仮想通貨XRPが変える国際送金の常識
XRP(エックスアールピー)は、国際送金や決済をより迅速かつ低コストで行うことを目的として開発された仮想通貨(暗号資産)です。
従来の国際送金では、着金までに数日を要し、1回あたりの手数料も10〜30ドル(約1,400〜4,300円)と高額でした。一方、XRPを利用した場合は、送金がわずか数秒で完了し、手数料も0.0002ドル(約0.03円)未満に抑えられます。
XRPのこうした特性により、銀行間の資金移動や企業間の決済は、より迅速かつ効率的に行えるようになっています。これが、国際金融インフラの高度化を促す要因の1つとされています。
「リップル(Ripple/XRP)」とは?
XRP活用が浸透する日本の金融業界
リップルとSBIの戦略的提携
日本でXRPが金融インフラに取り入れられている背景には、SBIホールディングスによる継続的な取り組みが大きく影響しています。
2016年、SBIと米リップル社は合弁会社「SBI Ripple Asia」を設立し、同時にリップル社の株式を約9%取得しました。この動きが、日本市場におけるXRPの普及を後押しする要因となりました。
SBIホールディングスの北尾吉孝社長(当時)は2019年に「日本のあらゆる銀行が2025年までにXRPを利用するようになる」との見通しを語り、その可能性に強い期待を示していました。これを背景に、全国の銀行を巻き込んだコンソーシアムが結成され、RippleNetの導入が本格化しています。
2018年には、コンソーシアムの取り組みの一環として送金サービス「MoneyTap」が発表され、スマートフォンを使って24時間リアルタイムでの銀行間送金が可能となりました。
MoneyTapは当初、XRPを使用せず、リップル社の分散型台帳技術「xCurrent」を採用していました。その後、国内外の30行以上の銀行がネットワークに参加しました。2023年には、山口銀行・もみじ銀行・北九州銀行などの地方銀行でも、個人間送金アプリとしての活用が始まっています。
こうした取り組みを通じて、日本の銀行ネットワーク全体でブロックチェーンを活用した決済基盤の共有が着実に拡大しています。
XRPで実現する国際送金革命
日本におけるXRPの本格的な実用化を象徴する事例の一つが、リップル社によるOn-Demand Liquidity(ODL)サービスの導入です。
2021年7月、SBI VCトレード(暗号資産取引所)、SBIレミット(送金業者)、そしてリップル社の3社が提携し、日本初となるXRPを活用した国際送金サービスが実現しました。
このサービスでは、日本で受け取った送金資金を即時にXRPに変換し、リップル社のブロックチェーン基盤「XRP Ledger」を通じて送信します。
送金先であるフィリピン側では、提携先ウォレットにおいてXRPを現地通貨ペソへ換金し、受取人へ送金額が支払われる仕組みとなっています。
この仕組みにより、従来のように海外銀行へ事前に資金をプールする必要がなくなりました。XRPをブリッジ通貨として活用することで、即時かつ低コストな国際送金が可能となりました。
2017年からRippleNetを活用した送金サービスを展開してきたSBIレミットは、2021年にODLを導入することで、日本からフィリピンの仮想通貨ウォレット宛への送金を国内で初めて実現しました。
この取り組みはXRPコミュニティでも大きな関心を集め、XRP価格の上昇を後押しする要因の1つと見られています。
その後、ODLの活用はさらに拡大しました。2023年9月には、SBIレミットがフィリピン・ベトナム・インドネシア向けにXRP送金サービスを拡充し、各国の銀行口座宛の送金にも対応すると発表しています。
このサービスでは、SBIレミットが送金指示を受けると、SBI VCトレードが即時にXRPを送付し、東南アジア各国のパートナー企業と連携して、現地通貨による支払いが完了します。
また、SBIグループはRippleNetの拡大戦略の一環として、東南アジアの送金企業Trangloに出資しました。この取り組みにより、アジア全域でのXRP決済ネットワークの構築がさらに加速しています。
SBI VCが牽引するステーブルコイン「USDC」活用計画
XRPと、その基盤であるXRP Ledgerは、国際送金に加え、ステーブルコインやRWA(実物資産)のトークン化といった新領域でも活用が進んでいます。
2023年6月の改正資金決済法の施行により、日本国内でも海外発行のステーブルコイン「USDコイン(USDC)」や「テザー(USDT)」の取り扱いが可能となりました。
この法改正を受けて、SBI VCトレードは日本で初めてステーブルコインを取り扱う事業者として正式に認可を取得し、USDCの提供に向けた体制を整えています。
