仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

合法化進む「大麻」へのブロックチェーン活用|急成長する2大産業の現状と今後の可能性


大麻市場は、複数の国や地域で進む合法化の動きに合わせて急速に成長し始めています。しかしその一方で医療用・嗜好用大麻には一般的な食品などと同様に流通過程に透明性をもたらし、監視能力を強化することが求められています。ブロックチェーン技術は、マリファナの栽培・生産から実際に店舗に並ぶまでのプロセスに透明性をもたらし、取引を合理化するための基盤技術として利用できる可能性を秘めています。

こちらから読む:大麻産業で有用性を発揮する「ブロックチェーン」とは

世界各国で進む「大麻合法化」

大麻産業は世界的に見ても特に急速に成長している産業の一つであり、アメリカでは最近合法化による「大麻解禁」へ向けた動きが活発化しています。

アメリカ合衆国29の州ではすでに「医療用大麻」が合法化されており、カリフォルニアなど9つの州では嗜好用の大麻の所持・使用が認められ、首都ワシントンDCでは「医療用・嗜好用」の両方が合法化されています。

また、その隣国のカナダ(Canada)では、2018年10月17日に嗜好品としての大麻の所持・利用が解禁されたばかりです。

バブル的成長を誇る大麻産業

大麻産業は成長産業としては「世界最速にもなる」と言われるほど著しい成長を遂げており、大麻業界の調査・分析を行なっている「BDS Analytics」は、大麻産業の売上高が2017年に90億ドル(約1兆212億円)、2021年には400億ドル(4兆5,380億円)にも上るとの予測を発表しています。

この爆発的な成長の要因が何なのかを一概に特定することはできないものの、世界各国やアメリカ各州で規制が異なるため、急速に大麻の普及が加速した場合にはそれぞれの地域の規制を理解できていない大麻利用者は混乱する可能性があると予想されます。

一般的には娯楽目的で大麻を購入するためには「運転免許証」が必要となり、認可を受けた診療所で購入することができます。アメリカ国立の薬物乱用研究所「National Institute on Drug Abuse(NIDA)」は、大麻はアメリカで最も一般的に使われている薬だと伝えています。

年間売り上げ「約126億円」大麻がもたらす経済効果

すでに大麻が合法化されているコロラド州では、2015年に大麻産業が課税収入源「第2位」を獲得しており、1年間で約1億1100万ドル(約126億円)もの売り上げと税収を達成しています。これはアルコールの3倍、カジノの売り上げより14%も多いものとなっており、その後は他の州でもそれぞれの規制に基づいて合法化が進められています。

様々な業界のデータを調査しているGreenWave Advisors社は、大麻産業の売上高が2021年までに年間303億ドル(約3兆4460万円)、今後5年間の税収は270億ドル(約3兆円)に達すると予測しています。2017年には4倍も成長したと報告されていますが、2018年はさらに急成長すると見込まれています。

カリフォルニア州のERA経済学者の研究チームが公開した論文によると、約1,350万ポンドの大麻が毎年栽培されており、カリフォルニア州では250万人が使用しているとの調査結果が発表されています。

Seed to Shelf:大麻が種から棚に並ぶまで

他の農作物と同様、大麻が消費者の手に渡るまでには様々なプロセスがあるため、しっかりとした規制が定められていても途中でトラブルや改ざんが起こる可能性があります。では、大麻の栽培から実際に店舗に並ぶまでには一体どのような工程があるのでしょうか?

Cannabis Cultivator:栽培業者

栽培業者は種を植えるところから収穫までを請け負います。健康で高品質な大麻を育てるためには成長に適した環境を維持することが必須となるため、栽培業者は土壌、照明、温度などの面で非常にデリケートな管理を行っています。

収穫された大麻は、ライセンスに応じて特定の加工業者や配送業者に出荷する事が許可されています。

Cannabis Processor:加工業者

加工業者は収穫された大麻を栽培者から受け取り乾燥、硬化、包装、ラベリングを行います。これらの工程にはライセンスが必要になります。彼らは小売や流通業者に引き渡す前に、濃縮したり、食用品、油などの加工も施します。

Cannabis Delivery:配送業者

配送業者は主に医療用の大麻を配送します。工場から地域ごとに毎月数十社の小売業者に大麻を引き渡します。

Cannabis Retail:小売業者

小売業者は大麻を実際に使用する顧客に販売します。ディスペンサリーズと呼ばれる医療用大麻販売所では、大麻が棚に陳列されており、大麻だけでなく大麻を吸うための道具なども提供されています。

小売店で大麻を購入する人々は、購入時に「運転免許証」や「メディカルカード」を提示する必要があります。

浮きぼりとなった「流通」による問題

大麻産業が急速に成長したことによって、現在は大麻の流通における様々な問題が浮きぼりとなっています。

コミュニケーションによる問題

ワシントン州では「栽培業者から小売業者の元に届くまでの間に不正行為が行われていないか」を確認するために追跡と監視を行うことが求められていたため、トレーサビリティ・システム(*1)を使用して監視が行われていましたが、結果的にこのシステムは問題解決どころか新たな問題を引き起こす結果となり、発注時の混乱や出荷伝票の不備などの問題が発生し、『店舗に商品が並ばずその日の売り上げが減った』といったクレームが多発しました。

(*1)トレーサビリティ・システム:バーコードやICタグなどを使い、商品の生産や流通を追跡できるシステム

失われる所有権

栽培業者から出荷後、加工、配送、小売業者の間で書類などが失われた場合、所有者がわからなくなり誰も立証することができなくなります。

一部企業による市場独占

大麻合法化に渡る転換期から、大麻を量産し栽培している企業がすでに存在していました。これらの企業は元となる植物の使用の特許を取っているため、他の業者はこの企業にロイヤリティーを支払う必要がありました。

