との予想も示しています。