グローバルに流通可能な国産ステーブルコイン発行へ
三菱UFJ信託銀行は2023年9月11日に、グローバル市場で流通可能な「国産ステーブルコイン」の発行に向けた金融機関横断の共同検討を開始したことを発表しました。
今回の取り組みは「金融機関の連携を通じて国産のステーブルコインを発行すること」を目標としたもので、各種知見の共有と技術検証・具体的な実務構築を加速させ、速やかに社会実装することを目的としていると説明されています。
具体的には「概念実証・商用化Phase1・商用化Phase2」という3段階に分けて取り組みが進められる予定で、共同検討に参加する金融機関は順次受付、国産ステーブルコインは2024年6月〜8月頃の発行を目指していると報告されています。
なお、国産ステーブルコインの開発では、三菱UFJ信託銀行が開発を主導する日本法に準拠したステーブルコイン発行・管理基盤「Progmat Coin(プログマコイン)」が活用されます。
プログマコインの概要はこちら
国産ステーブルコイン発行の全体像
日本の法律ではステーブルコイン(電子決済手段)の種類として「銀行預金型・資金移動型・信託型」という3類型が想定されていますが、今回発表された国産ステーブルコインでは、最も柔軟な設計が可能な「信託型」での組成が前提とされています。
国産ステーブルコインは、希望する複数の金融機関などの依頼を受けて「三菱UFJ信託銀行」や「他の信託銀行との共同受託」によって発行される仕組みで、具体的な発行スキームの全体像については以下のように説明されています。
【電子決済手段類型】
3号電子決済手段(特定信託受益権)
【発行依頼者(委託者)】
希望する複数の金融機関等
【発行者(受託者)】
三菱UFJ信託銀行、及び他の業務提供可能な信託銀行との共同受託等
【裏付資産(預金)運用先】
希望する複数の金融機関等
【裏付通貨種類】
円貨建てステーブルコイン、及び外貨建てステーブルコイン
【ステーブルコイン名称】
裏付通貨種類ごとに今後決定
【取扱仲介者】
電子決済手段等取引業者全般(各銀行が自ら取り扱う場合を含む)
【ステーブルコイン基盤開発】
三菱UFJ信託銀行(株式会社Progmat設立後は同社が推進)
共同検討のステップと概要
国産ステーブルコインの共同検討は「概念実証・商用化Phase1・商用化Phase2」という3ステップで進められる予定で、各ステップの詳細については以下のように報告されています。
概念実証
【目的・実現目標】
- 各銀行の想定ユースケースにおける有用性検証(プログラマビリティ、移転範囲設計等)
- 各銀行におけるパブリック(パーミッションレス)ブロックチェーンの特性把握
【発行対象チェーン】
イーサリアム(Ethereum)
【想定ユースケース】
銀行毎に異なるケースを設定(以下は具体例)
- 法人間決済(請求書電子受領を起点とした資金決済自動完結等)
- 貿易決済(貿易書類と連携した資金決済自動完結等)
- NFT取引(NFTの発行/売買に伴う資金決済のオンチェーン完結化等)
- メタバース内決済(メタバース上のコンテンツ売買に伴う資金決済のデジタル完結化等)
【裏付資産紐付け】
紐付けない(電子決済手段に該当しない設計にて早期実施)
商用化Phase1(領域限定)
【目的・実現目標】
国産ステーブルコインの速やかな発行
【発行対象チェーン】
Ethereum
【想定ユースケース】
概念実証結果を踏まえ、主な利用範囲を想定
【裏付資産紐付け】
円貨及び外貨と紐付ける(信託型ステーブルコインの実務具備)
商用化Phase2(領域解放)
【目的・実現目標】
国産ステーブルコインの利便性最大化
【発行対象チェーン】
複数のブロックチェーン(マルチチェーン)
【想定ユースケース】
指定しない
【裏付資産紐付け】
円貨及び外貨と紐付ける(同上)
今後の予定について
国産ステーブルコインは、発行依頼者となる金融期間を制限するものではないため、今後は共同検討に賛同する金融機関からの参画申込を随時受け付けると説明されています。
また、これにあわせて「取扱仲介者」として国産ステーブルコインの取り扱いを希望する事業者からの参画申込もデジタルアセット共創コンソーシアム(DCC)事務局で随時受付が行われます。
なお、仲介者が日本国内でステーブルコインを業として取り扱うためには、改正資金決済法で新設された「電子決済手段等取引業」のライセンスを取得する必要があります。
法律施行から1号業者が新たにライセンスを取得するまでには、概ね1年がかかる可能性があるため、「商用化Phase1」に関しては”2024年前半の実現”を目指しているとのことです。
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(公式発表)