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JPMorganのビットコイン適正価格分析「27万円」にマイナーが反論|JPMコインにも飛び火


JPMorgan Chase(JPモルガン・チェース)が先月公開したレポートでは、マイニング(採掘)にかかるコストなどを元に計算を行い「ビットコイン(BTC)の適正価格は2,400ドル(約26.5万円)である」と推定されていましたが、最近の報道ではマイナー(採掘者)やその他利害関係者から報告書の”間違い”を指摘する意見が多数出ていることが報告されています。

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JPモルガンが見積もる「ビットコイン適正価格」

JPMorgan Chase(JPモルガン・チェース)のアナリストは、2019年1月にビットコイン(BTC)の本質的価値などに関する内容をまとめた報告書を公表しました。この報告書では、ビットコインの適正価格を求めるために「ビットコインマイニングの限界費用(*1)」を測定基準として使用しています。

(*1)限界費用:生産量を小さく1単位だけ増加させた際に増加した総費用の増加分を指す言葉

同社が公開したレポートでは次のように説明されており、ビットコインの適正価格は2,400ドル(約26.5万円)と見積もられています。

2018年第4四半期のハッシュレートを平均して最近の生産シェアを適用した場合、低価格でマイニングを行なっている中国のマイナーの平均コストは「1BTCあたり2,400ドル」になると推定しています。

しかし最近の報告では、このレポートに対してマイナーやその他の利害関係者からこの分析の”間違い”を指摘するコメントがあがっています。

ビットコインマイナーからの指摘

JPモルガンが公表した「ビットコイン適正価格」に反論する人々は「限界費用」や「適正価格」と言った概念はビットコインには適用されないため、JPモルガンによる分析は”ほとんど重要ではない”と説明しています。

ビットコインに「平均コスト・損益分岐点」は無い

ビットコインの総供給量は2,100万BTCに固定されており、1日の有限供給量は1,800BTCに設定されています。また、世界中のマイニングノードは各ブロックの報酬を獲得するために常に競争を行なっており、次の半減期では報酬となるBTCも半分に減少します。

ビットコインのマイニング用ハードウェアを開発している「LuTech」の共同設立者であるBen Gagnon(ベン・ガニョン)氏は、このようなことを踏まえた上で「ビットコインには”平均コスト”や”損益分岐点”がない可能性がある」ということを次のように説明しています。

電気効率の高いハードウェアを使って、低いコストでできる限りのブロックを作成し、ビットコイン報酬を得ようとするマイナーは常に存在し続けるでしょう。

ビットコインの価格が下がれば、高コストでマイニングを行なっているマイナーが最初に市場を去ることになるので、ビットコインのマイニングコストも下がることになると考えられます。

これは、より低コストにマイニングを行うマイナーの人々に、より多くの市場シェアと収益をもたらす余地を与えることを意味します。

マイニングの環境は常に変化する

また、ガニョン氏は「マイニングの環境が常に変化を続けている」ということもあげており、一般的な市場の状況に応じてマイニング業界も変化することを説明しています。

昨年11月にビットコイン価格が3,000ドル(約33万円)近くまで下落したことによって、多くのマイナーやマイニング企業が「撤退」や「マイニングマシンの一時停止」を発表しており、3,000ドルという価格が80万人近くのマイナーにとって致命的な価格であったことが証明されています。

結果的にマイニングを行うノードが減少したことによって、ネットワークハッシュレートが低下し、そのような状況でも収益を上げることができるマイナー達だけがビットコインのマイニングを続けました。

昨年、マイニング事業からの撤退報告などが相次いだことなどを踏まえて考えると、その時の状況によって市場が大きく変化するマイニングの世界を計算で予測するのは難しいとも考えられます。

一部企業のマイニングコストは「見積り額よりも遥かに低い」

一部の報道機関によると「LuTech」や「Bitfarms Technologies」などのマイニング業者は「JPモルガンが見積もった適正価格」よりも遥かに低いマイニングコストでマイニングを続けることができるとも報じられています。

ガニョン氏は「LuTech」のマイニングコストは1,400ドル(約155,000円)であると語っており、「Bitfarms Technologies」はカナダの安値な再生可能エネルギーによって1,567ドル(約170,000円)のマイニングコストを実現していると伝えられています。

極端にビットコイン価格が下がってしまった場合には「51%攻撃」の危険性もあるため、いずれにせよビットコイン価格の急激な下落にはいくつかの危険が伴います。「ビットコインの適正価格がいくらか」に関しては今後も議論が続けられることになるでしょう。

ビットコイン強気派として知られるThomas Lee(トーマス・リー)氏は、昨年12月に行われたBloombergとのインタビューの中で、ビットコインの適正価格は13,800〜14,800ドル(約156万〜168万円)だと語っています。

「JPMコイン」の適正価格は…

JPモルガンが公開した「ビットコインの適正価格」に関する指摘に伴い、同社が最近発表した独自の仮想通貨「JPMコイン」の適正価格に関する話題も多く取り上げられています。

複数の報道機関では「JPMコイン」には、ビットコインのようなマイニングがないため「限界費用もない」と説明されており、限界費用がない場合の適正価格は「ゼロ」だと結論づけられています。

JPモルガンのCEOであるJamie Dimon(ジェイミー・ダイモン)氏は以前から仮想通貨に対して批判的なコメントを語っているため、仮想通貨業界から度々バッシングを受けています。

ビットコインなどの仮想通貨に対する否定的な意見は、今後も「JPMコイン」に対する批判を強める要因の一つになる可能性があります。