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日本銀行:中央銀行デジタル通貨(CBDC)のパイロット実験「2023年4月」から開始


日本銀行は2023年2月17日に、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の概念実証を2023年3月に終了して、予定通り2023年4月から「パイロット実験」を開始することを発表しました。パイロット実験の目的としては「現在行っている概念実証では検証しきれない技術的な実現可能性を検証すること」や「技術・運用の両方で民間事業者の技術や知見を活用しながら、社会的に実装することになった場合の設計に活かしていくこと」などが挙げられています。

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概念実証からパイロット実験のフェーズに移行

日本銀行は2023年2月17日に、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の概念実証を2023年3月に終了して、予定通り2023年4月から「パイロット実験」を開始することを発表しました。

日銀は2020年10月に公表された「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」に沿って、2021年4月から中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する実証実験を進めており、2021年4月にはCBDCの中核をなす発行・送金・還収などの基本機能に関する検証を行う「概念実証フェーズ1」を開始、2022年4月にはCBDCに様々な周辺機能を付加して実現可能性や課題を検証する「概念実証フェーズ2」が開始されていました。

CBDCに関する基本的なアイデアが技術的に実現可能かどうかを確認するプロセスである「概念実証」は当初の予定通り2023年3月に終了するとのことで、2023年4月には「パイロット実験」のフェーズへと移行することになると報告されています。

パイロット実験では、中央システムから仲介機関ネットワーク、仲介機関システム、エンドポイントデバイスまでを一体的に実装するものとして実験用システムを構築し、エンドツーエンドでの処理フローの確認や、外部システムとの接続に向けた課題・対応策の検討などを行っていくとのことで、店舗や消費者が関与する実取引を行うことは現時点では想定していないとも説明されています。

(画像:日本銀行)

また、CBDCの制度設計を適切に進める観点から「CBDCフォーラム」を設置し、リテール決済に関わる民間事業者も含めて幅広いテーマについて 議論・検討を行っていくとも説明されています。CBDCフォーラム参加者の選定方法などについては、3月中に説明会が実施される予定となっています。

(画像:日本銀行)

パイロット実験の目的について

日本銀行理事の内田 眞一氏は「中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会(第5回)」における開会挨拶で、パイロット実験の目的について次のように説明しています。

パイロット実験の目的は、第1に「現在行っている概念実証では検証しきれない技術的な実現可能性を検証すること」、第2に「技術・運用の両面にわたって、民間事業者の技術や知見を活用させて頂きながら、社会的に実装することになった場合の設計に活かしていくこと」です。

まず、1点目については、CBDCシステムでは、中央銀行からユーザーまでを仲介機関や仲介機関ネットワークなどのシステムを通じて接続する必要があります。これまでの概念実証の構築対象は基本的に中央システムだけだったが、パイロット実験では、中央システムから、仲介機関ネットワーク、仲介機関システム、エンドポイントデバイスまでを一体的に実装するものとして実験用システムを構築し、エンドツーエンドでの処理フローの確認や、外部システムとの接続に向けた課題や対応策の整理を行っていく予定です。

次に、2点目については、外部システムとの接続に向けた課題や対応策のほか、代替的なデータモデルやオフライン決済の仕組み、追加サービスを提供するうえでのCBDCシステムのあり方、ユーザーとの接点において必要となり得る課題や技術・機能などについて、民間事業者の皆様とともに検討を行い、より良い設計につなげていきたいと考えています。そのために、「CBDCフォーラム」を設置し、リテール決済やそれに関わる技術に携わっておられる民間事業者の中から参加者を募集します。1点目と2点目は、密接不可分のものとして運営し、両者の検討成果は、それぞれの作業にフィードバックすることを想定しています。

パイロット実験の進め方について

また、パイロット実験の進め方については次のように説明されています。

パイロット実験の進め方については、目的を絞り込んだ実験から始め、段階的、計画的に拡張していくことを考えており、現時点で店舗や消費者が関与する実取引を行うことは想定していません。いずれにせよ、パイロット実験に関する内容や進捗状況などについては、透明性の高い形で情報発信を行っていきます。

こうした段階的な枠組みによる検討と透明性の高い民間部門との対話は、将来CBDCを発行する場合、それが社会において受け入れられるために必要なプロセスです。他の先進国においても同様のアプローチが試みられています。決済手段は、誰かがうまい仕組みを設計して、リリースすれば普及するというものではありません。

現在、現金の流通にいかに多くの方々が関わっているかを考えれば容易に想像がつくように、CBDCが広く使われるためには、ユーザーまでの各ステークホルダーにおいて、様々な仕組みの変更と準備が必要です。そのことは、金融機関や企業のビジネス、そしてユーザーの生活に影響を与えますので、みんなが納得するような制度設計を行い、それに合わせて準備していくプロセスが必要だということです。これから始まるパイロット実験は、その第一歩です。

皆様とともに進めてきたCBDCと決済システムの将来像を巡る議論も、新しい段階に入ります。決済の主要な担い手である皆様の経験と知見を拝借しながら、社会とユーザーに受け入れられるCBDCを設計していきたいと思っております。どうかよろしく、お付き合い下さい。

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