金融庁、暗号資産の「取引課税見直し・ETF組成」を正式要望|専任部署の新設も計画

金融庁、暗号資産の「取引課税見直し・ETF組成」を正式要望|専任部署の新設も計画(Financial Services Agency of Japan officially requests review of crypto transaction taxation and formation of ETFs, with plans to establish a dedicated department)
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税制改正・専任課新設で暗号資産制度改革へ

金融庁は2025年8月29日、暗号資産(仮想通貨)取引の課税制度の見直しや暗号資産ETF(上場投資信託)の国内組成に向けた検討を盛り込んだ「令和8年度(2026年度)税制改正要望」を公表しました。

さらに同日には、2026年度に暗号資産を専門に扱う専任部署「暗号資産・イノベーション課」を新設する組織再編計画も示されました。

金融庁は、暗号資産取引益の課税方式を現行の雑所得としての総合課税(最大55%)から改め、株式などと同様に税率20%で申告分離課税を適用するよう求めています。

加えて、諸外国の事例を踏まえ、ビットコイン(BTC)などを原資産とするETFの国内組成を促す環境整備も要望に盛り込まれました。

新設予定の暗号資産・イノベーション課は、既存の関連部署を統合し、暗号資産取引の常時モニタリングや投資家保護に向けた制度運用の一元化を図る方針です。

金融庁は、制度改正と組織再編の両面で取り組み、暗号資産の投資家保護を株式市場並みに引き上げる姿勢を示しています。

暗号資産課税見直しとETF解禁へ本格要望

金融庁資料の画像画像:金融庁資料

最大55%課税から20%分離課税に見直し

金融庁の暗号資産に関する要望は、現在「雑所得」として総合課税の対象である暗号資産取引益を、株式などと同様の申告分離課税へ移行することを柱としています。

現行制度では、暗号資産の利益は他の所得と合算され、累進課税(最大55%)が課されていますが、導入後は20%程度の定率課税に統一され、株式やFXと同水準となります。

こうした要望は、投資家の税負担を軽減するとともに、暗号資産を株式と並ぶ金融商品として再定義する一歩と受け止められています。また、国内業界団体や与党の提言とも方向性が一致しており、競争力強化につながると見込まれます。

暗号資産ETF解禁に向けた税制整備

金融庁は、海外で進むビットコイン現物ETFの動向を踏まえ、日本でも暗号資産ETFを組成できるよう税制面での検討が必要だとしています。ETF経由の投資が広がれば、取引環境の利便性が高まると見込まれます。

現行制度では、ETFの利益は20%課税である一方、暗号資産の現物取引による利益は最大55%課税と差があり、市場の歪みが指摘されてきました。

金融庁はこの不均衡を是正し、投資家保護を前提にETF市場の発展を促す方針です。

専任部署「暗号資産・イノベーション課」の新設計画

金融庁資料の画像画像:金融庁資料

新課の設置目的と機能

金融庁は令和8年度に組織を拡充し、暗号資産分野を専門に扱う「暗号資産・イノベーション課」を新設する方針を示しました。同課は銀行・証券監督局(仮称)の傘下に設置され、AI活用を含む金融分野のイノベーション促進を担うとされています。

暗号資産やブロックチェーン、フィンテック、生成AIといったデジタル技術に対応する体制強化を目的としており、資金決済を監視する「資金決済モニタリング課」の設置も計画されています。

組織改編で監督体制強化を図る

金融庁は「資産運用立国」「保険業界の信頼回復」「デジタル金融サービスへの対応」といった課題に直面しているとし、これに対応するため、総合政策局を「資産運用・保険監督局(仮称)」、監督局を「銀行・証券監督局(仮称)」に改称する大規模な再編を計画しています。

新設される暗号資産・イノベーション課と資金決済モニタリング課は銀行・証券監督局の下に置かれ、暗号資産の監督と振興を担う見通しです。

なお、この再編に合わせ、行政機能の拡充を目的に人員を20名増やす方針であることも明らかになっています。

新設課が担うブロックチェーン政策の展開

2025年7月、規制中心の姿勢から技術革新の支援へ舵を切る動きを背景に「暗号資産・ブロックチェーン・イノベーション参事官」という新たなポストも創設されました。

暗号資産・イノベーション課は、取引業者の監視や不公正取引の防止に加え、ブロックチェーン技術の社会実装支援や国際ルール形成への参画など幅広い役割を担い、柔軟かつ機動的な行政対応を強化する方針です。

日本の暗号資産市場に迫る税制改革と制度再編

政府全体で進む暗号資産の金融商品としての制度化

政府の経済戦略においても、暗号資産の重要性は高まりつつあります。

2025年6月に閣議決定された「新しい資本主義」実行計画では、暗号資産を「国民の資産形成に資する金融商品」と位置付けました。

同計画は、投資家保護を前提とし、分離課税導入を含む税制見直しと関連法案の早期提出を目指す方針も明示されています。

金融審議会で議論される暗号資産規制の将来像

政府方針を受け、暗号資産規制の見直しは2025年6月25日に金融審議会で正式に審議が開始されました。

現行の資金決済法から金融商品取引法(金商法)への移行も視野に、投資家保護と市場整備の両立を図る内容が議論されています。

この審議の成果として、年内に報告書を取りまとめ、2026年通常国会に関連法改正案を提出する見通しです。規制基盤の強化により暗号資産市場の信頼性が高まり、制度整備の進展が見込まれます。

暗号資産税制改革が投資家にもたらす効果

金融庁による税率20%の分離課税導入の正式要望は、長年の懸案だった暗号資産税制改革に向けた大きな一歩として業界に受け止められています。総合課税による高税率が投資家の負担となっていたため、制度変更は市場の成長を後押しする可能性があります。

現時点では議論・要望の域からはまだ出ていないものの、一部の暗号資産コミュニティからは「議論フェーズを脱し、20%分離課税に向けて一歩前進した」との評価が寄せられています。

今後は、この要望が年末の税制改正大綱にどこまで反映されるかが焦点であり、国内暗号資産市場の健全な発展に直結するテーマとして注目が集まっています。

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Source:金融庁発表① / 金融庁発表②
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

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BITTIMES 編集長のアバター BITTIMES 編集長 仮想通貨ライター

2016年から仮想通貨に関するニュース記事の執筆を開始し、現在に至るまで様々なWeb3関連の記事を執筆。
これまでにビットコイン、イーサリアム、DeFi、NFTなど、数百本以上の記事を執筆し、国内外の仮想通貨ニュースの動向を追い続けている。

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