監査能力の不足

大麻業界における監査能力は著しく低いと指摘されており、各取扱いステップを正式に監査する方法はほとんどないとされています。そのため、もし問題が発生した場合には特定することなどは不可能とされていました。

QRコードでも解決できず

WeedtraQR社は、このような問題を解消するための追跡ソリューションを開発しました。このシステムは「スマートフォンやPCなどで”QRコード”をスキャンして在庫情報を更新する」という至ってシンプルなものでした。

このシステムは便利であることなどの理由から、アメリカ国内の栽培業者100社以上が実際に利用していましたが、完全に問題を解決できるものにはならず、
・栽培業者と加工業者は全ての荷物にQRコードを確実に貼らなければならない
・常時、自分のデバイスを持っていなければならない
・追加のステップが追加された場合、見落としが発生する。
などの新たな問題が発生してしまう状況となってしまいました。

大麻業界にブロックチェーンがもたらすメリット

ブロックチェーン技術は「開発者が望むもの全てを追跡できる元帳」としての役割を果たすことができる機能を備えているため、大麻の取引や流通に「透明性、安全性、情報の明確化」などのメリットをもたらします。

大麻の生産から販売店に至るまでの各ステップに情報の制御、不正、改ざんを防止することができる「スマートコントラクト」の技術を取り入れることによって、大麻の取引をより合理的に処理することができます。

ブロックチェーンは第三者が不正に取引を操作することを防止できるだけでなく、誰でも利用することができるようになっており、専門的な知識を有していない農家の人々でも比較的簡単に技術を利用できる仕組みなども存在します。

政府も「seed-to-shelf」によるプロセスを容易に監視することができるようになり、自主的な複数のサプライチェーン管理が可能となります。さらに情報の追跡にかかる時間も大幅に短縮することができ、プロセス全体を維持するための透明性を保つことができます。

Fedexのような国際運送企業のシステムは、ユーザーの入力に依存しているため、紛失、システム障害、支払の期限切れなどのヒューマンエラーを招く危険性がありますが、スマートコントラクトの技術を活用すれば、複数の認証と署名などのやり取りを自動化することが可能になるため、システム入力に関連するトラブルを回避し、時間とコストの両方を節約することができます。

大麻産業でも盗難などの問題が悩みの種となっていますが、ブロックチェーンが実装されれば安全性を高め、セキュリティーコストも下がり、資金を銀行に頼ることも無くなり、余計なマージンを取られずに多くの利益を得ることができます。

ブロックチェーンを使った大麻関連の仮想通貨プロジェクト

大麻産業にもブロックチェーンを使ったプロジェクトはいくつか存在しています。

Nuvus.io

Nuvusは大麻業界に焦点を当てたグローバルなプラットフォームを目指しています。
トラストレス検証システムに基づいて支払いを行うことにより、大麻の流通プロセスに完全な透明性と監査性を与えることを目指しています。

このプラットフォームは、医師や研究者がプラットフォーム内で貴重なデータを収集し、効果的な薬を開発・処方することを可能にするイーサリアム(ETH)ネットワーク上のERC20トークン「グローバルエクスチェンジトークン(Global Exchange Token/GETX)」を発行しています。

HEMPCoin

2014年にビットコイン(BTC)のオリジナルコードで作成されたヘンプコイン(Hempcoin/THC)は、世界中の農家、流通業者、小売業者間の取引を規制を目的としたコインです。このウェブサイトは独自ウォレットと独自通貨「THC」を提供しています。

より低い取引手数料で取引が可能で、生産者はドルの代わりに「THCトークン」で報酬を受け取ります。世界的な農業市場は1兆ドル産業とも言われ、もしそのシェアを少なくとも2〜3%確保できれば、価格は500%以上の上昇する可能性があります。

Potcoin

ポットコイン(Potcoin/POT)は、マリファナ業界向け銀行ソリューションの提供を考えています。ヘンプコインとは違い、P2Pネットワークでユーザーと小売業者間の取引の提供を考えています。

現金の必要性を完全に取り除き、法的に容認されている大麻コミュニティに仮想通貨の作成に専念することを望んでいます。

医療・嗜好用大麻×ブロックチェーン|今後の課題

医療用・嗜好用大麻はこの数年間で認められ始めたものであり、現在も複数の国で議論が交わされている分野でもあるため、大麻産業自体の基盤も十分に固まっているわけではなく、現在も解決すべき多くの問題が存在しています。

これまで違法とされていたものを合法化し、世の中に適切に普及させていくためには一定の規制を定めた上でそれに伴う情報を適切に管理することが重要となりますが、ブロックチェーン技術は大麻を扱う際の「情報管理」に伴う問題を解決し、大きなメリットをもたらす可能性を秘めています。

しかし、ブロックチェーン技術も誕生して間もない新しい技術であるため、未だに受け入れることができない人や技術自体を理解できていない人が数多く存在します。農業を営む人々は”新しいテクノロジー”を導入することに関心を示さない場合も多いため、これからブロックチェーン技術が大麻農家に広く受け入れられていくためには「ブロックチェーンの認知度を高めるための取り組み」や「具体的な成功事例」などが必要となると考えられます。

解決すべき問題は多いものの「大麻」及び「ブロックチェーン」の分野は、これから大きな成長を遂げる可能性を秘めた市場として世界的に注目が集まっています。