この記事の要点
- 米上場酒造企業がBTC・DOGEを財務資産として正式採用
- オンライン販売でBTC・DOGE決済も受け入れ開始へ
- 仮想通貨導入で新規顧客獲得・財務柔軟性向上を図る
- ナスダック企業で仮想通貨保有の動きが拡大中
米上場酒造企業、BTC・DOGEを財務資産に採用
米ナスダック上場の酒類メーカーであるヘリテージ・ディスティリングは2025年5月15日、ビットコイン(BTC)・ドージコイン(DOGE)を活用した仮想通貨財務準備金ポリシーを正式に採用したと発表しました。
ヘリテージ社は2024年にナスダック市場に上場したクラフトスピリッツ(少量生産の高品質蒸留酒)業界をリードする新興企業で、ウイスキーやウォッカなど各種スピリッツの製造・販売を手掛けています。
同社の発表によると、この新たな方針により、同社は自社のオンライン販売においてビットコインとドージコインによる決済を受け入れ、これら仮想通貨を企業の資産(準備金)として保有できるようになります。
この取り組みは事業の売上拡大と財務の多様化戦略の一環として取締役会で承認され、クラフト蒸留酒分野においてビットコインを決済と財務の両面で正式に導入する初の事例となりました。
「ミームを超えて主流の資産に」
仮想通貨「BTC・DOGE」財務戦略導入の狙い
ビットコイン・ドージコイン市場拡大が後押し
ヘリテージ社が今回ビットコインとドージコインの受け入れ・保有に踏み切った背景には、両仮想通貨の市場規模拡大とユーザー基盤の広がりがあります。
同社は「ビットコインは長期保有の価値がある戦略的資産であり、ドージコインは熱狂的なファン層に支えられた決済に適したデジタルコイン」と位置づけています。
社内資料によると米国では約6,500万~8,600万人がビットコインを保有し、さらに推定8,300万のウォレットがドージコインを保有しているというデータが挙げられており、仮想通貨対応による顧客層拡大を大きなビジネスチャンスと捉えています。
この考えに基づいて策定された財務戦略には、社内の役割分担・ガバナンス体制、技術プロトコル、報告・監査手順なども明確に定められており、企業として仮想通貨運用を本格的に開始するための体制が整えられています。
仮想通貨採用で新規顧客獲得と財務柔軟性向上
ヘリテージ社取締役会のマット・スワン委員長は公式発表の中で次のように述べ、今回の取り組みに期待感を示しました。
商取引の新時代が到来しつつあり、仮想通貨は売り手と買い手の間の取引障壁を減らす原動力になっています。
テクノロジーと通貨の融合に長年携わってきた者として、ヘリテージ社がこの機会に消費者ニーズと仮想通貨の可能性を組み合わせる先進的な取り組みに大きな期待を寄せています。
また、同社CEOであるジャスティン・スティーフェル氏は、ビットコインやドージコインによる決済の導入について次のように述べています。
仮想通貨は価格変動の影響を受けやすい資産ですが、当社のような物販企業の場合、販売価格と製造コストの差である利益が、その変動リスクをある程度吸収する役割を果たします。
さらに、仮想通貨で得た収益をすぐに現金化せず保有することで、価格上昇時に利益を見込むことができ、財務の柔軟性も高まります。仮想通貨決済の導入は、新たな顧客層の獲得だけでなく、企業経営上の利点も多くあります。
同社は以前から業界に先駆けた革新的姿勢で知られており、今回の仮想通貨戦略についても「クラフトスピリッツ分野で再び業界をリードする試みだ」としています。
今後、オンライン店舗での仮想通貨決済開始時期については近日中に対応予定と説明されており、必要な技術実装と運用ルール整備が整い次第、サービス提供が開始される見通しです。
カナダ上場企業もBTC財務戦略を採用
ナスダック上場企業で広がる仮想通貨保有の動き
ナスダック企業、BTC・ETH・XRP採用へ
今回のヘリテージ社の決定は、企業が自社財務に仮想通貨を取り入れる動きの一環と捉えられています。
2020年に米ストラテジー(旧マイクロストラテジー)社がビットコインを資産として大量購入して以来、上場企業による仮想通貨採用の第二波が訪れつつあるとも指摘されています。
2024年以降、米ナスダック上場企業の間でビットコインをはじめとする仮想通貨を財務戦略に組み込む発表が相次いでいます。
テクノロジー企業のバイオネクサス・ジーン・ラボ社は2025年3月6日にイーサリアム(ETH)を主要財務資産に採用する方針を打ち出し、ナスダック上場企業がイーサリアムを財務戦略に加える初のケースとして注目を集めました。
また、ヘルスケア企業ウェルジスティクス社も5月8日付でXRPを決済インフラおよび準備資産とする戦略を発表しており、こちらも業界初の取り組みとして話題となっています。
アルトコイン採用事例も拡大
2024年12月にはトラック部品メーカーWorksport(ワークスポート)社が余剰資金で最大500万ドル(約75億円)相当のBTC・XRP投資を行うとともに、自社のECサイトで仮想通貨決済の導入を決定しました。
さらにマーケティング企業のLQR House社は2024年11月に仮想通貨による支払い受け入れと、その収益の一部(最大1,000万ドル=約145億円)をビットコインで保有する方針を表明し、発表後に同社株価が約56%急騰しています。
直近では、ブランド企業のUpexi社が4月21日にソラナ(SOL)を利用した財務準備金戦略を発表しました。同社は1億ドル(約1,450億円)の資金調達も併せて発表し、翌営業日には株価が632%という記録的な上昇を見せました。
このように企業の仮想通貨採用はビットコインだけでなく主要アルトコインにも広がりを見せており、それぞれ株式市場からも大きな反応を引き起こしています。
ソラナを柱とした財務戦略
ドージコイン(DOGE)財務戦略に業界は歓迎ムード
仮想通貨業界もこうした動きを歓迎する声が多く、特にドージコインについては熱心なコミュニティが今回のヘリテージ社の参入を好意的に受け止めています。
X(旧Twitter)上では「ドージコインはお金だ!世界的な普及は避けられない!(Doge is money! Global adoption is inevitable!)」といった熱狂的なコメントも見られます。
ドージコインはテスラやスペースX創業者の米実業家イーロン・マスク氏の支持などで知られるミームコインですが、近年は決済手段としての実用性も注目されており、テスラ社が一部商品購入にドージコイン(DOGE)決済を導入した例などもあります。
ヘリテージ社のように一般企業がドージコインを公式に財務戦略へ組み込むのは異例であり、コミュニティからは「企業によるDOGE受け入れがまた一つ増えた」として歓迎ムードが広がっています。
今回のヘリテージ社の仮想通貨導入の取り組みは、クラフト酒造業界だけでなく他業種へも波及する可能性があり、企業による仮想通貨採用の新たなトレンドとなるか今後の動向が注目されています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=145.94円)
企業の仮想通貨財務戦略に関する記事
Source:ヘリテージ・ディスティリング公式発表
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:AIによる生成画像