デバイス内で完結する分散型AI「QVCA」
米ドル連動ステーブルコインのUSDTを発行しているTether(テザー)社は2025年5月14日、中央サーバーを使用せず、ユーザーのデバイス上で独立して動作する分散型AI「QVCA」を発表しました。
公式発表によると、QVCAは個人情報を外部に送信せず、ユーザーのプライバシーを守りながらAIを利用でき、ビットコイン(BTC)やテザー(USDT)などの仮想通貨による決済にも対応しています。
QVCAでの取引は人間が操作することなく、AIが自動的に処理する仕組みとなっており、テザー社はこの技術の実用化に向けた環境整備を進めていることも報告されています。
なお、QVCAのリリースは2025年第3四半期(7〜9月)に予定されています。
Tether Announces QVAC, Its Upcoming Development Platform for Infinite and Ubiquitous Intelligence – Deploying and Evolving AI Agents on User Devices, Not Big Tech Data Centers
Follow👉 @QVAC_Tetherhttps://t.co/mF8Zs7poiP— Tether (@Tether_to) May 14, 2025
テザー、次世代開発プラットフォーム「QVAC」を発表
大手テック企業のデータセンターではなく、ユーザーのデバイス上でAIエージェントを展開・進化させる、無限かつ遍在するインテリジェンスを実現へ
AIの脅威で「プライバシー保護」が急務に
Web3の理念を取り入れた次世代AI技術
テザー社はQVCAについて、ブロックチェーン技術を基盤とするWeb3の「ユーザー主導」の理念を取り入れた新しいタイプのAIであると説明しています。
多数のAIプログラムやアプリケーションをユーザー自身のデバイス上で処理する仕組みであることも明かされており、この分散型システムの最大の利点として、特定のサーバーが攻撃を受けた場合でもシステム全体への影響を最小限に抑えられる点を挙げています。
テザー社CEOのパオロ・アルドイノ氏は公式発表の中で「QVCAは、スマートフォンや脳波を読み取って操作する脳コンピュータインターフェース(BCI)など、幅広いデバイス上でクラウドサーバーを使わずにAIを実行できるよう設計している」と述べています。
同社はGoogleやOpen AIなど従来の中央集権的なAI企業が個人データを大量に収集している現状に懸念を示しており、その上で「ユーザーの手にデータの主導権を取り戻す」ことを目標に掲げています。
米国を「AIと仮想通貨の首都に」
分散型AIの可能性と課題
仮想通貨決済に対応した分散型AI「QVCA」の実用化が進めば、AIがユーザーのデバイス上で直接処理されるようになるため、ユーザー自身がデータ管理の主権と自律性を取り戻せると期待されています。
テザー社がAIの中央集権的構造からの脱却を目指す今回の取り組みは、GoogleやMicrosoftが主導する従来の集中型AIインフラのあり方を根本から見直すきっかけになる可能性があります。
一方で、QVCAのような自律型AIに対しては懸念の声も上がっています。
AI倫理の専門家からは「AIが人間の指示やコントロールを受けずに、自律的に行動してしまうリスク」が懸念されており、今後の開発・実装段階では適切な監視体制と責任の所在を明確化することが重要な課題になるとみられています。
仮想通貨とAI技術の融合が進む中、QVCAのような分散型AIシステムが社会にどのように受け入れられていくのか、仮想通貨業界やAI関連企業から大きな注目を集めています。
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Source:テザー社公式発表
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:AIによる生成画像