ドル連動型ステーブルコインが市場の99%占有、非USD建てはなぜ広がらないのか

ドル連動型ステーブルコインが市場の99%占有、非USD建てはなぜ広がらないのか(Why USD-pegged stablecoins dominate 99% of the market while non-USD ones struggle)
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ドル連動型の支配が続くステーブルコイン市場

ブロックチェーン分析プラットフォームのArtemis(アルテミス)は、ここ数年の非USD建てステーブルコインの台頭が、米ドル連動型の支配的地位に影響を与えていないと指摘しました。

Artemisによれば、過去5年間でユーロや円など主要通貨に連動するステーブルコインが相次いで発行されたものの、市場の約99%を依然として米ドル連動型が占めており、非USD建ては十分な存在感を示せていないといいます。

こうした市場構造を踏まえ、Artemisは分析の中で「誰も非USDステーブルコインを望んでいない」と指摘し、現在の需要がほぼドルに集中している状況を端的に示しました。

データでもこの傾向が裏付けられており、ユーロを含むドル以外の法定通貨に連動するステーブルコイン全体の時価総額はごくわずかで、米ドル連動型の影響力が依然として突出していることが明らかになっています。

誰も非ドル建てステーブルコインを求めていない

5年もの間、何十もの新しい発行者が現れ主要な通貨はすべて試されたが、ドルの地位を脅かすことはできなかった。

非USDは普及しない?ドル支配続くステーブルコイン市場構造

米ドル連動型が市場の99%を占有

Artemisによると、これまでに各国の法定通貨に連動するステーブルコインが相次いで登場したものの、米ドル連動型の支配的地位を崩すには至っていません。

現時点で流通するステーブルコインの総額は約3,000億ドル(約44兆円)にも上りますが、その大半を占めるのは米ドルとペッグ(連動)したコインであり、その他の通貨建てステーブルコインは全体の約1%程度にとどまっています。

Artemisデータの画像画像:Artemis公式X投稿より引用

米ドル連動型の代表格であるテザー(USDT)とUSDコイン(USDC)は市場全体の供給量を牽引しており、その他の通貨建てステーブルコインは依然として小規模な市場の域を出ない状況です。

非USDステーブルコインが普及しない構造的な問題

非USDステーブルコインが伸び悩む背景には、市場データからグローバルなユーザー需要が依然としてドルに集中していることが示されています。

新興国や経済不安定な地域では、自国通貨よりも価値が安定した米ドルへの信頼が根強く、法定通貨の信用不安を回避する手段としてドル連動型ステーブルコインが選好されています。

実際、英スタンダードチャータード銀行の報告では、経済危機に直面する新興国で預金の一部が今後数年間でドル建てステーブルコインに移行し、最大で1兆ドル(約156兆円)規模の資金流出が起こり得ると試算されています。

こうした動きは、「デジタルドル」とも言えるステーブルコインが世界的な米ドル需要を一段と高め、結果的にドル覇権を強固にする一因となっていると指摘されています。

ドル依存の中で光るユーロ建ての躍進

こうしたドル依存の状況下でも、ユーロ建てステーブルコインは着実な成長を見せています。

特にCircle(サークル)社のユーロ建てステーブルコイン「EURC」は、欧州連合の新たな仮想通貨規制であるMiCA法への完全準拠を特徴としており、この信頼性が欧州圏の機関投資家や取引所での採用を後押ししているとみられています。

同社の欧州戦略ディレクターであるパトリック・ハンセン氏は「EURCを含むユーロ建てステーブルコインが依然市場シェアは小さいものの、他のオンチェーン通貨と比べて明確な成長シグナルを示している」との見解を示しました。

加えて、同氏は「米ドル一強の市場に一石を投じる存在になりつつある」との見方を示しています。

(前略)

ユーロの世界のステーブルコイン市場に占めるシェアは依然として小さいものの、ユーロ建てステーブルコイン、特にEURCは、他のオンチェーン通貨と比べて明確な成長の兆しを示していると言えます。

フィンテックと中央銀行が注目するステーブルコイン

クラーナやPayPalが展開するドル建てステーブルコイン

直近では、大手フィンテック企業が相次いでステーブルコイン事業に参入しています。

スウェーデンの決済大手Klarna(クラーナ)社は11月25日、米ドルに連動した独自ステーブルコイン「KlarnaUSD」を発行予定であると発表しました。

米国市場で多くのユーザーを抱える同社は、新トークンを日常決済や国際送金の高速化・低コスト化に活用する方針です。

米決済大手PayPalは2023年8月にドル連動型ステーブルコイン「PYUSD」の提供を発表し、同業のStripe(ストライプ)社も提携企業を通じて独自のステーブルコイン発行に乗り出すなど、フィンテック業界ではドル建てステーブルコインへの関心が高まっています。

ステーブルコインが後押しするドル覇権

各国中央銀行や金融当局も、ステーブルコイン市場の動向を注視しています。

FRB(米連邦準備理事会)のスティーブン・ミラン理事は2025年11月上旬に「ステーブルコインの普及によって世界中のより多くの人々がドル建て資産を保有・決済できるようになり、結果としてドルの支配力が高まっている」と述べました。

同理事は、ステーブルコインが米国債などドル建て資産への新たな需要を生み出し、米政府の調達コスト低下にも寄与していると語っています。

規制強化と企業参入が進む中でも、ステーブルコイン市場でのドルの優位は変わらず、デジタル経済におけるドル覇権の存在感が一層高まっています。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=156.20 円)

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Source:Artemis公式X
サムネイル:AIによる生成画像

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BITTIMES 編集長のアバター BITTIMES 編集長 仮想通貨ライター

2016年から仮想通貨に関するニュース記事の執筆を開始し、現在に至るまで様々なWeb3関連の記事を執筆。
これまでにビットコイン、イーサリアム、DeFi、NFTなど、数百本以上の記事を執筆し、国内外の仮想通貨ニュースの動向を追い続けている。

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