総額620億円のイーサリアム財務戦略を発表
米ナスダック上場のスポーツゲーミング関連企業シャープリンク・ゲーミング(SharpLink Gaming)は2025年5月28日、イーサリアム(ETH)を中核とする新たな財務戦略を発表しました。
この戦略に基づき、同社は私募増資を通じて約6,910万株を1株6.15ドルで発行し、総額約4億2,500万ドル(約620億円)を調達すると明らかにしています。
同社の発表によると、調達資金の大部分はイーサリアムの購入に充てられ、今後、ETHがシャープリンク社の主要な財務準備資産として運用される計画です。
今回の発表を受けてシャープリンク社の株価は急騰し、前日終値の7ドル未満から一時33ドル超まで400%以上の上昇を記録しています。
また、今回の資金調達に伴い、イーサリアム共同創設者でConsenSys(コンセンシス)の創設者でもあるジョセフ・ルービン氏が同社の取締役会長に就任予定であることも報告されています。
「ビットコイン・ドージコイン」財務戦略
シャープリンク、イーサリアム活用で財務改革へ
仮想通貨VCが大規模出資を実施
シャープリンク社の正式発表によると、今回の私募増資は約6,910万株を1株6.15ドルで発行し(経営陣向け一部株式は6.72ドル)、総額4億2,500万ドルの資金調達を見込む内容です。
出資者には仮想通貨業界をリードするConsenSysを筆頭に、Pantera Capital(パンテラ・キャピタル)、Galaxy Digital(ギャラクシーデジタル)、Electric Capital(エレクトリックキャピタル)、Arrington Capital(アーリントンキャピタル)など、有力なベンチャーキャピタルやインフラ企業が含まれています。
増資の単独アレンジャー(取扱証券会社)にはA.G.P./Alliance Global Partnersが就いており、取引の完了は5月29日前後に予定されています。
調達資金はイーサリアムの購入に充てられ、同社の主要な財務準備資産(Treasury Reserve Asset)となり、当面は事業運営資金を確保しながら、余剰資金で段階的にETHを購入していく計画です。
ConsenSys創業者ルービン氏が経営に参画
シャープリンク社CEOのロブ・フィシアン氏は公式発表で次のようにコメントしています。
これは当社にとって極めて重要なマイルストーンであり、コア事業を超えた成長を示すものです。
増資完了後はConsenSysと協働し、ルービン氏を取締役会に迎えられることを楽しみにしています。
また、取締役会長就任予定のジョセフ・ルービン氏も次のようにコメントしています。
今回の取引完了後、ConsenSysとしてシャープリンク社と提携しイーサリアム財務戦略の模索・展開に取り組むこと、さらに戦略アドバイザーとして同社のコア事業に関与できることを嬉しく思います。
イーサリアムコミュニティにとって刺激的な時期であり、ロブ氏らと協働してイーサリアムの持つ機会を株式市場にもたらすことを楽しみにしています。
ルービン氏の参加により、伝統的な株式市場とイーサリアムエコシステムの橋渡し役を果たす戦略が進展すると期待されています。
企業財務で注目されるアルトコイン活用
ビットコイン中心からアルトコイン分散へ
シャープリンク社のように仮想通貨を財務準備資産に組み入れる動きは、近年ビットコイン(BTC)を中心に広がりを見せてきました。
代表例である米ストラテジー(旧マイクロストラテジー)社は現在世界最多の約58万BTCを保有し、2020年以降ビットコイン買い増し戦略を継続中です。
一方で主要アルトコインを財務戦略に取り入れる企業も増加傾向にあります。
4月22日には米ナスダック上場企業Upexi社が約1億ドル(約146億円)の第三者増資を実施し、そのうち約9,470万ドルを用いて仮想通貨ソラナ(SOL)の戦略的準備金を構築すると発表しました。
同社株価(UPXI)は発表直後に約2.30ドルから16.79ドルへと一時632%高騰し、市場の注目を集めてました。
ソラナ購入を柱とした財務戦略
複数銘柄の組み入れが進む企業事例
カナダのブロックチェーン企業ネプチューン・デジタル・アセッツ(Neptune Digital Assets)社は2024年末からのビットコイン準備戦略に加え、2025年2月にドージコイン(DOGE)100万枚を購入して資産を分散させました。
同社CEOは「これまで主にBTCを準備金としてきたが、今回のDOGE取得によりビットコイン以外の仮想通貨で準備金戦略を取る道を示した」と述べており、単一銘柄に依存しない財務戦略の利点を強調しています。
こうしたアルトコインを活用した財務戦略のトレンドは、他の上場企業や機関にも広がっています。
米大手仮想通貨取引所Coinbase(コインベース)社は2025年1Q決算で「1億5,000万ドル相当の仮想通貨を追加購入し、長期投資ポートフォリオを13億ドル規模まで拡大した」と明らかにしました。
同社CFOのアレシア・ハース氏は、自社の仮想通貨投資について「特定銘柄に偏らない分散投資」を強調しており、利益の一部をビットコインだけでなくイーサリアムなど複数の仮想通貨に再投資していることを示唆しています。
伝統産業にも広がる仮想通貨活用
仮想通貨を企業財務に組み入れる動きはテック業界全体にも広がっています。
電気自動車大手テスラ社は2021年に15億ドル相当のビットコインを購入し話題を呼びましたが、その後2022年に約75%を売却した現在も約1万BTC前後をバランスシート上に保有しています。
テスラはビットコイン以外にも、自社製品の決済手段としてドージコイン(DOGE)を導入するなど、アルトコインの活用も進めています。
さらに米ゲーム小売大手GameStop(ゲームストップ)社は5月28日、初の仮想通貨投資として4,710 BTC(当時約1,400億円相当)を購入完了したと発表しています。
このように企業による仮想通貨の財務資産化はビットコインからアルトコインへと対象が広がりつつあるのが現状です。
企業・政府のビットコイン財務戦略拡大へ
シャープリンクが示す新時代の企業財務モデル
今般のシャープリンク社によるETH財務戦略は、ビットコイン偏重だった企業財務の世界に一石を投じるものとの見方があります。
その戦略的意図は「株式市場にイーサリアムという新たな投資機会を提供する」ことにあり、ジョセフ・ルービン氏の参画も含めて伝統金融と仮想通貨コミュニティの橋渡しとなることが期待されています。
イーサリアムやソラナ、ドージコインなど主要アルトコインを活用した企業財務戦略の事例は今後も増えていくと見られ、ストラテジー社に倣った各社の動向が注目されます。
業界内では「イーサリアム財務戦略の時代が始まった」という意見もあり、2025年後半以降、企業による仮想通貨の導入は新たな局面を迎える可能性があります。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=145.98円)
仮想通貨財務戦略に関する記事はこちら
Source:SharpLink Gaming公式発表
サムネイル:AIによる生成画像




























