ラトニック長官、GDP統計透明化へブロックチェーン導入を表明
米国のハワード・ラトニック商務長官は2025年8月26日、ホワイトハウスで開かれた閣議で、商務省がGDP（国内総生産）統計をはじめとする主要な経済データをブロックチェーン上で公開する方針を明らかにしました。
この取り組みはまずGDP統計から始まり、実装に必要な詳細を固めた上で、順次他の経済指標や連邦政府の各部門にも拡大していく計画とされています。
ラトニック長官は閣議の中で、トランプ大統領に向けて次のように述べています。
商務省は自らの統計をブロックチェーン上で公開します。なぜなら、あなた（大統領）は“クリプト大統領”だからです。
我々はGDP統計をブロックチェーンに載せ、国民がデータ配信に利用できるようにします。
ブロックチェーンによる公式統計発表は米連邦政府として初めての試みで、仮想通貨産業を重視するトランプ政権の姿勢を象徴する動きとして注目されています。
行政透明化へブロックチェーン導入
米商務省によるGDP統計ブロックチェーン公開計画
ブロックチェーン活用による透明性の向上
ラトニック長官は、ブロックチェーン技術の利点として改ざん耐性や透明性を挙げ、経済統計の配信に活用することで信頼性とアクセス性が高まると強調しました。
例えば、エストニア政府は2016年に医療記録の管理にブロックチェーンを導入しました。EUも2018年に欧州ブロックチェーン・サービス基盤（EBSI）を立ち上げて行政サービスへの応用を進めており、公共データ管理の活用事例は各国で拡大しています。
ラトニック長官の構想も政府データの透明性向上を目的としており、ブロックチェーンに記録された統計データは誰でも検証可能で、改ざんも困難になるとの見方が示されています。
一方で同氏は、どのブロックチェーンを採用するのか、また行政業務にどのような利点をもたらすのかといった具体策には触れず、詳細設計は現在進行中であり、今後数カ月以内に追加情報を公表すると述べました。
米政府で進むブロックチェーン実証実験
今回の商務省による統計データのオンチェーン化計画は、米国政府全体で進むブロックチェーン活用の流れの一環と位置付けられています。
米連邦政府内では現在、さまざまな実証実験が進められています。財務省は補助金支出の追跡システムにブロックチェーンを試験導入し、CFTC（商品先物取引委員会）はトークン化担保やステーブルコイン決済のパイロットプログラムを運用しています。
国防総省や国土安全保障省は部品追跡やサプライチェーンの認証への応用を模索しています。また税関・国境取締局（CBP）では、輸入品の知的財産情報を検証するためにブロックチェーンを用いる試みが行われました。
こうした官民での技術検証の積み重ねが、GDP統計のブロックチェーン公開につながったとされています。
米国ブロックチェーン展開法案と議会の動き
立法面の後押しも進み、2025年6月にはブロックチェーン技術の連邦導入を商務省主導で促進する「米国ブロックチェーン展開法案」が下院を通過しました。
同法案は、商務省に対してブロックチェーン活用推進プログラムの設置や関連諮問委員会の創設を義務付ける内容となっています。
今回の商務省によるGDP統計のオンチェーン化計画は、議会の動きと歩調を合わせる形で進められており、米国政府におけるブロックチェーン活用拡大を象徴する施策と位置付けられています。
経済統計不信を背景に進むブロックチェーン導入
背景には、トランプ大統領が米国の経済統計に対する不信感を繰り返し表明してきた経緯があります。
トランプ氏は政権発足当初から「米国を仮想通貨とブロックチェーンの世界的中心地にする」と公言してきました。
1月には、規制整備や連邦資産備蓄の検討を担う作業部会（仮想通貨タスクフォース）の設置や、民間銀行による仮想通貨企業へのサービス提供の保護、米国版CBDC（中央銀行デジタル通貨）の禁止などを盛り込んだ大統領令に署名しました。
さらにトランプ氏は、在任中に公表された政府統計を「不正に操作されたもの」と断じ、統計官を更迭するなど強硬な姿勢を示してきました。
こうした経緯を踏まえ、ブロックチェーン技術によるデータ配信の透明性向上策が打ち出されました。今回の閣議では、トランプ氏が終始うなずきながら受け止めたと伝えられています。
仮想通貨関連の大統領令に署名
政府統計のブロックチェーン化が世界に与えるインパクト
商務省が進めるGDP統計のブロックチェーン公開は、政府データの信頼性向上と透明性の確保を狙う取り組みで、官民双方に新たな基盤を提供するものです。
制度面や技術面の課題は残るものの、米国が公式統計をブロックチェーンへ移行すれば、国際的にも大きな影響を与えるとの見方が広がっています。
今後はGDPにとどまらず、より幅広い経済データへの展開が検討される可能性があり、仮想通貨市場を含む金融分野や政策領域での影響にも注目が集まっています。
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Source：CNBC YouTube
サムネイル：AIによる生成画像
