ブロックチェーン先進国として知られるスイスの国営郵便会社「Swiss Post(スイスポスト)」と国有通信事業者「Swisscom(スイスコム)」は、2018年12月6日「Hyperledger Fabric」をベースとした「Blockchainプラットフォーム」を開発することを発表しました。
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安全かつシンプルな「ブロックチェーンインフラ」構築
スイス政府が所有する国営郵便会社である「Swiss Post(スイスポスト)」と、スイス政府が51%の株を保有する電気通信事業者である「Swisscom(スイスコム)」は、従来のプライベートインフラストラクチャのセキュリティとパフォーマンスを向上させ、より信頼できるものにするために「Hyperledger Fabric」を基盤としたブロックチェーンプラットフォームを構築することを発表しました。
このプラットフォームは「自社だけでなく他社のアプリケーション上でも利用できるシンプルかつ安全性の高いプライベートブロックチェーンインフラとして機能する」と説明されており、全てのデータをスイス国内に留めることによって、銀行レベルの「高いセキュリティ」を実現するとされています。
またこのプラットフォームは「プライベートブロックチェーン」となっているため”エネルギー効率が良い”とも説明されています。ビットコインやイーサリアムなどの「パブリックブロックチェーン」は非常に多くのユーザーが利用するため相応のエネルギーを消費することになりますが、今回発表されたブロックチェーンはアプリケーションのプロバイダーと契約関係のあるユーザーだけが利用できる仕組みになっているため使用するエネルギー量も少なくて済みます。これによって効率的な合意形成を実現している同プラットフォームは、セキュリティとパフォーマンスを飛躍的に向上させています。
スイスポストとスイスコムはプレスリリースの中で、このプラットフォームは「すべての分野の企業にとって魅力的な利点を生み出しており、スイスのビジネスの場としても魅力的なものである」と述べています。両者は、2019年第2四半期に新しいブロックチェーンプラットフォーム上で初となるテスト版アプリを立ち上げ、同国の企業や政府機関向けに提供することを予定しています。
ブロックチェーン活用は「電力供給・医療品管理」にも
スイスポストとスイスコムは、今回発表されたプラットフォームの他にもそれぞれが別の分野のブロックチェーン技術をすでに使用しています。
Swiss Postの金融サービス会社である「PostFinance(ポストファイナンス)」は、スイスの電力会社である「Energie Wasser Bern(エネルギー・ワッサー・ベルン)」と協力して、太陽光発電を行なっている住宅の所有者がブロックチェーンを経由してテナントに自動的に電気代を請求するシステムの開発に取り組んでいる他、医療品を輸送する際の温度管理などにもブロックチェーン技術を活用しています。
またSwisscomは、子会社である「Daura AG」と共に株式の発行、購入、売却を容易にするブロックチェーンシステムを開発しています。
両社は今回新たに発表されたプロジェクトに他の企業を受け入れて行くことも視野に入れた取り組みを行なっており、『将来性のあるブロックチェーン技術の利用において、スイスが確固たる地位を築いて行くことを望んでいる』と述べています。
この2社の所有権を持つのが「スイス政府」であるというのは注目すべき点の一つであると言えます。スイスポストとスイスコムの共同開発ではあるものの、所有権を踏まえて考えるとこのプラットフォームは国家のブロックチェーンプラットフォームであるとも言えます。
スイスは代表的な「ブロックチェーン先進国」の一つであり、今月3日には同国の金融市場監査局(FINMA)が新たに「フィンテック・ライセンス」のガイドラインを公表したことによって、仮想通貨企業は事業運営の一環として公的な資金調達を最大1億ドル(約113億円)まで受け入れる権限を正式に申請できるようになりました。ブロックチェーン技術を早い段階から取り入れていたスイスでは、現在も様々な分野でブロックチェーン技術の活用が続いています。
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