シンガポール、仮想通貨認知度94%で過去最高|所有率低下も投資意欲は継続

シンガポール、仮想通貨認知度94%で過去最高|所有率低下も投資意欲は継続(Singapore hits record 94% crypto awareness despite falling ownership, with sustained investment interest)
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仮想通貨認知度は高まるも所有率は低下

仮想通貨取引所Independent Reserve(インディペンデント・リザーブ)が2025年5月22日、シンガポールにおける仮想通貨の認知度が94%に達し、過去最高を更新したと発表しました。

この年次調査は2025年2月に18歳以上のシンガポール居住者1,500人を対象に実施されたもので、5回目のIRCI報告となります。

また、同取引所が公開したレポートによると、仮想通貨(暗号資産)の認知度は高まっているものの、実際に保有している人の割合は29%にとどまり、前年の40%から大幅に減少しています。

所有率減少の主な背景には、トランプ氏の大統領再選など政治環境の変化に伴う市場の過熱感から、一部の投資家が利益確定のため売却したことが挙げられています。

ただ、これらの投資家は仮想通貨市場から完全に撤退したわけではなく、資産の配分を見直している段階にあると分析されています。

所有率低下の背景とシンガポール投資家の狙い

市場高騰後の戦略的リバランスの動き

Independent Reserve社は、2024年12月にビットコイン価格が10万ドルを突破し市場が大きく高騰した際に、多くの投資家は買い増しより利益確定やポートフォリオの見直しを優先したと指摘しています。

また、調査回答者の約半数(49%)が過去1年で保有通貨の一部または全部を売却しており、そのうち67%は利益を確定させたと報告されています。

こうした戦略的な利益確定の広がりが保有率低下の一因となりましたが、同社は「これは仮想通貨からの撤退ではなく資産配分の再調整(リバランス)」と指摘しています。

「質を重視」シンガポール投資家の新戦略

強気相場を経たシンガポールの投資家は「質重視(flight-to-quality)」とも呼べる動きを見せており、全体の79%が複数種類の仮想通貨を保有している一方で、65%は銘柄数を2~5種に絞っていることも報告されています。

これは、以前のような幅広い銘柄に投機的に投資するスタイルから、自信を持って長期保有できる主要銘柄に集中して投資する戦略へと変化していることを示しています。

依然として保有者が多い銘柄はビットコイン(BTC)イーサリアム(ETH)で、それぞれ仮想通貨投資家の68%、48%が保有しています。

Independent Reserveシンガポールのラスアンカ・ペレラCEOは「今年のデータは仮想通貨からの退却ではなく戦略の再構築を示している。市場サイクルを経験した投資家たちは、少数の強固な銘柄に資金を集中させる思慮深いアプローチに移行している」とコメントしています。

新規参入を阻む要因と課題

一方で、新規参入を阻む要因も浮き彫りになっています。

投資をためらう理由として最も多かったのは「価格変動リスクの高さ」で53%、続いて「消費者保護制度や規制の不足」が32%でした。

認知度の高まりに対し実際の保有率が追いついていない背景には、資産の安全性や規制面での不安が依然根強いことが伺えます。

規制強化が進むシンガポール仮想通貨市場の現在

規制強化の背景とMASの取り組み

シンガポール当局は近年、仮想通貨投資に対するリスク警告を発しつつも健全な市場育成に向けた規制整備を加速させています。

2022年に発生した仮想通貨ヘッジファンド「スリーアローズ・キャピタル」の破綻やFTXの経営破綻など、一連の事件を受けて、当局は個人投資家保護を目的とした規制強化を進めています。

シンガポール金融管理局(MAS)は2024年に仮想通貨サービス事業者に対し主要決済サービス事業者ライセンスを13件交付しており、これは前年(2023年)の2倍以上の高いペースとなりました。

さらにMASは2023年8月に単一通貨ステーブルコインの価値安定を確保する規制枠組みを世界に先駆けて発表し、資金の分別管理の徹底など消費者保護策も導入しています。

こうした取り組みにより、シンガポールは仮想通貨ハブとしてアジア地域で優位な地位を確立しており、米大手取引所Coinbase(コインベース)もシンガポールを「極めて重要な市場」と位置づけています。

規制整備で成熟する投資環境、シンガポール投資家の展望

市場関係者からは、今回の保有率低下は投資熱の冷え込みではなく、投資家の成熟を示すものだとの見方も出ています。

調査では現在の保有者の53%が「今後12カ月以内に仮想通貨の保有量を増やす予定」と回答し、非保有者の17%も「新たに市場参入を検討している」とされています。

また、仮想通貨投資家の57%は「将来的に仮想通貨がビジネスや日常生活に広く浸透する」と予測していることも報告されています。

なお、調査では、投資家が仮想通貨市場に安心して参加するために求める重要なポイントとして、明確な規制の整備が58%、業界の安全な管理運営が47%、価格の安定が44%、教育の充実が42%という結果も示されました。

長期的な見通しでは強気な姿勢が示されており、Independent Reserveの報告書でも「仮想通貨は伝統資産を補完しうる独自の資産」として位置付けられています。

>>最新の仮想通貨ニュースはこちら

Source:Independent Reserveレポート

サムネイル:AIによる生成画像

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BITTIMES 編集長のアバター BITTIMES 編集長 仮想通貨ライター

2016年から仮想通貨に関するニュース記事の執筆を開始し、現在に至るまで様々なWeb3関連の記事を執筆。
これまでにビットコイン、イーサリアム、DeFi、NFTなど、数百本以上の記事を執筆し、国内外の仮想通貨ニュースの動向を追い続けている。

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