米上院、トランプ大統領の減税法案を可決|ルミス議員の仮想通貨課税条項は含まれず

米上院、トランプ大統領の減税法案を可決|ルミス議員の仮想通貨課税条項は含まれず(U.S. Senate passes Trump’s tax cuts bill without Lummis crypto taxation provision)
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トランプ氏推進の大型減税法案が上院通過

米上院は2025年7月1日、ドナルド・トランプ大統領が推進する大規模減税を含む予算調整法案「ビッグ・ビューティフル・ビル(One Big Beautiful Bill)」を採決し、賛否が同数となった結果、バンス副大統領の決定票により可決しました。

採決は24時間を超える審議を経て行われ、民主党議員全員に加え、共和党議員3人も反対票を投じました。

本法案の審議では、仮想通貨マイニングステーキングに関する課税見直しも取り上げられましたが、最終的にこれらの仮想通貨関連条項は盛り込まれないまま可決に至りました。

法案は今後、下院に送付される見通しで、共和党指導部はトランプ大統領が掲げる7月4日までの成立を目指し、迅速な採決を求めています。

減税恒久化含む新法案「ビッグ・ビューティフル・ビル」

今回上院を通過した「ビッグ・ビューティフル・ビル」法案は、2017年に成立したトランプ政権の大型減税措置を恒久化することを目的としたものです。

法案には、国防費や国境警備費の増額に加えて、チップ収入や残業代に対する新たな減税措置が盛り込まれました。これに対し、医療保険制度(メディケイド)や低所得者向けの食料支援など、社会保障費の削減も含まれる包括的な財政パッケージとなっています。

米議会税制委員会(JCT)は、今回の減税措置により今後10年間で政府歳入が4.5兆ドル(約646兆円)減少し、現在約36.2兆ドルに達している累積債務がさらに拡大する可能性があると指摘しています。

民主党の反発と採決結果

こうした減税の恒久化や社会保障費の削減を含む法案内容に対し、民主党側は「減税の恩恵は富裕層に偏り、社会的弱者への支援が犠牲になる」と強く反発しています。

マサチューセッツ州選出のエリザベス・ウォーレン上院議員は「法案が富裕層優遇である」と強く批判しています。

共和党は上下両院で僅差の多数派を維持しているものの、民主党の一致した反対姿勢に直面しました。さらに、与党内のランド・ポール議員らからも財政赤字拡大への懸念が示され、審議は難航を極めました。

今後の審議と仮想通貨関連法案への影響

法案は上院で可決された後、下院に送付されており、最終的な承認を待つ段階にあります。

民主党は議会手続きを通じて法案内容の修正を図ろうとしています。一方で、トランプ大統領側は下院に対し、上院の修正案をそのまま可決するよう求めていると報じられています。

このほか米議会では、決済用ステーブルコインの規制を定めるGENIUS法や、デジタル資産市場構造の確立を目的とするCLARITY法案など、仮想通貨関連の法整備が進められています。

ただし、予算法案が議会で最優先事項として扱われていることから、これらの仮想通貨関連法案の成立は年末以降に持ち越される見通しです。

仮想通貨課税是正を目指すルミス議員

ワイオミング州選出のシンシア・ルミス上院議員(共和党)は、仮想通貨マイニングやステーキング報酬に対する不公平な課税制度を見直す修正案の提出を目指していました。

ビットコイン(BTC)などのブロックチェーンで得られるマイニング報酬やステーキング報酬は、現行制度では受領時と売却時の双方で課税されており、ルミス議員はこうした二重課税の問題点を指摘しています。

その解決策として、課税タイミングを売却時のみに限定し、二重課税を解消するための修正案を提出しました。

また、1取引あたり300ドル(約4万3,000円)未満の少額仮想通貨取引を非課税とし、年間で最大5,000ドル(約72万円)までの免除枠を設ける提案も含まれていました。

マイナー・ステーカーの課税救済を訴え

ルミス議員は採決当日の7月1日、自身のXにて「マイナー(採掘者)とステーカー(預託者)は長年にわたり、報酬の受け取り時と売却時の2度にわたって課税されてきた。この不公平な課税制度を終わらせ、アメリカが仮想通貨分野で世界をリードする立場を確立しなければならない」と投稿し、税制見直しの重要性を訴えました。

こうした動きに合わせ、業界団体も支持者に対し「マイニング・ステーキング報酬の二重課税を終わらせ、公平な競争環境を整備するため、上院議員に働きかけよう」と呼びかけるなど、草の根的なロビー活動が展開されました。

税制修正案は次回法案に持ち越しへ

しかし、週明けに実施された上院の「ヴォートアラマ(無制限の連続投票)」では他の優先案件が相次ぎ、ルミス議員の仮想通貨税制に関する修正条項は盛り込まれませんでした。

仮想通貨課税の是正措置が盛り込まれなかったことについて、アラスカ州選出のニコラス・ベギッチ下院議員は「本来であればその条項が含まれるべきだったが、今後は他の重要法案に必ず反映させる機会がある」と述べています。

ルミス議員のチームも、今回の論点が上院財政委員長マイク・クレイポー議員(共和党)をはじめとする主要議員に共有されたと説明し、今後も委員会と連携して税制改正に取り組む意向を示しました。

採決後、ルミス議員は「完璧ではないが、正しい方向への大きな一歩だ」と述べ、法案全体を前向きに評価しました。法案は今後、下院での可決を経て、トランプ大統領の署名によって正式に成立する見通しです。

仮想通貨の税制に関する未解決の課題は、今後審議される他の法案に盛り込まれ、順次対応が進められるとみられています。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=143.55 円)

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Source:米上院公式サイト
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

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BITTIMES 編集長のアバター BITTIMES 編集長 仮想通貨ライター

2016年から仮想通貨に関するニュース記事の執筆を開始し、現在に至るまで様々なWeb3関連の記事を執筆。
これまでにビットコイン、イーサリアム、DeFi、NFTなど、数百本以上の記事を執筆し、国内外の仮想通貨ニュースの動向を追い続けている。

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