JPYCをデジタルカーボンクレジット決済に活用|三菱UFJ信託銀行など5社が共同検討開始

by BITTIMES

信託型JPYCをカーボンクレジット決済に活用

日本円ステーブルコイン「JPYC」を展開しているJPYC株式会社は2024年5月21日に、デジタルカーボンクレジット決済におけるJPYC(信託型)の活用に向けて「KlimaDAO JAPAN・JPYC・三菱UFJ信託銀行・Progmat・オプテージ」の5社で共同検討を開始したことを発表しました。

JPYCは、1JPYCの価格が1円で安定して推移するように設計された日本円ステーブルコインであり、現在は前払式支払手段として発行・運営がなされていますが、今回の取り組みではProgmat Coin(プログマコイン)の基盤を活用して発行される「信託型のJPYC」を活用すると報告されています。

日本の法律では、電子決済手段扱いのステーブルコイン(SC)として「銀行預金型・資金移動型・信託型」という3種類のコインを想定してルール作りがなされていますが、JPYCは2023年11月に「三菱UFJ信託銀行やProgmatと提携して、プログマコイン基盤のJPYC(信託型)を発行する計画」を発表しています。

「前払式支払手段扱いのJPYC」では原則として金銭による払い戻しが禁止されているものの、「信託型のJPYC」では金銭による払い戻しが可能で、送金金額の制約がない・本人確認(KYC)が完了していないアドレスにも送金できるなどの特徴も有しています。

カーボンクレジット決済におけるJPYC活用の内容

カーボンクレジットとは、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出削減量を企業間や国家間で売買できる仕組みのことであり、植林や省エネ機器の導入などによって生まれた温室効果ガスの削減・吸収量をクレジット(排出権)として発行することによって取引できる環境が構築されています。

※日本では温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証して購入・売却できるようにする「J-クレジット制度」が運用されています。

日本では、2023年10月に東京証券取引所がJ-クレジットの売買市場を開設しているものの、現時点の売買金額は限定的で、企業や個人が自主的に購入するカーボンクレジットであるボランタリークレジット(VC)のマーケットプレイスも流動性がそれほど高くないのが現状となっています。

今回の取り組みは、そのような流動性の問題を解決しつつ、取引環境を改善することを目指したもので、具体的な計画や取り組みの内容については以下のように報告されています。

共同検討における各社の役割

今回の共同検討では、 プログマコイン基盤の開発を主導するProgmat社、信託型SCスキームにおける受託者である三菱UFJ信託銀行、信託型JPYCの発行依頼者兼仲介者であるJPYC社、KlimaDAO JAPAN、オプテージの5社が連携し、「マーケットプレイス・フェーズ 2」として、国産ステーブルコインを活用したDカーボン取引市場の実現に取り組む。

共同検討に参加する各社の役割は以下の通り。

参加企業役割
Progmat, Inc.「Progmat Coin」基盤の開発
三菱UFJ信託銀行株式会社信託型SCスキームにおける信託受託者(SC発行者)
JPYC株式会社JPYC(信託型)の信託委託者(SC発行依頼者)及び仲介者
KlimaDAO JAPAN株式会社SCを活用したDカーボンマーケットプレイスの開発
株式会社オプテージ本ユースケースに最適化した企業向けインフラの開発

「KlimaDAO JAPAN MARKET」の開設

KlimaDAO JAPANは、既にグローバルで展開されているデジタルカーボンクレジット(Dカーボン)のマーケットプレイス「Carbonmark」の基盤を利用して、J-クレジットや日本発のVCに対応したDカーボンのマーケットプレイス「KlimaDAO JAPAN MARKET」を新たに開設し、段階的にグローバルベースの流動性を提供することを計画している。

Dカーボンは、KlimaDAO JAPAN が企業・自治体から買い取ったJ-クレジット等に対する引渡請求権を、グローバルにアクセス可能なパーミッションレスブロックチェーン上のトークンとして発行するもの。

オプテージはこのブロックチェーンにアクセスしてDカーボンを管理するために必要な企業向けインフラを提供し、銀行送金などでの資金決済とすることで企業が取引参加しやすい環境で市場開設する。

マーケットプレイス・フェーズ 1(画像:JPYC)マーケットプレイス・フェーズ 1(画像:JPYC)

JPYC(信託型)での資金決済に対応

「マーケットプレイス・フェーズ 2」では、JPYC(信託型)での資金決済に対応して、オプテージが提供する企業向けインフラでDカーボンに加えてステーブルコインも取り扱えるようにする。

これによって、透明性・信頼性が高いパーミッションレスブロックチェーン上で完結した当事者間取引にいつでも好きな時に参加できるようになる。

マーケットプレイス・フェーズ 2(画像:JPYC)マーケットプレイス・フェーズ 2(画像:JPYC)

日本発Dカーボンの海外販売

さらに、クロスボーダーでDカーボンやステーブルコインを移転できるパーミッションレスブロックチェーンの特徴を活かし、KlimaDAOのグローバルマーケットプレイス「Carbonmark」と「KlimaDAO JAPANMARKET」が連携することで、日本発のDカーボンを海外販売することなども想定している。

また、カーボンクレジットに加え、非化石証書を含むその他の環境価値についても取引可能な体制の構築に取り組んでいく。

マーケットプレイス・フェーズ 3(画像:JPYC)マーケットプレイス・フェーズ 3(画像:JPYC)

今後の予定

「マーケットプレイス・フェーズ 1」は、2024年4月からすでに実証を開始している。

「マーケットプレイス・フェーズ 2」は、JPYC社が電子決済手段等取引業の登録を完了し、各社で提供準備が整うことを前提として、2024年内に提供することを目標としている。

それ以降は「マーケットプレイス・フェーズ 3」としての海外販売などや、マーケットプレイスを自社で展開したい国内金融機関や事業会社向けの支援を視野に入れている。

>>日本国内の仮想通貨ニュースはこちら

JPYC発表