Circle、RWA対応の新チェーンArcを立ち上げ
米ステーブルコイン発行企業Circle(サークル)社は2025年8月12日、新たな独自L1ブロックチェーン「Arc(アーク)」の立ち上げを発表しました。
同社の公式ブログによると、Arcはステーブルコイン決済や金融サービスに特化したブロックチェーンであり、取引手数料(ガス代)にはネイティブ通貨としてUSDコイン(USDC)が使用されます。
また、Arcは為替取引機能やサブセカンド(1秒未満)の即時ファイナリティ(決済確定)を搭載し、大量取引に対応可能なパフォーマンスを備えていると説明されています。
Circle社はArcを「ステーブルコイン・ファイナンスの拠点」と位置付け、デジタルマネーやRWA(現実資産)のトークン化を多方面で支える新たなインフラになると強調しました。
RWA需要と機関投資家の関心が急拡大
Circleの新L1「Arc」の特徴と技術的優位性
公式ブログでは、既存チェーンの利用において「予測可能な手数料が必要」「ガス代に価格変動の大きい仮想通貨は使えない」といった課題が挙げられています。
Arcはこうしたニーズに応えるため、当初からステーブルコインの活用を前提に設計されたオープンなL1で、Circle社が運営する独立型エコシステムとして展開されます。
Arcの主な特徴として、以下の点が挙げられています。
- USDCをネイティブガスに採用:
取引手数料は米ドル建てで低廉かつ安定しており、ガス代支払いのためにボラティリティの高い仮想通貨を保有する必要がない - 為替(FX)エンジンを内蔵:
金融機関レベルのRFQシステムにより、異なるステーブルコイン間の価格発見とPvP方式による24時間リアルタイム決済が可能 - 即時ファイナリティ:
高度なコンセンサスエンジン「Malachite(マラカイト)」により、1秒未満で取引の最終確定(ファイナリティ)が行われる - EVM互換性:
Arcはイーサリアム仮想マシン(EVM)と互換性があり、開発者は既存のツールや言語を活用しつつ、他ブロックチェーンとの相互運用性を維持できる
Arcは今後数週間以内にクローズドテストネットを開始し、2025年秋にパブリックテストネットを、そして2026年にメインネット(β版)を開始する計画です。
Circle社は、Arc導入後も他チェーン上でのUSDCサポートを継続すると表明しており「Arcは閉ざされた囲い込みではなく、既存エコシステムを強化するオープンなインフラレイヤーだ」と説明しています。
同社共同創設者兼CEOのジェレミー・アレア氏は、Arcを「インターネット時代の包括的な金融プラットフォーム構築に向けた画期的な瞬間」と表現しています。市場関係者からは「Circleが米国におけるステーブルコインの中核を担う可能性がある」との見方も出ています。
SBIと新生銀、Circleに共同出資
急成長するRWAトークン化市場と投資機会の拡大
RWAトークン化市場は2025年時点で約240億ドル(約3.5兆円)の規模に達し、この3年間で約308%拡大しました。また、2030年代前半には30兆ドル(約4,430兆円)規模へ膨らむとの予測も示されています。
ゴールドマンとBNY、米初のMMFトークン化開始
2025年7月、米大手のゴールドマン・サックスとBNYメロンが、米国初となるマネーマーケットファンド(MMF)のトークン化サービスを共同で開始する方針を明らかにしました。
このサービスは、機関投資家向けプラットフォーム「LiquidityDirect」のMMF取引記録を、ゴールドマン・サックスが開発した許可型ブロックチェーン「GS DAP」上にデジタルトークンとして記録する仕組みです。
同プロジェクトには、ブラックロックやフィデリティなどの大手運用会社が初期段階から参画しており、こうした動きによって機関投資家のRWA市場への参入は加速するとの見方が広がっています。
ロビンフッド、欧州で株式トークン取引開始
2025年6月末、米オンライン証券大手のロビンフッドが欧州で米国株式およびETFのトークン取引サービスを開始しました。
ロビンフッドは、200銘柄超の米国株式を24時間取引可能なトークンとして提供し、未上場企業のOpenAIやSpaceXの株式トークンの提供も予定しています。
ロビンフッドのティネフCEOは「トークン化は大規模な取引の変革への扉を開く」と述べ、この技術が従来の証券取引に影響を与えるとの期待を示しました。
都心不動産のWeb3トークン化計画
Circle「Arc」が描くステーブルコインとRWAの未来図
Circle社のArcは、安定した手数料と即時決済機能を備えた新たな金融インフラとして、ステーブルコインとRWAトークン化の発展を後押しすると見られています。
特に、既存チェーンでの運用課題を解消する設計思想や金融機関向け機能は、規制整備が進む米国や欧州市場での採用を促進し、実需拡大につながる可能性があるとされています。
今後はArcのメインネット稼働や大手企業との連携状況が注目され、RWA市場とステーブルコイン活用の両面で業界全体の成長を加速させる契機となることが期待されています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=147.77 円)
RWA関連の注目記事はこちら
Source:Circle公式ブログ
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用





