同年11月には、親会社のSBIホールディングスがUSDCの発行元である米Circle(サークル)社と覚書を締結し、新たな事業展開に向けた連携を開始しました。
ステーブルコインは価格の安定性に優れていることから企業決済との親和性が高く、日本のデジタル金融市場でも今後のインフラ構築を支える重要な要素とされています。
日本展開に向けたRLUSDの計画
一方で、米リップル社も米ドル連動型ステーブルコイン「Ripple USD(RLUSD)」の発行に向けた準備を進めています。
RLUSDは、ニューヨーク州金融当局の信託ライセンスのもとで発行され、米国債を裏付け資産とする点が主な特徴です。
SBI VCトレードも、RLUSDの日本市場への展開に向けた検討を開始しており、XRP Ledgerを安定通貨の活用基盤として用いる構想を描いています。
2025年6月には、USDCがXRP Ledger上で正式に稼働を開始しました。リップル社の発表によれば、XRPL上でUSDCを発行することで、XRPを橋渡し通貨とする自動ブリッジ機能の活用が可能となり、分散型取引所間でのステーブルコイン移転が一層容易になるとしています。
RippleXの上級副社長マーカス・インファンジャー氏は「ステーブルコインは伝統的な金融市場と暗号資産の橋渡し役を担う重要な存在であり、投機ではなく実需に基づいたユースケースに欠かせない」と強調しています。
XRP Ledgerで進むRWAトークン化
さらに、RWA(実世界資産)のトークン化分野でも、XRP Ledger(XRPL)の活用が広がっています。
2023年、リップル社はシンガポールを拠点とするトークン化企業OpenEdenに1,000万ドルを出資し、XRPL上での米国国債のトークン化プロジェクトを支援しました。
英国の大手銀行スタンダード・チャータードは、2028年末までにXRP価格が12.5ドルに達し、時価総額でイーサリアムを上回ると予測しています。その根拠として、国際送金の決済における優位性に加え、XRPLがトークン化プラットフォームとして成功する見込みを挙げています。
同報告書では、他のブロックチェーン上で国債やマネー市場ファンドのデジタル化が進むなか、XRP Ledgerも競合であるステラルーメン(XLM)に倣い、ステーブルコインやRWAで成果を上げると予測されています。
また、日本市場においても、将来的に不動産や債券のXRPL上でのトークン化が検討される可能性があるとしています。
2024年、SBIグループは香港のHashKey社と提携し、XRP Ledgerを活用したサプライチェーン金融(貿易金融)ソリューションを日本企業向けに展開する計画を発表しました。
この取り組みは、XRPLの高速処理・低コスト・スケーラビリティの高さが評価された結果であり、SBIは日本企業として初めてXRPLベースの企業向けブロックチェーンを採用した事例となりました。
このように、日本におけるXRPの活用は、送金・決済にとどまらず資産のデジタル化へと領域を拡大しており、技術面の導入と法制度の整備が並行して進められています。
「XRPL活用の企業向けソリューション」導入
世界が注目する日本のXRP戦略
日本におけるXRPの実用化事例は、米国や欧州をはじめとする各国にとって、導入モデルとして具体的な参考事例となっています。
日本のXRP戦略が米企業の導入を後押し
米国では、長年続いていたSEC(米証券取引委員会)とリップル社の訴訟問題に対し、2023年7月に重要な判決が下されました。
ニューヨーク連邦地裁は、XRPのプログラム販売(取引所での流通)は証券に該当しないと判断しています。その後、2025年3月にはSECが控訴を取り下げ、4年に及ぶ法廷闘争は正式に終結しました。
この発表を受けて、リップル社のブラッド・ガーリングハウスCEOは自身のX(旧Twitter)で「ついにこの時が来た。SECが控訴を取り下げることになり、リップル社と業界全体にとって圧倒的勝利だ。未来は明るい。さあ、共に築いていこう」と述べています。
この訴訟の決着により、XRP価格は一時的に上昇し、市場関係者の間では「XRPにとって新たな章の始まり」との見方が広がりました。この動きは、日本の明確な規制環境と相まって、米国内企業におけるXRP採用の後押しにもなっています。
日本のSBIが実践してきたように、大手金融機関が公にXRPを活用する姿勢は、アメリカの銀行や企業にとっても導入検討の有力なモデルケースと見られています。
米ナスダック上場のヘルスケア企業ウェルジスティクス社は、日本を含む海外での導入事例を参考に、2025年にXRPを自社決済インフラへ活用する方針を発表しました。この取り組みは、企業財務における暗号資産活用の動きとして注目を集めています。
