この記事の要点
- ECB専務理事、中銀マネーのオンチェーン化を提唱
- DLT決済基盤「Pontes」を9月始動、24時間対応も視野
シュナーベル氏「中銀こそがDLTに参加すべき」
欧州中央銀行(ECB)専務理事のイザベル・シュナーベル氏は2026年8月28日、米ジャクソンホールでのシンポジウムで講演し、中央銀行が自ら分散型台帳技術(DLT)に参加して中銀マネーをオンチェーン化すべきだと提唱しました。
同氏は、中銀マネーをオンチェーン化すれば決済の土台としての役割を維持しながら、スマートコントラクトを通じて中央銀行の業務を近代化できると述べています。
一方で同氏は、こうした利点を生かすには安全な決済資産が欠かせないとして、危機時に流動性を弾力的に供給できる中央銀行の役割はステーブルコインでは代替できないと明言しました。
その根拠として、19世紀の自由銀行時代に通貨への信頼が揺らいだ歴史や1907年に米国で起きた銀行パニックを挙げ、現代の中央銀行は金融ストレス時に流動性を弾力的に供給できると説明しています。
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オンチェーン化の方式とECBの実現構想
中銀マネーDLT化に3つの選択肢
中銀マネーのオンチェーン化について、シュナーベル氏は中央銀行がトークン化された環境に参加する方法として、3つの選択肢を示しました。
具体的には、中央銀行がDLT上でトークン化した準備預金を直接発行する方式のほか、既存の決済システムとDLTを同期させる方式、民間の仲介機関が準備預金を裏付けとするトークンを発行する方式を挙げています。
このうち準備預金そのものをオンチェーン化するのは直接発行型だけで、他の2方式では中央銀行の準備預金は従来の決済システムに残ります。
民間の仲介機関を利用する方式では、オムニバス口座(多数の利用者の資金をまとめて扱う口座)に置かれた準備預金を裏付けとしてトークンを発行しますが、利用者が保有するのは中央銀行ではなく民間機関に対する債権となります。
シュナーベル氏は、中央銀行がトークン化の利点を直接生かせるとして、直接発行型を支持する立場を明確にしています。
レポ取引の一括決済と担保管理を自動化
シュナーベル氏は、準備預金と担保をプログラム可能な環境に置くことで、金融政策の運用や担保管理を近代化できると説明しています。
標準的なレポ取引では、決済を一括で(アトミックに)実行することで、複数の機関をまたぐメッセージの送受信や照合作業を減らせると同氏は述べました。
担保管理でも、あらかじめ定めたルールを決済処理に組み込むことで、追加担保の自動請求や証券のリアルタイム差し替えに加え、準備預金の区分に応じて異なる金利を適用できるとしています。
トークン化によって市場の流動性需要がより速く変化する可能性があるなか、同氏は中央銀行にもこうした変化へ迅速に対応できる運用体制が必要になるとの見方を示しました。
ECB新基盤「Pontes」9月に運用開始
シュナーベル氏は、ユーロシステムが中銀マネーによるDLT取引の決済基盤「Pontes(ポンテス)」を来月始動させると明らかにしました。
Pontesは、既存のTARGETサービスと市場のDLTネットワークを接続するとともに、ユーロシステムが運営するDLT上でも中銀マネーによる決済を可能にします。
同氏によれば、開始時にはTARGET2またはユーロシステムのDLTを通じて決済する二重モデルを採用し、DLT上で行われる取引に2つの決済手段を提供します。
その後は24時間365日の利用や分散型のプログラマビリティにも対応し、Pontesの機能を段階的に拡張する方針です。
Appiaが描く3つのDLTアーキテクチャ
Pontesの始動と並行して、ユーロシステムは長期構想「Appia(アッピア)」を進め、将来のトークン化された金融市場に向けた複数のアーキテクチャを検討しています。
Appiaでは、中銀マネーと金融資産を一つの共有DLTに置く「単一統合台帳」、ユーロシステムと市場のDLTを相互接続する「ネットワーク連携型」、複数の共有台帳を接続する「複数共有台帳型」の3案が示されました。
シュナーベル氏は、単一統合台帳がアトミシティとプログラマビリティの面で最も優れる一方、運営体制や障害耐性・技術の固定化に課題があると説明しています。
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トークン化で欧州金融インフラ統合を目指す
シュナーベル氏は、欧州では金融市場のインフラが国ごとに分断されているとして、国境を越えた市場統合を進める必要があると指摘しています。
同氏は、トークン化を活用すれば既存システムを継ぎ接ぎするのではなく、欧州貯蓄投資同盟が掲げる「設計段階から統合された」金融基盤を構築できると述べました。
9月に動き出すPontesにどれだけの運用実績が積み上がるかや、Appiaの設計案が実装にどう反映されるかに市場の関心が集まっています。
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Source:ECB公式スピーチ
サムネイル:AIによる生成画像




