欧州・中東で進むXRP国際送金網
欧州においても、日本の先行事例はXRP活用への関心を高める要因となっています。
EU(欧州連合)では、包括的な暗号資産規制であるMiCAの整備が進められており、USDCなどのステーブルコインの位置づけも明確化されています。これにより、市場育成と投資家保護の両立が図られています。
こうした環境で、日本の銀行が実際にXRPを用いた送金ネットワークを運用し成果を上げている実績は、欧州の銀行・フィンテック企業にとって心強いバックグラウンドとなると見られています。
イギリスやフランスでも大手送金企業がRippleNetに参加しており、英送金企業Azimoはその一例として、リップル社のODLを活用したフィリピン向け送金の高速化を実現しました。
また中東では、日本のXRP活用に触発される形でリップル社が積極展開しています。リップル社は2020年にドバイ(UAE)へ地域拠点を開設し、2025年にはドバイ金融当局(DFSA)から決済プロバイダーとしてのライセンスを取得しました。
その後UAEの新興銀行Zandやフィンテック企業MamoなどがRippleNetに参加し、中東地域でもXRPによる即時送金サービスが広がりつつあります。
中東諸国は送金市場の規模が大きく、特にUAE・サウジアラビア・カタールでは、外国人労働者による本国への送金需要が高水準にあります。
SBIレミットによる東南アジア向けのモデルは、中東と南アジア間におけるクロスボーダー送金にも応用可能とされており、リップル社はカタール国民銀行(QNB)やAl Ansari Exchange(UAEの大手両替所)と協業してODL導入を進めています。
日本の支援でアジア送金網が広がる
香港やシンガポールなど金融ハブでは、国際送金の効率化策としてRippleNetやステーブルコイン利用が模索されています。
香港の金融企業とSBIによる提携を通じたXRPL基盤の貿易金融ソリューションは、日本企業と中国本土企業間の決済にも応用可能と見られています。
さらに中国の決済プロバイダーであるLianLian(連連銀通)は2018年からリップルの技術(xCurrent)を使い、同国向け越境決済を高速化しています。
このように、日本におけるXRP導入の取り組みは、地理的・制度的な障壁を超えて他国にも波及し、各国・地域がそれぞれの規制環境や市場ニーズに応じて、日本の事例を参考にする動きが広がっています。
日本発XRPモデルがもたらす未来の可能性
日本が築いてきた、民間企業と当局が連携するXRP活用モデルは、グローバルなブロックチェーン金融インフラ構築の先行事例として高く評価されています。
リップル社のガーリングハウスCEOも日本市場の先進性に言及しており「日本は規制面での明確さがあり、イノベーションが起きやすい環境だ」と述べています。
日本での成功体験が各国の金融機関に共有されることで、XRPがグローバルな送金ネットワークの標準として受け入れられる流れが、今後さらに加速すると見られています。
「XRPLedger日本・韓国ファンド」
日本から始まるXRPの本格実用化時代
日本におけるXRPの取り組みは、もはや実証段階を超え、金融インフラの重要な構成要素として確立されつつあります。
2025年7月現在、SBIホールディングスをはじめとする主要企業は、送金・決済サービスの高度化にXRPを活用しており、その成果は国内外の市場において広く認識されつつあります。
世界的にも、かつて逆風とされていた暗号資産規制の不確実性が徐々に解消されつつあり、XRPを取り巻く環境は好転しています。スタンダード・チャータード銀行の予測では、2028年までにXRPが主要アルトコインを上回るシナリオも想定されています。
この予測が現実となるかは未知数ですが、日本国内でXRPが銀行送金網に統合された実績や、数百億円規模の流動性確保、さらにはステーブルコインやRWA市場への展開は、XRPが投機目的にとどまらず、実社会の金融課題を解決する実用的な資産であることを裏付けています。
リップル社は大型買収や欧州・中東地域への事業展開を通じて、XRPエコシステムの拡充を進めています。日本発のユースケースも、他国での導入を促す重要なモデルケースとして注目されています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=143.57 円)
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サムネイル:AIによる生成画像






























